障害者グループホームの開設|新規指定の審査で見られる点と令和8年2月通知の要点
障害者グループホーム(共同生活援助)の開設をお考えの方から、「申請の準備を進めているが、どこまで求められるのか読み切れない」というご相談をいただくことが増えました。令和8年2月26日、厚生労働省は共同生活援助のガイドラインを作成するとともに、新規指定と運営状況の把握にあたっての留意点を、都道府県・指定都市・中核市あてに通知しています。審査する側が何を見るのかが具体的に示されたことで、開設準備の組み立て方も変わりました。この記事では、その通知から読み取れる確認事項を、開設を考えている事業者の立場で整理します。
令和8年2月、グループホームの指定と運営に関する通知が出ました
まず、何が出たのかを押さえておきます。今回示されたのは2つです。ひとつは事業者向けの「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン(第1版)」、もうひとつは指定権者(都道府県・指定都市・中核市)あての課長通知で、新規指定の際、また既存事業所の運営状況の把握・指導の際に活用するための留意点をまとめたものです。
指定権者に向けた「技術的助言」という位置づけ
通知そのものは、地方自治法に基づく技術的な助言とされています。つまり事業者に新しい義務を課すものではありません。ただ、指定申請を審査する側が何を確認するのかが具体的に書かれているため、これから開設する事業者にとっては準備すべき事項の一覧として読める内容になっています。運用の細部は指定権者ごとに異なりますので、実際の手続きは所管の窓口で確認しながら進めてください。
背景にあるのは「経験の少ない参入」への懸念
ガイドラインの冒頭では、近年のグループホームについて、障害福祉サービスの実績や経験が少ない事業者の参入が多く見受けられ、障害特性や障害程度を踏まえた支援が適切に提供されないといった支援の質の低下が懸念される、という社会保障審議会障害者部会報告書(令和4年6月)の指摘が引かれています。
通知のほうでは、さらに踏み込んだ記載があります。「特段の知識等がなくとも事業所の運営は可能であり、高収益が実現できる」といった謳い文句で安易な開設を勧める者がいることを把握した場合、指定権者は地域の関係機関で情報共有を行い、厚生労働省や他の指定権者へ情報提供することが望ましい、とされました。別添には情報共有のための様式まで付いています。
ポイント:高い利回りを前面に出した開設の勧誘は、審査の場でむしろ注意を向けられる材料になり得ます。事業計画は「いくら残るか」だけでなく「どういう暮らしを支えるか」から組み立てておくと、審査で問われる確認事項に自分の言葉で答えられる状態に近づきます。
事前の説明・面談で確認されること
通知は、新規指定に向けた手順として、事前説明・確認 → 事業計画書等の審査 → 指定申請審査 → 現地審査という流れを例示しています。最初の関門が、申請書類を受け付ける前の説明と確認です。
面談を受けるのは代表者・管理者・サービス管理責任者(予定者)本人
ここは実務に直結します。通知では、指定希望者に面談や確認を行う場合、委託しているコンサルティング会社や代理の者ではなく、法人の代表者や事業所の管理者、サービス管理責任者(予定者)等に対して行うこととされています。別添の様式にも、コンサルティング会社が代理で面談対応をした、コンサルティング会社が同席したうえで発言することが多く、指定希望者がサービスの趣旨や内容を十分に理解していない様子だった、といった記載例が並んでいます。
なお通知は、この取扱いを本留意点における共通の事項としています。事前の面談だけでなく、指定後の運営状況の確認や指導の場面でも同じ考え方が示されている、ということです。
私たちのような外部の支援者が、代理で面談を受けることは想定されていません。誰が説明するのかを、準備の早い段階で決めておく必要があります。
「なぜこの事業を始めるのか」を自分の言葉で説明できるか
確認事項として挙げられているのは、事業開始の理由、法人理念、必要な知識を有しているか、遵守すべき事項を理解しているか、といった項目です。加えて説明事項には、廃止・休止の際の連絡調整その他便宜の提供の義務、日中サービス支援型は障害者の重度化・高齢化への対応を想定して創設された類型であり、重度の障害者等に対して常時の支援体制を確保することを基本としていること、虐待防止への対応、利用者の金銭管理や食材費等の実費徴収における適切な対応などが含まれています。
審査から最初の運営指導までは同じ人が関わることが望ましいとされた
