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改善事例

強度行動障害のある利用者を受け入れ、加算も取得した施設の3か月|「うちには無理」が変わるまで

——「うちには無理」と思っていた施設が変わるまで

問題発生——「強度行動障害の方は、うちでは対応できない」

「相談支援専門員から『強度行動障害のある方の受け入れ先を探している』と連絡が来たとき、正直、断ろうと思いました」——生活介護事業所(定員20名)を運営するY法人の管理者・Z氏の言葉です。

Z管理者の施設には、これまで強度行動障害を有する利用者はいませんでした。「自傷・他害・激しいパニック——想像するだけで職員が怖がると思った。対応できるスキルもない。受け入れたら施設が混乱する」という不安が、断る理由として頭に浮かんでいました。

しかし相談支援専門員から「受け入れ先がどこにもなくて困っている。本人も家族も疲弊している」という状況を聞いたとき、Z管理者は「一度だけ話を聞いてみよう」と思い直しました。その「一度」が、施設を変えることになりました。

強度行動障害とは

  • 自傷行為(頭打ち・手首噛み等)・他害行為・激しいパニック・著しい多動など、本人の日常生活や周囲に著しい困難をもたらす行動が、高い頻度で起きる状態
  • 多くは知的障害を伴うことが多く、環境の変化・感覚過敏・コミュニケーション困難等が背景にある
  • 障害支援区分が高い方が多く、適切な支援体制を整えることで行動が安定するケースがある

【強度行動障害支援者養成研修】

  • 国が定めた研修制度(基礎研修・実践研修の2段階)
  • 修了者が在籍・支援することで「強度行動障害支援者養成研修加算」を算定できる
  • 研修は都道府県・指定研修機関が実施(受講料・日程は要確認)

受け入れ決断から3か月——何をどの順番で準備したか

Z管理者はコンサルに相談し、「受け入れる前に体制を整える」方針で3か月の準備期間を設けました。「見切り発車せず、準備してから迎え入れる。それが本人のためにも施設のためにも大切だ」という判断でした。

準備①:アセスメントから始める(1か月目)

まず相談支援専門員・家族・前の支援機関から、対象の方(Aさん・40代男性)の情報を丁寧に集めました。

Aさんのアセスメントで把握した主な情報

【行動の特徴】

  • 特定の音(高音・突発的な音)でパニックになりやすい
  • 予定の変更が難しく、見通しが持てないと不安が高まる
  • 「好きなこと(パズル・特定の音楽)」があり、落ち着ける活動がある

【これまでの支援で効果があったこと】

  • 1日のスケジュールを写真カードで事前に提示する
  • パニックの初期サイン(手をこする・声が大きくなる)を早めにキャッチして場所を変える
  • 「ここにいれば安全だ」と感じられる落ち着けるスペースの確保

【家族からの情報】

  • 自宅では落ち着いている時間も多い
  • 初めての場所・人への不安が強いため、慣れるまで時間がかかる

このアセスメントが、支援計画と環境整備の土台になりました。「何が怖いかではなく、何があれば安心できるかを知ることが先だ」とZ管理者は後に語っています。

準備②:職員研修の実施(1〜2か月目)

受け入れ前に、全職員を対象とした強度行動障害理解研修を2回実施しました。外部講師(強度行動障害支援経験のある支援者)を招き、「強度行動障害とは何か」「なぜそうした行動が起きるか」「どう関わるか」を学びました。

【研修前後の職員の変化】
研修前:「激しい行動が怖い。自分に対応できるか不安」
研修後:「行動の背景に理由があるとわかった。怖いというより、その方を理解したいという気持ちになった」
「パニックは防げるものだとわかった。サインを早めにキャッチすることが大事だとわかった」

「知らないから怖い。知れば関わり方が見えてくる」——これが研修の核心でした。

同時に、常勤職員2名を「強度行動障害支援者養成研修(基礎研修)」に申し込みました。研修は1日で修了できる内容で、受講後すぐに「強度行動障害支援者養成研修加算」の算定準備に入りました。

準備③:環境整備(2〜3か月目)

Aさんのアセスメントをもとに、施設内の環境を整備しました。大きなコストをかけずに実施できる工夫を中心に進めました。

環境整備の具体的な内容

【静かに過ごせるスペースの確保】

  • 既存の休憩室を「落ち着きスペース」として整備(パーテーションで区切り・好きな音楽を流せる環境)
  • 費用:パーテーション購入約2万円

【スケジュールの視覚化】

  • 1日の流れを写真カードで作成し、Aさんが見える場所に掲示
  • 「次は何をするか」が常に見える状態を作る
  • 費用:写真印刷・ラミネート加工のみ

【緊急時の対応フロー】

  • パニック時の初期対応・場所の移動・連絡手順をフローチャートで明示
  • 職員全員が同じ対応を取れるよう「Aさん個別対応マニュアル」を作成

合計費用:約3〜4万円(大規模な改修なし)

