障がい者施設さま向け|経営の再生・改善を現場目線でまるごと支援 神奈川中心 × 全国対応|初回相談0円
お役立ちコラム

職員によって支援が違う|「統一すべき支援」と「個別に判断する支援」を分けて標準化する

障害福祉施設で支援のばらつきを減らし標準化する|Engood合同会社

障害福祉の現場では、職員の経験や人柄が支援に大きく影響します。長く関わっているからこそ気づけることがある——これは障害福祉の大切な強みです。

一方で、注意しておきたい状態があります。「職員によって支援が違いすぎる」という状態です。この記事では、すべてを同じにするのではなく、統一すべきものと個別に判断してよいものを分けて整理していく進め方をまとめます。

※ 本記事は、障害福祉の現場で起こり得る複数の課題をもとに再構成したモデル事例です。特定の施設・法人の実績を示すものではなく、記載の内容は改善の考え方を分かりやすくするための想定です。取り組みの効果は事業所の状況によって異なり、同様の成果を保証するものではありません。

「あの職員のときは落ち着いている」は相性なのか

想定するのは、生活介護を中心とした障害福祉事業所です。ある利用者は、予定の変更があると不安が強くなり、大きな声を出したり活動への参加を拒んだりすることがありました。

ところが、経験豊富なある職員が担当すると比較的落ち着いています。別の職員が担当すると不安定になる。現場では「相性がいいから」と受け止められていました。

しかし、その職員の支援を詳しく観察すると、相性ではありませんでした。予定変更を伝えるタイミング、話す順番、声の大きさ、本人との距離、次に何をするかの示し方、不安になり始めたときの対応——長年の経験から、自然に多くの工夫をしていたのです。

問題は、その方法を本人も明確に説明できていなかったことでした。だからこの事業所では、「あの人だからできる支援」を「施設としてできる支援」へ変える取り組みを始めました。

同じ利用者なのに、担当によって対応が変わっていた

施設内を確認すると、職員ごとにさまざまな違いがありました。利用者が活動を拒んだとき——

  • ある職員は「今日は参加しなくても大丈夫ですよ」とすぐ休憩へ切り替える
  • 別の職員は「みんなやっていますから、一緒にやりましょう」と参加を促す
  • また別の職員は、本人が落ち着くまで何も言わずに待つ

どの職員も利用者のことを考えて対応しています。問題は、施設として「なぜその支援をするのか」が共有されていないことでした。

いちばん困るのは新人職員です。先輩から「こうした方がいいよ」と言われ、翌日には別の先輩から「それはしない方がいい」と言われる。「誰の言うことが正しいのだろう」と迷います。この状態では、利用者にとっても職員にとっても支援が安定しません。

足りなかったのは「支援方法」ではなく「判断基準」

この段階で「支援マニュアルを作ろう」と考えたくなりますが、いきなりマニュアル作成へ進むのは早すぎます。まず、支援の違いが起きている場面を集めます。食事、排泄、活動参加、休憩、送迎、行動への対応——さまざまな場面で違いが見つかりました。

集めた違いを見ていくと、2種類あることが分かります。

  • 統一した方がよい違い……服薬の確認、安全確認、アレルギーへの対応、事故時の対応など。職員によって方法が変わってはいけない領域です
  • 利用者の状態に合わせて変えてよい違い……「今日は活動に参加するか」「少し休んでから始めるか」など。本人の体調や意思によって変わり得る領域です

つまり必要だったのは、すべての支援を同じにすることではなく、「何を統一し、何を個別の判断に委ねるか」を決めることでした。ここを分けないまま「マニュアルを作る」と、現場は「利用者は一人ひとり違うのだから無理だ」と反発します。

整え方① 支援の「ばらつきマップ」を作る

最初に、職員へこう聞きます。「職員によって対応が違うと感じる場面はありますか」

食事を残したとき、活動を拒んだとき、送迎車へ乗りたがらないとき、同じ質問を繰り返すとき、他の利用者とトラブルになったとき、予定変更があったとき——多くの場面が挙がってきます。

これを一覧にし、安全に関係する/本人の権利に関係する/生活習慣に関係する/本人の意思によって変えてよいといった軸で分類します。これが「支援のばらつきマップ」です。

最初から全利用者の全支援を統一しようとせず、ばらつきによる影響が大きい場面から着手します。

整え方② ベテラン職員の支援を「見える化」する

次に、支援が上手な職員へ「どうしてうまく対応できるのですか」と聞きます。最初は「長く関わっていますから」「何となく分かるんです」という答えが返ってきます。ここで終わらせません。

実際の支援場面を振り返りながら、具体的に聞いていきます。

  • 「利用者が不安になる前に、何を見ていますか」
  • 「最初に何と声をかけていますか」
  • 「大きな声が出たとき、すぐに話しかけないのはなぜですか」

すると、こうした答えが出てきます。「視線が落ち着かなくなったら不安のサイン」「予定変更は直前ではなく少し前に伝える」「大きな声が出た直後は説明しても入りにくいので少し待つ」。