もうひとつ見落とされやすいのが、少なくとも事業計画書等の審査開始から、指定後に適切な運営が確認されるまで(例えば最初の運営指導まで)は、やむを得ないと認められる場合を除き、審査時に面談を行った法人の代表者等が一貫した事業運営を行うことが望ましい、という記載です。開設の体制をつくって終わりではなく、その体制が続くかどうかまで見られます。
事業計画書で見られること
他の事業者の書類の流用は原則認められない
通知は、指定申請書類および事業計画書等の内容について、事業所の管理者(予定者)が責任をもって作成または把握することとし、地域の特性や事業内容、生活支援の内容、職員体制に応じて事業所単位で個別に記述されるべきものであるため、他事業者の書類の流用は原則認めないとしています。虚偽の記載があれば指定を行わない、事後に判明した場合は指定の取消し等を行うことも、あらかじめ伝えるよう求めています。
定員の根拠と、その地域を選んだ理由
事業計画書に記載を求める項目として挙がっているのは、事業の目的と事業所に求められる責務の理解、法人の理念、当該事業や地域を選択した理由、従業者の人員体制や研修の計画、利用定員の根拠、地域の関係機関や医療機関との連携です。特に、相談支援事業所等の関係機関を通じて、開所する地域の支援ニーズや先行するグループホームの状況を把握したものになっているかを確認する、とされています。
「定員10名」と書くだけでは足りず、その地域にどれだけのニーズがあり、なぜその規模なのかを説明できる状態が求められる、ということです。介護サービス包括型・外部サービス利用型・日中サービス支援型のどれを選ぶのかについても、選んだ具体的な理由が確認されます。日中サービス支援型を選ぶ場合は、強度行動障害の状態にある方や医療的ケアが必要な方など、重度障害者の受け入れ方針が明確で、その障害特性に対応できる支援体制が確保されているかが見られます。
開所予定地の市区町村への事前説明と議事録
通知は、指定希望者に対し、開所予定地の市区町村へ開所の意向と事業計画を事前に説明するよう案内すること、市区町村は市町村障害福祉計画と照らし合わせ、必要に応じて協議会等の意見も聴くことを求めています。指定希望者の側は、市区町村との協議の議事録等を作成・提出し、指摘を受けた事項を改善したうえで指定申請を行うという流れです。
物件を押さえてから市区町村に話をしに行くと、この順番が逆になります。スケジュールを引く段階から、市区町村との協議を工程に入れておくことをおすすめします。
すでにホームを運営している法人は、既存事業所の状態も見られる
2棟目、3棟目を考えている法人にとって見落とせないのが、既存事業所の実施状況の確認です。通知は、指定希望者がすでに他のグループホームを運営している場合、所在地と種類、配置されている従業者の状況(代表者名・役員名・サービス管理責任者等の担当者名)、行政指導や行政処分歴の有無と改善状況、公益通報や虐待通報の有無を確認したうえで、指定基準違反等の事項があれば、その状況を解消してから改めて申請するよう促すとしています。過去にグループホームの運営に関わっていた場合も、可能な限り当時の実施状況を確認するとされています。
つまり、新しいホームの計画がどれだけ整っていても、いま運営しているホームに未解決の指摘が残っていれば、そこから先に片づけることになります。増設を考え始めた時点で、既存ホームの指摘事項と改善状況を棚卸ししておくのが現実的です。
物件・設備は「完了しているか」で判断されます
用途変更と消防設備の完了が指定日を左右する
指定申請審査の段階では、障害福祉サービス事業への用途変更が完了していること、物件の改修工事や消防署の指導による設備(スプリンクラー等)の設置が完了または完了見込みであるかを確認したうえで、指定予定年月日を決定するとされています。そして、期日までの完了が確認できなければ指定年月日を延長して完了確認を行う、と明記されています。
工事の遅れは、そのまま指定日の後ろ倒しにつながります。指定日が1か月ずれれば、その分の収入が入らないまま家賃と人件費が発生します。物件を決める前に、建築部局・消防署・指定権者に相談しておくほうが、結果的に早く進みます。
現地審査で見られるのは書類だけではない
現地審査では、条例で定められた設備要件が守られているか、改修工事が完了しているか、消防署の指導による設備の設置が完了しているかに加えて、サービス提供記録のひな型、職員の出退勤管理といった運営基準の整備状況、運営規程の概要・従業者の勤務体制・協力医療機関等を利用者の見やすい場所に掲示しているか、まで確認するとされています。開所日に間に合わせるのではなく、審査の時点で整っている状態が求められます。
