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改善事例

利用者家族からのクレームが減ったグループホームが変えた「1つのこと」

——月1通の「連絡ノート」が、不信感を信頼に変えた

問題発生——月に3〜4件のクレームが続く

「また家族から電話が来た」——グループホーム(定員8名)を運営するF法人の管理者・G氏は、ある時期から月に3〜4件のクレームを受け続けていました。

クレームの内容はさまざまでした。「先週、息子が体調を崩したのに連絡がなかった」「支援の内容が変わったのに説明がない」「担当者が変わったことを知らなかった」——共通しているのは、「知らなかった」「聞いていない」という言葉でした。

「支援自体は一生懸命やっている。なのになぜクレームが来るのか、最初は本当に理解できなかった」とG管理者は振り返ります。

【家族から届いた声(一部)】
「施設から連絡が来るのは、何か問題があったときだけ。息子が普段どんな様子かが全然わからない」
「担当の職員さんが変わっていたことを、1か月後に本人から聞いて初めて知った」
「モニタリングの書類は届くけど、読んでも日常の様子がイメージできない」

原因分析——クレームの「本当の理由」

G管理者がコンサルに相談し、クレームの内容を整理したところ、ある共通点が浮かび上がりました。クレームのほぼすべてが、「支援の質」ではなく「情報の不足」が原因でした。

クレーム内容の分類(過去6か月・延べ19件)

  • 連絡・報告に関するもの:8件(42%) 例)「体調変化の連絡が遅かった」「行事の案内が来なかった」
  • 情報共有に関するもの:6件(32%) 例)「担当者変更を知らなかった」「支援内容が変わったのに説明がなかった」
  • 支援の内容・質に関するもの:3件(16%) 例)「食事の対応が希望と違った」
  • その他:2件(10%)

→ 全体の74%が「連絡・情報共有」の問題で、支援の質そのものへの不満は16%にとどまりました。

つまり、職員は懸命に支援していたのに、その様子が家族に届いていなかったのです。「見えない支援」が不信感を生んでいました。障害のある方のご家族は、利用者本人から日々の様子を詳しく聞けないことが多く、施設からの情報が「我が子の生活を知る唯一の窓口」になっています。その窓口が「問題があったときだけ開く」状態では、家族の不安は積み重なっていきます。

【G管理者の気づき】
「クレームを一つひとつ対処していたけれど、根本は同じ問題だったんです。『家族が施設の中を見えていない』という一点。そこに気づいたとき、解決策が一気にシンプルになりました」

改善策——変えたのは「1つのこと」だけ

G管理者が導入したのは、シンプルな仕組みです。月1回、利用者ごとに「家族への手書き連絡ノート」(A4・1枚)を作成し、郵送またはLINEで届けるようにしました。

「家族への連絡ノート」の内容(A4・1枚)

  • ①今月の様子(3〜5行)「今月は○○の作業に取り組まれ、集中して取り組む場面が増えました」など ※ネガティブなことより、小さな良い変化を具体的に書く
  • ②印象に残った出来事(1〜2件)「○日に○○があり、○○さんはこんな反応をしていました」 ※写真1枚を添付できれば尚良い(個人情報の取り扱いに注意)
  • ③来月の予定・変更事項(行事・担当者変更・支援内容の変更など)
  • ④家族へのひとこと「何かご不明な点があればいつでもご連絡ください」

作成時間の目安:1名あたり15〜20分。

なぜ「手書き」にこだわったのか

G管理者が最初に悩んだのは、印刷物にするか手書きにするかでした。結論として「手書き」を選んだ理由は明快でした。「手書きの文字は、読む人に『時間をかけてくれた』という温かさが伝わる。印刷物は正確だけど、距離感がある。私たちが伝えたいのは情報だけじゃなくて、『あなたの家族のことを大切にしています』という気持ちだから」とG管理者は言います。

もちろん、施設の規模や職員数によっては手書きが難しい場合もあります。その場合はWordやLINEでの発信でも十分に効果が期待できます。大切なのは「形式」ではなく「定期的に・具体的に・温かく届ける」という姿勢です。

導入時に工夫した3つのポイント

  • 最初の1か月は管理者自身が全員分を書き、「こんな内容でいい」という見本を職員に示した
  • 「問題がないときこそ書く」というルールを徹底した(問題発生時の連絡と切り離す)
  • 家族から返信や感想が届いたら、必ず職員全員に共有するようにした

3つ目のポイントが特に重要でした。「ありがとう、息子の様子がわかって安心しました」という家族の声が職員に届くことで、「書いてよかった」という実感が生まれ、継続する動機につながりました。

改善後の変化——導入から6か月

指標 導入前(月平均) 導入後6か月(月平均)
家族からのクレーム件数 3.2件 0.3件
家族からの問い合わせ電話 8.1件 3.4件(内容がポジティブなものに変化)
家族からの感謝・励ましの声 ほぼなし 月4〜6件
職員の「書くことへの抵抗感」 強い 「楽しみになってきた」という声
管理者の対応時間(クレーム処理) 月約4時間 月約20分

※ 上記はコンサル支援先の事例をもとにした参考値です。施設規模・家族構成・利用者の状況により異なり、同様の成果を保証するものではありません。

【家族から届いた声(導入3か月後)】
「毎月ノートが届くのを楽しみにしています。娘が笑っている場面を書いてもらったとき、思わず涙が出ました。施設に任せて良かったと、初めて心から思えました」
「以前は何か問題があったんじゃないかと、いつも不安でした。今は安心して仕事に行けます」

予想外の波及効果——職員の支援の質が上がった

G管理者が想定していなかった変化が、職員側に起きました。「今月のノートに何を書こう」と考えるようになった職員が、利用者の小さな変化や良い場面を意識的に観察するようになったのです。

「書くことを意識すると、自然と利用者をよく見るようになる。ノートを始める前は気づかなかったことに気づくようになった」という職員の声が複数上がりました。連絡ノートは家族への情報発信ツールであると同時に、職員が利用者をより深く理解するための観察訓練にもなっていました。「1つのことを変えたら、2つ良くなった」という結果です。

まとめ——クレームの多くは「不安」から生まれる

利用者家族からのクレームを「難しい家族の問題」として捉えると、対処は困難に見えます。しかしF法人の事例が示すように、クレームの多くは「施設の中が見えない不安」から生まれています。

その不安を解消する方法は、複雑なシステムや多額の投資ではありませんでした。月1回・A4一枚・手書きのノート——それだけで、6か月後にクレームは10分の1以下になりました。「うちも家族からのクレームが多い」と感じている管理者は、まず一人の家族に向けて手紙を書いてみてください。その小さな一歩が、施設と家族の関係を変えるきっかけになります。

なお、家族への定期的な情報発信は、新規利用者の定着にも直結します。受け入れ体制の見直しで定着率を改善した事例は 新規利用者が3か月で退所していた施設|受け入れ体制で定着率を改善 でもご紹介しています。

家族対応・クレーム対策・施設運営の改善についてのご相談は、サービス内容もあわせて、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

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