これが暗黙知の言語化です。大事なのは、ベテランの「勘」を否定しないこと。その中身を取り出して、組織の財産に変えるという姿勢です。

▶ 行動の背景を読み解いて対応を組み立てる考え方は 利用者の「問題行動」が減った施設がやっていたこと|行動を「サイン」として読む支援 でも解説しています。

整え方③ 手順だけでなく「理由」を書く

支援方法を整理するとき、「◯◯してください」だけでは足りません。

「予定変更は事前に伝える」ではなく、「急な変更で不安が高まりやすいため、見通しを持てるよう事前に伝える」と理由まで書きます。

理由が分かっていれば、マニュアルに書かれていない状況でも職員が応用できます。逆に手順だけを覚えると、想定外の場面で動けなくなります。障害福祉の標準化では、「何をするか」と「なぜするか」をセットにすることが要になります。

整え方④ 個別支援計画と日常の支援をつなげる

個別支援計画は作成されているのに、現場の職員に「この利用者の計画の目標は何ですか」と聞くと、すぐ答えられないことがあります。計画が、日常の支援とは別の「書類」になっている状態です。

そこで支援方法を検討するときに、「この対応は個別支援計画のどの目標につながっているか」を確認する習慣をつくります。たとえば本人の選択の機会を増やすことが目標なら、職員が先回りしてすべて決めてしまう支援は見直しの対象になります。

サービスの質とは、事故なく一日を終えることだけではありません。個別支援計画で定めた本人の目標が、毎日の支援に反映されていることが本質です。

▶ 個別支援計画の更新や記録が運営指導でどう確認されるかは 運営指導で「改善勧告」を受けた施設が繰り返す指摘を断った方法、当日までの準備は 運営指導(旧・実地指導)の準備|チェックポイントと必要書類 をご覧ください。

整え方⑤ 月1回、一人の利用者だけを深く振り返る

全利用者について毎月詳細な検討会を行うと、職員の負担が大きくなって続きません。そこで通常のケース会議とは別に、月1回、一人の利用者について短時間で振り返る機会を設けます。

確認するのは3点だけです。

  • 最近うまくいった支援
  • 最近うまくいかなかった支援
  • その違いは何だったか

ここでの要は、問題事例だけでなく「うまくいった支援」を分析することです。振り返りが問題事例だけになると、会議は反省会になります。「なぜうまくいったのか」を言葉にできれば、その方法を他の職員も使えるようになります。

「ベテランが休みの日」が変わる

支援方法とその理由を共有していくと、変化が出やすいのは経験豊富な職員が休みの日です。

以前は「今日はあの人がいないから大丈夫かな」と他の職員が不安を感じていた場面で、「この利用者が不安になるサイン」「最初に行う対応」「避けた方がよい声かけ」が共有されていれば、別の職員でも一定の水準で対応できます。

新人教育も変わります。「先輩のやり方を見て覚える」から「施設としての支援の考え方を理解する」へ。さらに、職員間で支援方法の意見が分かれたときも、「私はこう思う/私は違う」という個人間の対立ではなく、「本人にとってどちらが適切か」という議論がしやすくなります。

▶ 新人が育つ教育の仕組みは 新人職員が辞めなくなった教育の仕組み、職員間で対応を統一して退所を防いだ実例は 「場所が悪い」で止まっていた生活介護が定員に近づくまでの2年 をご覧ください。

標準化とは「全員が同じことをする」ことではない

障害福祉で「標準化」という言葉を使うと、「利用者は一人ひとり違うのだから、マニュアル化できない」という声が上がることがあります。これは半分正しく、半分違います。

確かに、障害特性・生活歴・希望・体調は一人ひとり異なるため、全員へ同じ支援をすることはできません。しかし安全確認の方法、重大な事故が起きたときの対応、本人の意思を確認する考え方、情報共有の方法、支援記録の基本——ここまで職員ごとに違ってよいわけではありません。

もう一つ大切なのが、「誰が支援するか」でサービスの質が極端に変わらないことです。優れた職員がいることは施設の財産です。しかし、その職員が退職した瞬間に支援の質まで失われるのであれば、それは組織の技術にはなっていません。経験を言語化し、他の職員が学び、さらに改善する。そこまでできて初めて、個人の経験が施設のサービスの質になります。

実践のポイント

  • ① 優秀な職員から業務を奪うのではなく、「なぜその人ならできるのか」を分析する……そこに施設全体の質を上げる手がかりがあります
  • ② うまくいった日こそ振り返る……問題が起きたときだけ振り返ると、会議が反省会になります
  • ③ 支援方法には理由を書く……「◯◯だから、この対応をする」まで共有すれば、状況が変わっても考えて動けます
  • ④ 新人の「言うことが違う」は貴重な情報……教育の問題であると同時に、標準化の課題を発見する材料です
  • ⑤ 分厚いマニュアルより一枚に整理する……重要な支援は「本人の特徴/注意すべきサイン/基本の対応/避ける対応/その理由」を一枚にまとめる方法が有効です

