運営指導で「改善勧告」を受けた施設が繰り返す指摘を断った方法|月次の自主点検の仕組みで次回ノー指摘へ
——「また指摘された」を繰り返さないための自主点検の仕組み
【エビデンスと予測の区別について】
・運営指導・監査に関する記述は障害者総合支援法・厚生労働省通知に基づきます(出典明示)。
・登場する人物・施設は架空です(実際のコンサル支援先を参考に加工)。
・「自主点検で指摘が減る」という記述は本事例の観察に基づくものです。
・筆者の経験・推測は「(筆者推測)」と本文中に明示します。
問題発生——「改善報告書を提出したのに、また同じ指摘を受けた」
「2年前の運営指導で4件の指摘を受けました。改善報告書を提出して対応したつもりでいたのに、今回また来て——同じような指摘が出てしまいました」——グループホーム(定員12名・2棟)と就労継続支援B型(定員20名)を運営するDDD法人の施設長・EEE氏の言葉です。
EEE施設長がコンサルに相談してきたのは、2回目の運営指導の直後でした。「改善したつもりだったが、また指摘された。次回こそ完全に対応したいが、どこが問題なのかわからない」という状況でした。
運営指導・監査の制度概要【エビデンス:厚生労働省通知・障害者総合支援法】
【根拠】
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 第48条
- 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する指導監督の徹底について」
【運営指導とは】
- 都道府県・市区町村が指定事業者に対して実施する定期的な実地確認(旧:実地指導)
- 人員・設備・運営基準への適合状況を確認する
- 問題がある場合は「改善勧告」「改善命令」「指定取消」と段階的に対応される
【監査への移行の端緒(3要件・厚生労働省通知)】
- ① 利用者・家族・職員からの通報・申告
- ② 運営指導での著しい不正・違反の発見
- ③ 不正請求の疑いがある情報
【重要】運営指導と監査は別の手続きです。監査は不正・違反の疑いがある場合に実施され、指定取消等の行政処分につながる場合があります。詳細は都道府県の障害福祉担当課にご確認ください。
DDD法人の2回の運営指導の指摘内容(参考値)
【1回目の指摘(2年前)】
- ① 個別支援計画の更新が遅延している
- ② 会議録の記録が不十分
- ③ 身体拘束廃止委員会の議事録に審議内容がない
- ④ 処遇改善加算の賃金改善の記録が不明確
【2回目の指摘(今回)】
- ① 個別支援計画の更新——一部改善されたが再指摘
- ② モニタリング記録の記載が薄い(新規指摘)
- ③ 処遇改善加算の実績報告書の記載不備(新規指摘)
→「改善したつもり」が「改善できていなかった」ものと「新たな問題」が混在していました。
原因分析——「改善したつもり」になる3つの構造
原因①:指摘への対応が「その場しのぎ」になっていた(事実)
1回目の指摘を受けて改善報告書を作成しましたが、「報告書を提出すること」が目標になっており、「現場の運営が本当に変わったかどうか」の確認が行われていませんでした。報告書の提出後、確認する仕組みがありませんでした。
原因②:「指摘の根本原因」を分析していなかった(事実)
個別支援計画の更新が遅延する背景には、「担当者が忙しくて時間が取れない」「更新のリマインダーがない」「誰が管理するかが不明確」という構造的な問題がありました。しかし改善報告書には「更新を徹底します」とだけ書かれており、根本原因への対策が含まれていませんでした。
原因③:自主点検の仕組みがなかった(事実)
運営指導の間隔は通常数年です。その間に「現在の運営が基準を満たしているか」を自ら確認する仕組みがなければ、問題が蓄積していることに気づけません(筆者推測:運営指導の直前にしか確認しない施設では問題が蓄積しやすいという観察はコンサル現場での経験に基づくものです)。
改善策——「次回ノー指摘」のための3か月
取り組み①:指摘事項の「根本原因分析」
今回の指摘事項について、「なぜそうなったか」を5Why(なぜを5回繰り返す)で分析しました。
