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改善事例

50代になった利用者が、これまでの活動についていけなくなった|高齢化に対応した支援プログラムの再構築

― 高齢化に対応した支援プログラムの再構築 ―

※本記事は架空のモデル事例です。実在施設の改善実績ではありません。数値は改善方法を説明するための想定値です。今回のテーマは、利用者の高齢化・サービス品質です。

はじめに――「以前はできていたのに」が増えていませんか?

ある生活介護事業所で、長年通所している52歳の男性利用者Aさんに変化が現れました。以前は毎日、午前中の軽作業に参加し、午後には散歩を楽しんでいました。ところが最近、作業中に手を止めることが増え、午後の散歩にも参加しなくなりました。

職員は当初、こう考えていました。「最近、活動への意欲が低下しているのではないか」「もう少し声をかければ参加できるのではないか」。しかし、本人に繰り返し参加を促すと、表情が険しくなり、活動室から離れることもありました。

ある日、職員が椅子から立ち上がるAさんの様子を観察すると、以前より時間がかかっていることに気づきました。さらに家族へ確認すると、自宅でも階段の昇降を避けるようになっていたのです。問題は活動への意欲だけではなく、身体機能や健康状態の変化が関係している可能性がありました。

この施設では、長年同じ活動プログラムを提供していました。しかし、利用者の年齢や身体状況は少しずつ変化していたのです。施設は同じ支援を続けているつもりでも、利用者にとっては、以前より負担の大きい支援になっていることがあります。今回は、利用者の高齢化をきっかけに、施設全体の支援プログラムを見直したモデル事例を紹介します。

改善前の状況――20年前とほとんど変わらない一日の活動

この事業所は定員20名。利用者の平均年齢は徐々に上昇し、50歳以上の利用者が増えていました。このプログラムは長年続いており、職員も利用者も慣れていました。

ところが、最近になって三つの問題が目立つようになりました。第一に、午後の活動へ参加しない利用者が増えたこと。第二に、移動や立ち上がりに時間がかかる利用者が増えたこと。第三に、活動途中で疲れた様子を示す利用者が増えたことです。

職員は活動参加を促すため、声かけを増やしました。しかし、利用者の状態は改善しませんでした。むしろ、活動を拒否する場面が増えていました。

原因分析――活動への不参加を「意欲の問題」と捉えていた

コンサルティングでは、まず活動参加率を上げることを目標にしませんでした。最初に確認したのは、なぜ参加しなくなったのかという点です。

Aさんの場合、以前と比べて歩行速度が遅くなり、立ち上がりにも時間がかかっていました。ただし、これらの変化を年齢だけの問題と決めつけることはできません。痛み、疾病、薬剤の影響なども考えられるため、本人・家族と相談し、医療職による評価につなげることが必要です。

そのうえで施設全体を確認すると、三つの構造的な問題が見えてきました。

第一に、利用者の変化に合わせて活動を見直していなかったことです。施設の活動は毎年ほぼ同じでした。しかし、利用者の身体機能や疲労の程度は変わります。活動内容を固定したまま、利用者だけに適応を求めていました。

第二に、個別支援計画が「できるようになること」に偏っていたことです。個別支援計画には、「作業時間を延ばす」「活動参加を増やす」といった目標が多く設定されていました。一方、身体機能の変化に応じて生活を維持する、負担を軽減するという視点が不足していました。

第三に、身体機能の変化を継続的に把握していなかったことです。利用者の歩行や立ち上がりについて、職員は日常的に見ていました。しかし、その変化を比較できる形では共有していませんでした。「最近少し歩くのが遅い気がする」という個人の印象で終わっていたのです。

改善策① 全利用者の生活機能を再確認する

最初に行ったのは、50歳以上の利用者だけを対象とした一律の支援変更ではありません。年齢に関係なく、変化が見られる利用者について生活機能を再確認することでした。

確認項目は、歩行、立ち上がり、移動、食事、疲労、活動への参加状況などです。職員だけで医学的な評価を行うのではなく、必要に応じて医師、理学療法士、作業療法士等へ相談します。

