入居者の退去が続くとき|グループホームの入居率を戻す5つの見直し
グループホームの経営で入居率が落ちるとき、原因は「新しい入居者が決まらないこと」だけではありません。出ていく人が続いているほうが、経営に効いていることがあります。募集を強化しても、同じペースで退去が出ていれば入居率は戻りません。
この記事では、退去を「前向きな退去」と「防げたかもしれない退去」に分けて考える方法と、後者に多い5つの理由、そして退去が出たあとに何を記録しておくかを整理します。私たちは自社でも障害福祉の事業所を20年以上運営してきました。空室が続くときに現場で何が起きているかを、支援と収支の両面から見ていきます。
退去には「前向きな退去」と「防げたかもしれない退去」がある
まず、すべての退去を減らすべき対象として扱わないことが出発点です。ここを分けないまま「退去を減らそう」と号令をかけると、本人の希望を止める方向に力が働いてしまいます。
制度は一人暮らしへの移行を後押ししている
令和6年度の報酬改定では、グループホームに入居している方が一人暮らし等を希望した場合の支援や、退居後の一定期間の支援を評価する仕組みが設けられました。厚生労働省の改定内容の資料では、入居中の支援、入居前から一人暮らしを希望する方への支援、そして退居後の支援という3つの段階が図で示されています。
つまり、一人暮らしへの移行は「入居率が下がる困った出来事」ではなく、制度上は評価される支援だということです。ここを経営者と現場で共有しておかないと、職員が移行の希望を拾いにくくなります。
ただし同じ資料には注記があり、利用者がグループホームの継続的な利用を希望している場合、意思の表明が十分に確認できていない場合、事業所や支援者の都合による場合などは、加算の対象外とされています。「空きが出ても仕方ない」と現場が判断して送り出すような形は、制度の想定とは違うということです。加算の要件や単位は改定で変わりますので、算定を検討する際は最新の告示と所管の行政窓口で必ずご確認ください。
分けて記録しないと、次の一手が決まらない
退去を記録するとき、日付と転居先だけを残している事業所は少なくありません。ここに「本人の希望による移行」「体調・加齢による医療機関や他サービスへの移行」「支援や環境が合わなかった」「家族の意向」「その他」という区分を足すだけで、翌月からの打ち手が変わります。前者2つが多いなら募集の設計を、後ろ3つが多いなら支援と説明の設計を見直すことになります。
防げたかもしれない退去に多い5つの理由
① 入居前の説明と、実際の暮らしが違った
見学のときに見た雰囲気と、実際に住んでからの生活が違う——これがもっとも多い入り口です。食事の時間、外出のルール、来客や外泊の扱い、金銭管理の方法。入居前に説明したつもりでも、本人と家族の受け取り方が違っていることがあります。説明した内容と、本人が理解した内容を分けて確認するのが実務的な対策です。
② 他の入居者との関係が続かなかった
共同生活である以上、相性の問題は必ず起きます。ここで大事なのは、起きたこと自体ではなく、起きたときに誰がどう間に入るかが決まっているかです。担当者が不在の日に何も動かない状態だと、小さな摩擦が数週間で退去の理由に育ちます。
③ 夜間や緊急時の対応に不安が残った
本人よりも家族が不安を感じて退去に傾くケースです。夜間の連絡体制、急な体調変化のときの流れ、緊急時に誰が来るのか。この3点が言葉で説明できる状態になっているかどうかで、家族の受け止め方は変わります。夜間体制そのものの整え方は、改善事例のページでも具体的に扱っています。
④ 体調や加齢の変化に、支援が追いつかなかった
入居時と数年後では、必要な支援は変わります。通院の付き添いが増えた、移動の介助が必要になった、服薬の管理が難しくなった。変化に気づいていても体制が変えられないまま時間が過ぎると、家族から「うちでは見られないのでは」と切り出される形になります。変化に気づいた時点で、支援の内容と体制を見直す場を持てているかが分かれ目です。
⑤ 家族に情報が届いていなかった
本人が納得していても、家族が状況を把握していないと不信が育ちます。「聞いていない」が積み重なった結果として退去の相談が来る、という順番です。日々の様子をどこまで、どの頻度で、誰が伝えるのか。ここが個人の裁量になっている事業所ほど、担当者が変わったときに崩れます。
退去が出たあとにやること
退去の連絡を受けたとき、多くの事業所は次の入居者の募集に意識が向きます。募集は当然必要ですが、その前に30分だけ時間を取って、次の3つを残しておいてください。
- いつ、どの段階で気持ちが動いたか……退去を切り出した日ではなく、その前に何があったかを本人・家族・職員から聞き取る
- 事業所側で対応できた余地があったか……なかったなら前向きな退去、あったならどの時点で何ができたか
- 同じことが起きそうな入居者が他にいないか……1件の退去は、たいてい単独では起きていない
この3点を積み上げると、半年後には「うちの退去はこの理由が多い」という傾向が見えてきます。傾向が見えれば、募集の言葉も、見学時の説明も、体制の優先順位も変えられます。職員の離職が背景にあるケースについては障害者グループホームの職員が辞める4つの理由もあわせてご覧ください。職員が入れ替わり続けている状態は、入居者の安心にも直結します。
空室が続くと、収支には静かに効いてくる
グループホームは、定員に対する入居者数がそのまま収入に反映される事業です。1人分の空室が数か月続いても、家賃や光熱水費、世話人の人件費は大きくは減りません。退去を1件防ぐことは、新規の入居者を1人迎えることと、入居率のうえでは同じ意味を持ちます。それでいて、退去を防ぐほうが募集にかかる手間は小さいことが多いのです。
入居率と収支の立て直しについては、障害者グループホームの経営・開設でお悩みの事業者さまへで、開設段階から運営中の見直しまでを整理しています。支援体制の見直しから収支の組み立てまで、どこをご一緒できるかはサービス内容のページにまとめています。「退去が続いていて、どこから手を付ければよいか分からない」という段階でも構いません。Engoodは横浜を拠点に、神奈川県内はもちろん全国からのご相談にオンラインで対応しています。初回のご相談は無料です。
※本記事の制度に関する記述は、厚生労働省ホームページ「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」(https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf)の内容を要約・編集した一般的な整理です(2026年8月時点)。報酬や加算の要件は改定で変わりますので、算定の可否は最新の告示および所管の行政窓口で必ずご確認ください。記載の内容は同様の成果を保証するものではありません。