受け入れ後——Aさんの変化と施設の変化

最初の1か月:「想定内」の混乱と「想定外」の安定

受け入れから最初の2週間は、慣らし期間として午前のみの利用から始めました。初日はAさんが施設内を落ち着かなく歩き回る場面もありましたが、職員が事前に学んだ「サインを早めにキャッチして落ち着きスペースへ誘導する」対応が機能しました。

「予想していたより落ち着いていた。準備した対応が使えた、という経験が職員の自信になった」とZ管理者。3週目からは終日利用に移行し、パニックの頻度も徐々に減少していきました。

【Aさんの1か月後の変化】
・施設のスケジュールを把握し、「次は○○」と自分から確認する場面が増えた
・パニックの頻度:週平均4〜5回→週平均1〜2回に減少
・落ち着きスペースを自分から利用するようになった
・特定の職員に「笑顔で挨拶する」場面が出てきた

家族:「こんなに早く落ち着いてくれるとは思っていなかった。施設の対応に感謝しています」

2〜3か月目:加算算定と支援体制の定着

受け入れから2か月目、強度行動障害支援者養成研修(基礎研修)を修了した職員2名の届出を行い、「強度行動障害支援者養成研修加算」の算定を開始しました。

Aさんに関わる記録を丁寧に積み上げたことで、3か月後の個別支援計画の更新では、「パニックの前兆サイン」「効果的な支援方法」「Aさんが安心できる条件」が具体的に記載された充実した計画が完成しました。

3か月後の変化——支援と経営の両面

項目 受け入れ前 3か月後
Aさんのパニック頻度 週4〜5回 週0〜1回
強度行動障害支援者養成研修加算 未算定 算定開始(月約3.8万円)
職員の「強度行動障害への不安」 全員が「不安」 「対応できる自信がついた」
相談支援専門員からの評価 「対応力が不明」 「困難ケースも相談できる施設」
新規利用者の紹介 月0〜1件 月2〜3件(困難ケースの相談増)
施設全体の加算収入 基準 月+約3.8万円(年間約46万円)

※ 上記はコンサル支援先の事例をもとにした参考値です。利用者の障害特性・施設規模・地域の研修体制により異なり、同様の成果を保証するものではありません。

※ 強度行動障害支援者養成研修加算をはじめとする各種加算の算定要件・単位数・届出手続は、報酬改定等により変更される場合があります。算定にあたっては、最新の告示および所管の指定権者(都道府県・市町村の障害福祉担当窓口)で必ずご確認ください。

【Z管理者の3か月後の言葉】
「断ろうと思っていた受け入れが、施設を変えました。職員が強度行動障害を理解したことで、既存の利用者への支援も変わった。『行動の背景を読む』という視点が、全員に育ちました。加算が取れたことよりも、チームが成長したことの方が大きな収穫です」

「困難ケースを断らない施設」になることの経営的な意味

強度行動障害を有する方は、受け入れ先が非常に限られています。受け入れられる施設が少ないということは、受け入れる側にとって「選ばれる施設になれる」ということを意味します。

「困難ケースを受け入れる施設」が得るもの

  • ① 相談支援専門員から「頼れる施設」として認知される(紹介が増える)
  • ② 強度行動障害支援者養成研修加算の算定(収益改善)
  • ③ 重度障害者支援加算等の上位加算算定の可能性が広がる
  • ④ 職員の支援スキルが向上し、既存利用者への支援の質も上がる
  • ⑤ 「チャレンジして乗り越えた」という職員の達成感・定着への影響

「困難ケースを断り続ける施設」は、やがて「受け入れやすい方しか来ない施設」になる。「困難ケースも受け入れる施設」は、地域になくてはならない存在になる——Y法人の3か月は、そのことを示しています。

まとめ——「うちには無理」は、準備不足の言い訳かもしれない

強度行動障害のある方への支援を「うちには無理」と断っている施設の多くは、Y法人と同じ状態——「知らないから怖い・準備がないから不安」という状態にある可能性があります。

知ることで怖さは変わります。準備することで不安は減ります。アセスメント・研修・環境整備——この3つを3か月かけて整えることで、対応できるようになる施設は少なくありません。

「強度行動障害の方の受け入れを考えているが、何から始めればいいかわからない」「研修のことを教えてほしい」「加算の取り方を知りたい」——どのようなご相談でも、お気軽にお問い合わせください。

行動を「困った行動」ではなく「サイン」として読む支援の考え方は 利用者の「問題行動」が減った施設がやっていたこと、取りこぼしがちな加算の見直し・適正取得の進め方は 加算の取りこぼし・区分の見直し支援 もあわせてご覧ください。

強度行動障害支援の体制整備・研修の進め方・加算取得のご相談は、サービス内容もあわせて、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

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