ここで大切なのは、能力を点数化して利用者を比較することではありません。その人自身の以前の状態と、現在の状態を比較することです。Aさんの場合、立ち上がりや歩行に変化が見られたため、医療職による評価を受け、その結果を踏まえて支援方法を検討することにしました。

改善策② 全員一律の活動をやめ、複数の参加方法を用意する

以前は、午後1時になると全員に散歩を促していました。しかし、身体状況や本人の希望は異なります。そこで、午後の活動を複数の選択肢から選べる方式に変更しました。新しい午後の活動プログラムでは、次のような選択肢を用意しました。

  • 屋外活動として、本人の状態に合わせた散歩や屋外での休憩など
  • 室内活動として、創作活動、軽作業、本人が好む活動
  • 休息・静かな活動として、疲労に応じた休憩、音楽鑑賞、読書など

身体機能が低下したからといって、活動を一律に減らすわけではありません。医療職の助言を踏まえながら、本人が無理なく参加できる方法を探します。また、休息を選んだ利用者を「活動に参加できなかった」と評価しないことも徹底しました。

改善策③ 活動の目標を「時間」から「生活上の意味」へ変える

以前の個別支援計画には、「30分間、作業へ参加する」という目標がありました。しかし、30分間座って作業すること自体が、本人の生活にどのような意味を持つのかが不明確でした。

そこでAさんの目標を見直しました。

  • 本人が好きな作業を続けられること
  • 疲れたときには休憩を選べること
  • 必要な支援を受けながら、本人の望む活動に参加できること

こうした生活上の目標を中心に据えました。活動時間は、目標そのものではなく、状態を把握するための一つの情報として扱います。

改善策④ 施設内の環境を見直す

活動内容だけでなく、施設の環境にも改善点がありました。例えば、立ち上がりにくい椅子、移動距離が長い活動室、休憩しにくい空間、床に置かれた活動用具。こうした環境が、身体機能の変化した利用者に負担を与えている可能性がありました。

そこで、専門職の助言も得ながら、椅子や机の高さ、動線、休憩場所などを見直しました。施設の構造上すぐに改修できない場合でも、活動場所を変更する、物品配置を変えるなどの対応を検討できます。

改善策⑤ 家族と「これからの生活」について話し合う

今回の改善では、家族との面談も重要でした。長年通所している利用者の場合、家族も本人の変化を感じていることがあります。しかし、「以前のように活動してほしい」という希望から、身体機能の変化を受け入れにくい場合もあります。

そこで施設は、活動への参加を増やすことだけを話題にするのではなく、本人が今後どのような生活を続けたいかを確認しました。自宅での移動、休日の過ごし方、本人が楽しみにしていること、家族が心配していること、必要な医療やリハビリテーション。こうした情報を整理し、相談支援専門員や医療職とも連携して支援方針を検討しました。

改善結果――活動参加率だけでは測れない変化が現れた

改善から3か月後を想定すると、Aさんには次のような変化が見られました。以前は散歩の時間になると活動室から離れることがありましたが、活動を選択できるようになってからは、本人が好む室内作業に参加する場面が増えました。また、疲れた際には休息を選べるようになり、職員が無理に参加を促すことも減りました。

施設全体でも、活動に参加した人数だけでなく、本人の希望に沿った参加ができているかを確認するようになりました。

ただし、これらはモデル事例上の想定結果です。実際の改善効果を判断するには、本人の満足度、疲労、生活機能、事故、活動参加状況などを継続的に確認する必要があります。

重要なのは、活動参加者を増やすことだけが改善ではないという点です。利用者の状態に合った活動を提供し、本人が選択できることも、サービス品質の重要な要素です。

※本事例の内容・結果は改善の考え方を説明するための想定(参考値)です。同様の成果を保証するものではありません。利用者の身体機能や健康状態の評価は、医師・理学療法士・作業療法士等の専門職にご相談ください。

