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改善事例

毎月の請求ミスを「ゼロ」にした仕組み|国保連の差し戻しを防ぐ事務改善

——「個人の注意」に頼らず、構造で防ぐ

問題発生——「また請求ミスがありました」が毎月続く

「国保連から差し戻しが来るたびに、担当者を責めてしまっていました。でもいくら注意しても、翌月また別のミスが出る。いつからか、自分でも諦めかけていました」——生活介護事業所(定員25名)を運営するP法人の施設長・Q氏の言葉です。

P法人では請求業務を事務担当者1名が担当しており、毎月平均2〜3件の請求ミスが発生していました。ミスの内容は加算の算定誤り・利用日数の入力ミス・受給者証の確認漏れなど多岐にわたり、国保連からの差し戻しのたびに修正・再請求の手間が生じていました。

「ミスのたびに謝って、直して、また謝る。担当者も疲弊していたし、私自身も毎月の請求が怖くなっていました」とQ施設長。コンサルに相談してきたのは、過誤請求による返還金が発生したことがきっかけでした。

P法人の請求ミスの実態(直近6か月)

  • 月平均ミス件数:2.7件
  • ミスの種類別内訳:加算の算定誤り 42%/利用日数・時間の入力ミス 31%/受給者証の有効期限・上限確認漏れ 19%/その他(コード誤り等)8%
  • 過誤請求による返還金発生:1件(約43,000円)
  • 差し戻し対応にかかる月間時間:担当者の約6時間分

【Q施設長の言葉】
「担当者は決して怠慢ではありません。むしろ真面目で一生懸命な人です。でもミスが減らない。そのとき気づいたんです——問題は人ではなく、仕組みにあるんだと」

原因分析——ミスが「構造的に」生まれていた

原因①:請求業務が「頭の中」で完結していた

P法人では請求業務の手順が文書化されておらず、担当者の記憶と経験に依存していました。「何をいつまでにやるか」「何を確認するか」がすべて担当者の頭の中にあり、チェックリストも手順書も存在しませんでした。

担当者が変わるたびにゼロから覚え直しになるだけでなく、同じ人でも疲れているときや業務が重なったときにミスが起きやすい構造でした。

原因②:「ダブルチェック」が形骸化していた

一応、請求書類は施設長が確認することになっていましたが、Q施設長自身が「見てはいるが、数字の細部まで確認できていなかった」と認めています。

「確認した」という行為はあっても、「何を・どの基準で確認したか」が明確でないチェックは、ミスを防ぐ機能を果たしません。

原因③:受給者証の期限管理が「担当者任せ」だった

利用者の受給者証には有効期限があり、更新時期を見逃すと請求に影響します。P法人では受給者証のコピーをファイルに綴じているだけで、期限が近づいても自動的に誰かが気づく仕組みがありませんでした。

「毎月確認しているつもりだったが、20名以上の受給者証を一枚一枚見るのは現実的に難しかった」と担当者。

改善策——「人の注意力」に頼らない3つの仕組み

コンサルとP法人が設計した解決策の基本方針は一つです。「ミスをなくすために人を頑張らせるのではなく、ミスが起きにくい構造を作る」

仕組み①:請求業務の「標準手順書」と「月次チェックリスト」の作成

請求業務のすべての手順を文書化し、「月次請求チェックリスト」として整備しました。担当者が毎月このリストに沿って作業することで、確認漏れを構造的に防ぎます。

月次請求チェックリストの主な項目

【月末(前月分の確定作業)】

  • 出席簿と実績記録の突合(利用日数・時間)
  • 当月算定加算の一覧確認(追加・変更がないか)
  • 受給者証の有効期限確認(翌月末までに期限切れがないか)
  • 上限管理結果の確認(上限管理事業所がある場合)

【請求前(入力後)】

  • 利用者ごとの請求額と前月比較(大きな差異がないか)
  • 加算コードの確認(算定要件を満たしているか)
  • 施設長によるダブルチェック(チェックリストに署名)

【請求後】

  • 国保連への送信完了確認
  • 審査結果の確認(差し戻し・減額がないか)
  • 翌月の確認事項メモ(気になった点を残す)

ポイントは「施設長によるダブルチェック」の項目に署名欄を設けたことです。「確認した」という行為を記録として残すことで、チェックの質が上がりました。

仕組み②:受給者証の「期限管理台帳」と更新アラート

全利用者の受給者証の有効期限を一覧化した「受給者証管理台帳」を作成しました。毎月1日に台帳を確認し、2か月以内に期限が切れる利用者を特定して家族に更新案内を送るルールを設けました。

  • 毎月1日:台帳を開き「2か月以内に期限切れ」の利用者をリストアップ
  • リストアップされた利用者の家族に更新案内(電話またはお便り)
  • 更新された受給者証のコピーを受領したら台帳の日付を更新
  • 台帳の確認は月次チェックリストの項目に組み込み、確認漏れを防ぐ

「台帳を作ったら、受給者証の更新漏れがなくなった」(Q施設長)

仕組み③:「請求前ミーティング」の導入(月1回・15分)

請求作業の前日に、施設長・担当者・サビ管の3名で15分のミーティングを実施することにしました。議題は「今月の特記事項の確認」のみです。

  • 当月に新規加算の算定を開始したものはないか
  • 利用者の区分変更・受給者証の更新はなかったか
  • 支援内容の変更で請求に影響するものはないか

「15分のミーティングで、担当者が一人で気づけなかった変更点を拾えるようになった。チームで請求を確認するという意識が生まれた」とQ施設長。特にサビ管が参加することで、支援記録の変更点が請求に反映されているかを相互確認できるようになりました。

改善後の変化——導入から4か月後

指標 導入前 導入後4か月
月間請求ミス件数 平均2.7件 0件(4か月連続)
国保連の差し戻し件数 月平均1.8件 0件
担当者の請求関連残業 月平均6時間 月平均1時間
受給者証の期限切れ発生 年2件 0件
施設長の請求確認時間 月約2時間(不安あり) 月約30分(安心して確認)

※ 上記はコンサル支援先の事例をもとにした参考値です。事業所規模・請求ソフト・担当者の経験により異なり、同様の成果を保証するものではありません。

【担当者の言葉(4か月後)】
「以前は請求の時期が来るたびに憂鬱でした。何かミスをしているんじゃないかとドキドキしながら送信ボタンを押していた。今はチェックリストを終えたら『大丈夫』と思えます。仕事が怖くなくなりました」

まとめ——「ミスをなくせ」より「ミスが起きない仕組みを作れ」

請求ミスは担当者の能力や注意力の問題ではありません。P法人の事例が示すように、ミスは「仕組みの不在」から生まれます。チェックリストがない・ダブルチェックが形骸化している・期限管理が属人的——この3つが揃えば、どんなに真面目な担当者でもミスは起こり得ます。

逆に言えば、仕組みを整えれば、ミスは大きく減らせます。必要なのは「担当者への指導」ではなく「担当者が安心して働ける構造」です。なお、こうした記録・書類の整備は、運営指導・監査対応にも直結します。

「うちも毎月請求ミスがある」という施設は、まず月次チェックリストを1枚作ることから始めてみてください。それだけでも、来月の請求は変わり始めます。

請求業務の改善・事務体制の整備・運営改善についてのご相談は、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

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