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改善事例

自主点検で運営指導を「ノー指摘」で乗り切った施設の方法|前回7件からゼロへ

——「準備した施設」と「準備しなかった施設」の差

問題発生——前回指摘7件から「ノー指摘」へ

「前回の運営指導では7件の指摘を受けました。改善報告書を出したものの、正直なところ根本的には何も変わっていない。次の指導が来るのが怖くて、毎年この時期になると気が重くなる」——生活介護事業所(定員25名)を運営するH法人の施設長・I氏の言葉です。

前回の指摘内容は、個別支援計画の記載不備・会議録の未整備・加算算定の根拠書類の不足・身体拘束廃止に関する研修記録の不備など、いずれも「記録・書類」に関するものでした。

「同じ指摘を繰り返されることが一番恥ずかしい。でも日常業務に追われて、どこから手をつければいいかわからないままでいた」とI施設長。コンサルに相談が来たのは、次の運営指導通知が届く8か月前のことでした。

【前回運営指導での主な指摘事項(H法人・7件)】

  • ① 個別支援計画——目標が抽象的。モニタリング記録との整合性がない
  • ② 担当者会議録——参加者と日時のみ。議論の内容が記録されていない
  • ③ 処遇改善加算——キャリアパス要件の根拠書類が不十分
  • ④ 身体拘束廃止——委員会開催記録はあるが研修実施記録がない
  • ⑤ 苦情対応——苦情受付簿の記載が一部抜け
  • ⑥ 衛生管理——食品衛生に関するチェック記録の様式が不備
  • ⑦ 事故報告——ヒヤリハット記録の保存期間が要件を満たしていない

原因分析——なぜ同じ指摘が繰り返されるのか

原因①:「改善報告書」を出して終わりになっている

運営指導後に提出する改善報告書は、行政への約束です。しかし多くの法人では「報告書を出す」ことが目的化し、実際の業務改善につながっていません。指摘を受けた書類を一時的に整えても、それを維持する仕組みがなければ次の指導までにまた元に戻ります。「書類を直す」のではなく「書類が自然に整う仕組みをつくる」ことが本質です。

原因②:運営指導の「何を見られるか」を知らない

運営指導で何を確認されるかは、厚生労働省・各都道府県が公表している「運営指導マニュアル」や「確認事項一覧」に明記されています。しかし、これを事前に確認している法人は多くありません。「何を見られるかわかっていれば、準備できる」——これは当然のことですが、意外と実践されていません。

原因③:日常業務と書類整備が「別のこと」になっている

書類の不備が続く根本的な原因は、「支援する」ことと「記録する」ことが職員の中で切り離されているためです。「支援はしっかりやっている。でも記録が追いつかない」という声は現場でよく聞かれます。記録を「支援の証明」ではなく「余分な作業」と感じている職員が多い施設では、書類の質は上がりません。

改善策——8か月間でH法人がやった「3つの準備」

I施設長は、次の運営指導まで8か月という期間を逆算し、3つの準備を計画的に進めました。

準備①:行政のチェックリストで「現状診断」(1か月目)

まず横浜市の運営指導確認事項一覧を入手し、全項目を自施設に照らし合わせて点検しました。各項目を「○(整備済み)」「△(不十分)」「×(未整備)」の3段階で評価し、「×」と「△」を改善対象としてリスト化しました。

現状診断で使用した確認項目の分類(H法人の場合)

  • 確認項目の総数:52項目
  • ○(整備済み):31項目(60%)
  • △(不十分):14項目(27%)
  • ×(未整備):7項目(13%)
  • → △と×の合計21項目が改善対象。うち「記録・書類」に関するものが17項目(81%)を占めた

I施設長:「これだけ見えると、何から手をつければいいかが一気に明確になった」

準備②:「書類整備カレンダー」で8か月を逆算管理(2〜7か月目)

21項目の改善対象を、8か月のカレンダーに落とし込みました。月ごとに2〜3項目ずつ取り組むことで、「全部一気にやらなければならない」という焦りをなくし、確実に進められる計画にしました。

