消耗品の購入が場当たり的で、費用が読めない|発注と在庫の見直しで無駄を減らす
※本事例は、実際の複数の事例をもとに再構成した架空のモデルケースです。特定の法人や事業所を指すものではありません。文中の数字は、説明のために置いた仮定の数字であり、実際の事業所の実績や、効果を保証するものではありません。
はじめに
手袋やマスク、洗剤、トイレットペーパー、おむつなど、障害福祉の事業所では、日々さまざまな消耗品を使います。一つひとつは少額でも、積み重なると、毎月の支出の中で無視できない大きさになります。ところが、購入が職員ごとの判断に任されていると、同じ物を重ねて買ったり、使い切れずに期限が切れたりして、無駄が生じやすくなります。
今回は、運営者の視点から、消耗品の購入を整え、費用と手間を減らす方法を、モデルケースで整理します。
事例の概要
架空のO法人は、生活介護とグループホームを運営しています。消耗品の購入は、各事業所の職員が、気づいたときにドラッグストアや通販で行っています。毎月の消耗品費は、法人全体で約40万円です。
運営者が帳簿を見直すと、同じ種類の物を、複数の職員が別々に買っていること、期限のある物品が使われないまま廃棄されていること、まとめて買えば安くなる物を、少量ずつ買っていることが分かりました。一方で、感染対策に使う物品は、在庫が切れて、慌てて買い足す場面もありました。
コンサルタントの視点――何が起きていたのか
このケースの問題は、消耗品の購入が、誰かの責任として管理されておらず、使用量も在庫も把握されていなかったことです。把握していなければ、買いすぎも、足りなくなることも、防げません。
運営者の立場で考えるべきは、単に安く買うことではなく、必要な物を、必要なときに、適切な量だけ確保する仕組みをつくることです。とくに、感染対策や利用者の安全に関わる物品は、安さよりも、切らさないことと品質を優先する必要があります。
見直しの手順
O法人では、次の順で見直しを進めました。最初に、3か月分の購入記録を整理し、品目ごとに、購入先、数量、金額、廃棄した量を一覧にしました。そのうえで、法人全体の月ごとの使用量を確認しました。
そのうえで、五つの見直しを行いました。一つ目は、品目の分類です。毎月決まって使う物、感染対策や安全に関わる物、たまにしか使わない物に分けました。二つ目は、発注担当者の明確化です。事業所ごとに担当者を決め、購入を担当者に集約しました。
三つ目は、在庫の管理です。保管場所を決め、残りの量が一目で分かるようにして、不足しそうな物を早めに発注できるようにしました。
四つ目は、まとめ買いと相見積もりです。毎月決まって使う物は、法人全体でまとめて購入し、複数の業者から見積もりを取りました。五つ目は、使用期限の管理です。期限のある物品は、先に入れた物から使うことを決め、期限が近い物が分かるようにしました。
なお、利用者の負担金や、実費として請求できる物品の範囲、会計処理、衛生用品や医療的な物品の取扱いは、サービスの種類や制度によって異なります。見直しを行う際は、最新の基準や通知を確認し、指定権者(都道府県・市町村)や専門家に確認したうえで進めてください。
数字で見る変化の見通し
ここでは、あくまで仮定の数字で、費用の変化を計算してみます。現状の消耗品費は、月に40万円と仮定します。
まず、無駄の削減です。廃棄や重複購入による無駄が、消耗品費の5%あったと仮定します。40万円×5%=2万円です。次に、まとめ買いによる値引きです。消耗品費のうち、まとめ買いできる物が30万円分あり、5%の値引きが得られると仮定します。
30万円×5%=1.5万円です。合わせて、2万円+1.5万円=3.5万円の削減で、年間では、3.5万円×12か月=42万円です。
一方、見直しの運用にかかる職員の時間も考えます。時間単価を1,600円とし、在庫の確認と発注の取りまとめに、月に5時間かかると仮定すると、5時間×1,600円=8,000円で、年間では、8,000円×12か月=9万6,000円です。
削減額から、この費用を差し引くと、42万円-9万6,000円=32万4,000円です。
ただし、これは説明のための単純な試算です。実際の無駄の割合や、値引きの水準は、品目や業者、購入量によって大きく異なります。また、まとめ買いをすれば、在庫を置く場所や、使い切るまでの期限の管理が必要になり、買いすぎれば、かえって無駄が増えるおそれもあります。
大切なのは、使用量と費用を数字で把握し、安全に関わる物品は安さだけで選ばない、という方針を定めることです。
運営者が特に気をつけた点
運営者として特に気をつけたのは、次の点です。まず、感染対策や安全に関わる物品を、費用削減の対象にしすぎないことです。手袋やマスク、消毒用品は、品質と、切らさないことを優先しました。次に、現場の使いやすさを損なわないことです。
安い物に切り替えて、使い勝手が悪くなれば、かえって無駄や事故の原因になるため、切り替えの前に、現場の職員の意見を聞きました。
さらに、在庫の管理が、職員の負担にならないようにしました。確認の方法は簡単にし、記録は、一覧に数量を書き込むだけにしました。購入を担当者に集約する際には、急に必要になった場合の連絡の方法や、緊急時の購入のルールも、あらかじめ決めておきました。
実践アドバイス
同じような課題を抱える運営者の方に、次のような順序をお勧めします。まず、3か月分の購入記録を、品目ごとに整理し、使用量と費用を確認してください。次に、毎月決まって使う物と、安全に関わる物を分け、切らしてはいけない物の最低限の在庫量を決めてください。
一方で、一度にすべての品目を切り替えようとすると、現場が混乱します。まず、使用量の多い物や、無駄が目立つ物から始め、様子を見ながら広げていくことが大切です。安さを追いかけるあまり、品質や安全性がおろそかにならないよう、切り替えの基準も、あわせて整えてください。
運営者のためのチェックリスト
ご自身の事業所を振り返るときの観点です。
- 消耗品の購入記録を、品目ごとに整理しているか。
- 購入の担当者が決まっているか。
- 在庫の保管場所と、残りの量の確認方法が決まっているか。
- 感染対策や安全に関わる物品の、最低限の在庫量を決めているか。
- 毎月決まって使う物を、まとめて購入し、見積もりを比べているか。
- 使用期限の管理をしているか。
- 物品を変更する際に、現場の意見を聞いているか。
- 実費の請求や会計処理の取扱いを、専門家に確認しているか。
まとめ
消耗品の購入は、場当たり的に行うのではなく、品目の分類、担当者の明確化、在庫の管理、まとめ買いと相見積もり、使用期限の管理を整えることで、無駄を減らし、費用を読みやすくできる可能性があります。ただし、安全に関わる物品は、安さよりも品質と確保を優先する必要があります。効果は事業所や品目によって異なるため、定期的に見直す必要があります。
なお、制度や基準は、サービスの種類や制度改正によって変わることがあります。実際に見直しを行う際は、最新の基準や通知を確認し、不明な点は指定権者(都道府県・市町村)や専門家に確認したうえで進めてください。
毎月の収支の見方は 月次収支と損益分岐点の事例、売上があっても資金が残らない原因の整理は 売上を分解するコラム、感染対策の物品を含む備えは 感染症対策を仕組みにした事例、大きな支出の平準化は 設備の修繕・更新計画の事例 もあわせてご覧ください。
収支や経費の見直しのご相談は サービス内容をご覧のうえ、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。