指定を受けたあとも、体制が続いているかを見られます
サービス管理責任者の名義貸し・短時間配置
既存事業所の運営状況を把握する観点として、人員配置の項目には具体的な例が挙げられています。名義貸しを行うサービス管理責任者を利用する、短期間のみ配置することを繰り返す、常勤要件がないことを理由に業務に必要な時間が確保されていない——こうした配置は、実質的にサービス管理責任者が配置されていないと考えられる、という書きぶりです。職員の求人募集を頻繁に行っている、変更届による離転職が続いているといった状況も、重点的に確認する対象とされています。
サービス管理責任者をどう確保し、どう定着させるかは開設前から考えておきたい論点です。欠員のリスクと育成の順番についてはサービス管理責任者・児発管が採用できない|欠員のリスクと育成の逆算で、世話人の確保についてはグループホームの世話人が集まらない|配置基準から考える人材確保の進め方で整理しています。
管理者が自分の事業所のことを答えられるか
運営状況を把握する観点の筆頭に挙げられているのが管理者業務です。管理者は職員と業務の管理を一元的に行い、職員に基準等を遵守させるために必要な指揮命令を行うこととされているため、事業所に関する質問に管理者が適切に答えられない場合や、記録から勤務実態が確認できない場合には、管理者業務を果たしているとは言えないと考えられるとして、是正を指導するとされています。開設時に「誰が説明できるか」が問われるのと同じことが、指定後も続くという構造です。
指定後に義務として発生するもの
通知が「義務づけられている」と書いているものが2つあります。ひとつは障害福祉サービス等情報公表制度で、事業所は障害者総合支援法第76条の3に基づきWAMネットに運営状況等を公表することとされており、未掲載の場合は指導の対象です。もうひとつは業務管理体制の整備で、同法第51条の2により、法令を遵守するための体制の確保に係る責任者(法令遵守責任者)を選任することとされています。どちらも開設後の運営で後回しになりやすいところです。
利用者がまだ決まっていない場合の再確認
指定を行う時点でまだ利用者の多くが決まっていない場合には、利用者の障害支援区分に応じた適切な職員配置が確保されているかを確認する観点から、指定後に一定の期間を置いてから改めて運営状況の確認を行うことが望ましい、とされています。運営指導そのものは、おおむね3年に1回実施することとされていますが、適切な運営ができていないと思われる場合には計画を繰り上げて実施する、という記載もあります。
開設を考えている段階でできる準備
ここまでを、準備の順番に組み替えると次のようになります。
- 面談で説明する人(代表者・管理者・サービス管理責任者の予定者)を早い段階で決め、事業を始める理由を自分の言葉で言える状態にしておく
- 開所予定地の支援ニーズと、周辺の既存グループホームの状況を、相談支援事業所等を通じて自分で把握する
- 市区町村への事前説明を工程に入れ、協議の記録を残す
- 物件は契約前に、建築基準法上の用途と消防設備の要否を所管窓口に相談する
- サービス管理責任者・世話人の確保と定着を、開設後の運営指導まで見据えて考える
- ガイドライン本体に付いている「自己チェックシート」と、別添1「共同生活援助事業者が実施しなければならない委員会・研修等」を、開設前の工程表に落とし込む
最後の項目は、通知が「ガイドラインを手交等したうえで、関係者全員が目を通すように伝えること」としていることに対応します。自己チェックシートは、確認項目ごとに参照すべきガイドラインのページが振られた様式です。別添1には、ハラスメント対策の方針の明確化、感染症対策の委員会・指針・研修・訓練、業務継続計画に関する研修と訓練、虐待防止委員会と研修、身体拘束適正化検討委員会と指針・研修といった、実施すべき委員会や研修が頻度とともに一覧で整理されています。新規採用時に実施するものも示されているため、開設前に読んでおくと、指定後の1年間の予定が具体的に組めます。