コンサルタントの視点――利用者が変わっているのに、施設だけが変わっていない

障害福祉施設では、長年同じ利用者を支援することがあります。その継続性は大きな強みです。しかし、長年同じ支援を続けていることが、必ずしも適切な支援を続けていることを意味するわけではありません。利用者の身体状況、生活環境、家族の状況、本人の希望。これらは時間とともに変化します。

厚生労働省も、生活介護について、日常生活上の支援だけでなく、身体機能や生活能力の向上のために必要な支援を行うサービスとして位置づけています。また、高齢になっても継続的な支援を受けられる選択肢の一つとして、障害福祉サービスと介護保険サービスを同一事業所で提供しやすくする共生型サービスの制度も設けられています。これはすべての事業所に導入が必要という意味ではなく、地域の支援体制を検討する際の選択肢です。

施設運営では、利用者が現在のプログラムに合わせられるかだけを見るのではなく、現在のプログラムが利用者に合っているかを定期的に検討することが必要です。

今回のテーマに特化した実践アドバイス

今回の改善では、次の五つを重点的に実践します。

第一に、過去と現在を比較すること。他の利用者と比較するのではなく、本人の以前の状態と現在を比較します。

第二に、活動拒否を意欲の問題と決めつけないこと。身体的な負担、痛み、疲労、環境など、複数の原因を検討します。

第三に、活動プログラムを固定しないこと。毎年同じ活動を続けるのではなく、利用者の変化に合わせて内容を見直します。

第四に、休息も本人の選択として尊重すること。ただし、急な活動性の低下を安易に高齢化と判断せず、必要な医療的評価につなげます。

第五に、個別支援計画の目標を生活に結びつけること。「30分作業する」という数字だけでなく、本人がどのような生活を望んでいるかを確認します。

高齢化対応・支援プログラム改善チェックリスト

  • 利用者の身体機能や生活状況の変化を定期的に確認しているか。
  • 以前の状態と現在の状態を比較しているか。
  • 活動拒否を意欲の問題だけで判断していないか。
  • 急な身体機能低下を医療職へ相談できるか。
  • 本人が活動を選択できる仕組みがあるか。
  • 疲労に応じて休息できる環境があるか。
  • 椅子・机・動線などを見直しているか。
  • 個別支援計画を現在の生活状況に合わせているか。
  • 家族や相談支援専門員と将来の生活を話し合っているか。
  • 活動参加率だけでサービス品質を評価していないか。

まとめ――施設の活動を守るのではなく、利用者の生活を守る

障害福祉施設では、長年続けてきた活動が施設の文化になっていることがあります。作業、散歩、創作活動、行事。これらは利用者の生活を豊かにする重要な活動です。しかし、活動そのものを維持することが目的になってしまうと、利用者の変化に対応できなくなることがあります。

以前はできていたことが難しくなる、疲れやすくなる、移動に時間がかかる、活動への希望が変わる。こうした変化が現れたとき、利用者へ以前と同じ活動を求め続けるのではなく、支援の方法を変える必要があります。それは支援の後退ではありません。本人の現在の状態に合わせて、生活の質を維持するための支援の再設計です。

そして、施設の高齢化対応は、単に介護量が増えることへの対策でもありません。本人がこれまで大切にしてきた生活を、どのような形で続けられるかを考えることです。

次に利用者が活動へ参加しなくなったとき、「どうすれば参加してもらえるだろう」と考える前に、もう一つ問いかけてみてください。「この活動は、今のこの人に合っているだろうか。」その問いから、利用者の変化に合わせて進化し続ける障害福祉施設づくりが始まります。

個別支援計画の目標設定や見直しの手順は 個別支援計画の書き方と作成の流れ、「いつもと違う」変化を記録して医療につなぐ仕組みは 「いつもと違う」を医療につなぐ、本人の希望と家族の要望を整理する考え方は 言葉で答えにくい人の意思決定支援と家族対応 もあわせてご覧ください。

利用者の高齢化に合わせた支援プログラムや個別支援計画の見直しのご相談は、サービス内容もあわせて、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

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