サービス品質改善チェックリスト

  • □ 職員によって大きく支援方法が異なる場面を把握している
  • □ 安全に関わる支援方法は統一されている
  • □ 支援方法だけでなく、その理由も共有している
  • □ 経験豊富な職員の支援技術を言語化している
  • □ 「その職員しかできない支援」を減らしている
  • □ 個別支援計画と日常の支援がつながっている
  • □ 新人職員が支援方法の違いで混乱していない
  • □ うまくいかなかった支援だけでなく、成功した支援も振り返っている
  • □ 本人の意思を確認しながら支援方法を調整している
  • □ 支援方法を一度決めたままにせず、定期的に見直している

まとめ——良い支援を「その人の技術」で終わらせない

障害福祉の現場には、長年の経験によって高い支援技術を持つ職員がいます。小さな変化に気づく、声をかけるタイミングが的確、本人が不安定になる前に動ける。こうした力は、簡単なマニュアルだけで身につくものではありません。

だからこそ、その経験を「あの人だからできる」で終わらせないことが大切です。何を見ているのか、なぜそのタイミングなのか、なぜその言葉を使うのか、なぜそのときは何もしないのか。一つずつ言葉にしていくと、本人も意識していなかった支援技術が見えてきます。

サービスの質を高めるために必要なのは、すべての職員を同じように動かすことではありません。「誰が支援しても守るべきこと」と「その利用者に合わせて変えること」を分けること。そして良い支援を見つけたら、その理由まで組織で共有すること。それが、職員個人の力量に依存しすぎない支援体制の第一歩になります。

あわせてお読みください。行動を「サイン」として読む支援は 利用者の「問題行動」が減った施設がやっていたこと、職員会議を建設的な場に変えた実例は 職員会議で意見が出ない施設が「建設的な場」に変わった実例、判断を現場へ委譲して育てる進め方は 管理者に判断が集中する施設 で解説しています。支援体制の整備・人材育成のご相談は サービス内容 もあわせて お問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

よくあるご質問

職員によって支援方法が違います。マニュアルを作るべきでしょうか?
いきなりマニュアル作成へ進むのは早いかもしれません。まず支援の違いが起きている場面を集め、「統一した方がよい違い」(服薬確認・安全確認・アレルギー対応・事故時対応など)と「利用者の状態に合わせて変えてよい違い」(活動に参加するか、少し休んでから始めるかなど)に分けてください。必要なのはすべてを同じにすることではなく、何を統一し何を個別の判断に委ねるかを決めることです。
「利用者は一人ひとり違うから標準化できない」と現場から言われます。
半分は正しい指摘です。障害特性・生活歴・希望・体調は一人ひとり異なるため、全員へ同じ支援はできません。しかし安全確認の方法、重大な事故が起きたときの対応、本人の意思を確認する考え方、情報共有の方法、支援記録の基本まで職員ごとに違ってよいわけではありません。標準化すべきものと個別化すべきものを分けることが出発点になります。
ベテラン職員に聞いても「何となく分かる」としか言われません。
抽象的に聞くと抽象的な答えが返ってきます。実際の支援場面を振り返りながら「利用者が不安になる前に何を見ていますか」「最初に何と声をかけていますか」「大きな声が出たとき、すぐ話しかけないのはなぜですか」と具体的に聞いてください。「視線が落ち着かなくなったら不安のサイン」「予定変更は直前ではなく少し前に伝える」といった技術が言葉になって出てきます。
支援方法を文書にするとき、気をつけることはありますか?
手順だけでなく理由を書いてください。「予定変更は事前に伝える」ではなく「急な変更で不安が高まりやすいため、見通しを持てるよう事前に伝える」と書きます。理由が分かっていれば、マニュアルにない状況でも職員が応用できます。手順だけを覚えると想定外の場面で動けなくなります。
個別支援計画が「書類」になってしまっています。
支援方法を検討するときに「この対応は個別支援計画のどの目標につながっているか」を確認する習慣をつくる方法があります。たとえば本人の選択の機会を増やすことが目標なら、職員が先回りしてすべて決めてしまう支援は見直しの対象になります。計画で定めた目標が毎日の支援に反映されていることが、サービスの質そのものです。
振り返りの会議が反省会になってしまいます。
問題事例だけを扱っているためかもしれません。月1回、一人の利用者について「最近うまくいった支援」「最近うまくいかなかった支援」「その違いは何だったか」の3点を短時間で振り返る形にしてみてください。うまくいった理由を言葉にできれば、その方法を他の職員も使えるようになります。
Contact

障がい者施設の経営、
Engoodが再生まで伴走します。

「稼働率が上がらない」「赤字が続いている」「加算を取りこぼしている」——そんな施設さまへ。
初回のご相談・経営診断は無料です。現状の見える化から、わかりやすくご案内します。