(個別支援計画の更新遅延・根本原因分析)
「なぜ更新が遅れたか?」→「担当者が気づかなかった」
「なぜ気づかなかったか?」→「更新期限の管理ツールがなかった」
「なぜ管理ツールがなかったか?」→「誰が管理するか決まっていなかった」
「なぜ決まっていなかったか?」→「計画管理の責任者が明確でなかった」
→ 対策:サービス管理責任者が全利用者の計画更新期限を一覧管理し、毎月1日にチェックするルールを設定する
取り組み②:「自主点検チェックリスト」の作成と月次運用
運営指導で確認される主な項目を網羅した「自主点検チェックリスト」を作成し、毎月第1月曜日にEEE施設長が確認する習慣を作りました。
自主点検チェックリストの主要項目(DDD法人版)
- 【個別支援計画】全利用者の計画更新期限一覧を確認(期限切れがないか)/直近のモニタリング記録が具体的に記載されているか
- 【会議・記録】個別支援会議の議事録に出席者・審議内容・決定事項が記載されているか/身体拘束廃止委員会の議事録に事例・判断・対策が記載されているか
- 【加算関係】処遇改善加算の賃金改善記録が最新になっているか/算定している加算の要件書類が揃っているか
- 【人員・設備】人員基準を満たしているか(常勤換算の確認)/健康診断・感染症対策の記録が最新になっているか
【エビデンス注記】チェックリストの項目は一般的な運営指導での確認項目を参考に作成しています。自治体・サービス種別によって確認項目が異なります。最新の運営指導実施要領(都道府県が公表)をご参照ください。
取り組み③:「改善進捗管理表」で指摘事項を月次でモニタリング
前回の指摘事項と今回の指摘事項を一覧化し、「対策内容・担当者・期限・進捗状況」を月次で確認する表を作成しました。「完了した」だけでなく「定着しているか」を3か月後に再確認する仕組みを設けました。
次回の運営指導の結果——1年後
| 指標 | 2回目の運営指導時 | 3回目の運営指導(1年後) |
|---|---|---|
| 指摘件数 | 3件(改善勧告1件含む) | 0件(ノー指摘) |
| 個別支援計画の更新状況 | 一部遅延あり | 全員適切に更新 |
| 会議録の記載 | 「薄い」と指摘 | 具体的な審議内容を記載 |
| 処遇改善加算の書類 | 「不備あり」と指摘 | 問題なし |
| 自主点検の実施 | なし | 月1回・12か月継続 |
※ 上記は参考値です。運営指導の指摘件数は施設の状況・自治体の確認方針によって異なります。自主点検の実施がノー指摘を保証するものではありません。
【EEE施設長の言葉(3回目の運営指導後)】
「運営指導当日、調査員の方に『書類の整理が非常によくできています』と言っていただきました。2年前に改善勧告を受けた施設が、ノー指摘になれた。毎月チェックリストを確認するだけで、こんなに変わるとは思いませんでした」
「指摘を受けてから慌てるのではなく、日頃から自分で確認する習慣が大事だとわかりました。運営指導は怖いものではなく、自分たちの運営を確認してもらう場だと思えるようになりました」
まとめ——「次回こそ」は自主点検の習慣から始まる
運営指導での指摘が繰り返される施設の多くは、「指摘への対応」はするが「自主的な確認の仕組み」を持っていません(筆者推測:コンサル現場での観察に基づくものです)。毎月1回・30分の自主点検チェックリストの確認——これを続けることで、運営指導への対応力は着実に変わっていきます。「うちも毎回同じような指摘を受けている」という施設長は、まず前回の指摘事項の根本原因を分析することから始めてください。
指導の直前に集中して準備してノー指摘を実現した事例は 自主点検で運営指導を「ノー指摘」で乗り切った施設の方法、当日までの準備・必要書類は 運営指導(旧・実地指導)の準備|チェックポイントと必要書類、運営指導と監査の違い・監査に移行する端緒は 運営指導と監査の違いとは もあわせてご覧ください。
運営指導対策・自主点検体制の整備・書類改善のご相談は、運営指導・監査の事前対策支援やサービス内容もあわせて、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。