あわせて、収支の前提も確認しておきたいところです。令和8年度の報酬改定(臨時応急的な見直し)で、令和8年6月1日以降に新規指定を受けた共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)の事業所には、令和9年度報酬改定までの間、基本報酬について所定単位数の1000分の972に相当する単位数が適用されることとされました(外部サービス利用型は対象に含まれていません)。既存事業所は従前どおりで、重度障害者への配慮や地域への配慮による適用対象外の取扱いも設けられています。また、令和8年3月31日のQ&Aでは、対象となるのはあくまで新規指定の場合であり、従たる事業所の追加、単位追加、定員増加、住居追加(サテライト型住居を含む)は対象外とされています。既存のホームを広げるのか、新しく指定を受けるのかで扱いが変わる点は、計画の早い段階で確認しておきたいところです。この特例と収支計画の立て方は障害者グループホームの経営・開設でお悩みの事業者さまへで詳しく整理していますので、あわせてご覧ください。
なお、上で触れた定員の増加については、厚生労働省の「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン」(令和8年6月)によると、令和8年3月31日に障害者総合支援法施行規則の一部を改正する命令が公布され、令和9年4月1日から、共同生活援助も、定員増加をする場合に指定の変更を申請しなければならないサービスの対象となるとされています。同ガイドラインは、同じ日から共同生活援助が総量規制の対象サービスとなることも示しています。総量規制は、都道府県等が定める区域でそのサービスの定員の総数が障害福祉計画等の見込量に達している場合などに、指定をしないことができる制度とされ、同ガイドラインは、総量規制の実施後は原則として新規の指定や定員増を伴う事業所の指定を行わない(例外的な取扱いを除く)としています。実施の有無や運用は、都道府県等ごとに確認が必要です。開設や定員の増加を計画する際は、施行日をふまえて所管の指定権者にご確認ください(2026年10月に確認した内容です)。
まとめ
令和8年2月の通知でわかったのは、グループホームの新規指定が「書類が揃っているか」だけでなく、誰が説明できるか、なぜその地域なのか、体制が続くのかという観点で見られるようになったということです。裏を返せば、地域のニーズを自分で調べ、支援の方針を自分の言葉で語れる事業者にとっては、準備の方向がはっきりしたとも言えます。
私たちは自社で障害福祉の事業所を20年以上運営してきました。だからこそ、開設は「指定を受けられるか」ではなく「受けたあとに続けられるか」で設計するものだと考えています。指定申請書類の作成代行は行政書士の業務ですので当社では行いませんが、事業計画の考え方、定員と収支の見立て、人員体制の組み方についてはご一緒できます。事業計画書そのものは、通知にあるとおり管理者(予定者)が責任をもって作成・把握するものですので、私たちが担うのは考え方の整理と数字の検証までです。横浜市をはじめ神奈川県内はもちろん、オンラインで全国からご相談を承っています。初回のご相談と経営診断は無料です。
なお、この記事は厚生労働省「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン(第1版)」(令和8年2月)、同「『共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン』の作成並びに指定共同生活援助事業所に係る新規指定及び運営状況の把握・指導の際の留意事項について」(障障発0226第1号・令和8年2月26日)、「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」、「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(令和8年3月31日)をもとに、2026年9月時点で確認できた内容を整理したものです(令和9年4月からの総量規制・指定の変更申請に関する記述は、厚生労働省「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン」(令和8年6月)をもとに2026年10月に確認したものです)。指定の手続き、事前相談の要否、建築基準法・消防法の運用は自治体によって幅があり、報酬の取扱いも告示の改正により変わることがあります。実際の判断にあたっては、最新の通知と所管の指定権者に必ずご確認ください。
▶ 日中サービス支援型を選ぶ場合に固有の人員配置・短期入所・協議会等への報告・報酬の見方は 日中サービス支援型グループホームの開設・運営支援 で整理しています。
▶ 既存のホームにサテライト型住居を設けるときの基準と運営は、サテライト型グループホームの設置・運営支援でまとめています。