時期 取り組み項目 担当
1か月目 現状診断・優先順位整理 施設長・管理者
2か月目 個別支援計画の書式見直し・目標の具体化 サビ管
3か月目 担当者会議録の様式変更・議事記録の充実 サビ管・管理者
4か月目 処遇改善加算のキャリアパス要件書類整備 事務担当者
5か月目 身体拘束廃止委員会・研修記録の整備 管理者・全職員
6か月目 苦情受付簿・事故報告・ヒヤリハット様式の統一 事務担当者
7か月目 全項目の再点検・模擬運営指導の実施 全員
8か月目(指導前月) 書類の最終確認・当日対応の役割分担確認 施設長

準備③:「模擬運営指導」で本番を体験する(7か月目)

本番の1か月前、コンサルタントが行政担当者役を務め、実際の運営指導と同じ流れで模擬指導を実施しました。書類を実際に見せながら説明する訓練は、「書類はあるが説明できない」という問題を浮かび上がらせます。H法人では模擬指導で3件の不備が発見され、本番前に修正できました。

【模擬運営指導で発見された不備(3件)】

  • 個別支援計画の同意書——利用者の署名欄はあるが日付が抜けているものが2件
  • 衛生管理チェック表——新しい様式に切り替えたが、旧様式との保存ルールが未整理
  • ヒヤリハット記録——保存場所が担当者によって異なっており、一元管理されていなかった

「本番前に見つかって本当に良かった。模擬をやらなければ当日に指摘されていた」(I施設長)

改善後の変化——運営指導当日と結果

運営指導当日、H法人は以下の結果を得ました。

【運営指導の結果】指摘事項:0件(ノー指摘)
行政担当者からのコメント:「書類がきちんと整理されていて、担当者の方が内容をしっかり把握されていた。特に個別支援計画とモニタリングの整合性が取れていた点が印象的でした」

前回7件の指摘から、わずか8か月でノー指摘——この結果についてI施設長はこう振り返ります。

【I施設長の言葉】
「特別なことは何もしていません。チェックリストで現状を把握して、カレンダーで計画して、模擬指導で確認しただけです。でもそれをやるかやらないかで、これほど結果が変わるとは思いませんでした。一番の収穫は、書類整備が終わったことより、職員が『なぜ記録が必要か』を理解してくれたことです」

ノー指摘を「継続」するための仕組み

H法人は運営指導後も、以下の仕組みを継続しています。

  • 年2回の自主点検:行政のチェックリストを用いた内部監査を4月・10月に実施
  • 新任職員への記録研修:入職時に「なぜ記録するか」から教える研修を導入
  • 書類更新カレンダー:加算の届出期限・計画更新時期・研修実施時期を年間カレンダーで管理

「次の運営指導も怖くない」——I施設長のこの言葉が、仕組みが機能していることの証明です。

まとめ——運営指導は「準備した人が有利」

運営指導で指摘を受ける施設と受けない施設の差は、支援の質の差ではありません。「準備をしたかどうか」の差です。行政は何を確認するかをあらかじめ公表しています。そのリストに沿って自主点検し、不備を事前に直す——それだけのことが、多くの施設で実践されていません。

「次の運営指導がいつ来るかわからない」という方は、まずお住まいの都道府県・市区町村の運営指導確認事項一覧を入手して、自施設を照らし合わせてみてください。そこから準備は始まります。「うちは何件指摘されるだろう」と不安を感じている方は、本番前に一度、自主点検を受けてみることをお勧めします。

※ 本事例はコンサル支援先の事例をもとにした参考値です。運営指導で確認される項目・様式・記録の保存期間等は、自治体やサービス種別、報酬改定により異なります。準備にあたっては、必ず所管の自治体が公表する最新の運営指導確認事項・マニュアルをご確認ください。同様の結果を保証するものではありません。

運営指導への備え方は 運営指導・監査対策の支援、そもそも運営指導と監査は何が違うのかは 運営指導と監査の違いとは、書類が自然に整う事務の仕組み化は 毎月の請求ミスを「ゼロ」にした仕組み もあわせてご覧ください。

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