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「探す・待つ・聞く・戻る」を減らす|業務時間ではなく「中断」を測る業務改善

障害福祉施設で探す・待つ・聞く・戻るの中断を減らす業務改善|Engood合同会社

障害福祉のご相談では「とにかく人が足りません」という話がよく出ます。朝から送迎、受け入れ、健康確認、排泄介助、活動、食事、記録、家族連絡と、職員は一日中動いています。

人員不足が深刻な事業所があるのは事実です。ただ、人を増やす前に一度確認しておきたいことがあります。職員は一日のうち、何に時間を使っているのかです。

※ 本記事は、障害福祉の現場で起こり得る複数の課題をもとに再構成したモデル事例です。特定の施設・法人の実績を示すものではなく、記載の内容は改善の考え方を分かりやすくするための想定です。取り組みの効果は事業所の状況によって異なり、同様の成果を保証するものではありません。

忙しさの正体は、大きな仕事ではなかった

想定するのは日中活動系の障害福祉事業所です。職員からは「利用者とゆっくり話す時間がない」「記録が勤務時間内に終わらない」「もう一人職員がいれば楽になる」という声が出ていました。

そこで実際の動きを観察すると、意外な事実が見えてきました。職員が施設内を頻繁に往復しているのです。

  • 排泄介助をしようとして手袋がなく、倉庫へ取りに行く
  • 利用者の予定を確認しようとして、今日の予定表はどこかと別の職員に聞く
  • 活動準備を始めてから道具が足りないと気づき、保管場所へ戻る
  • 家族へ電話しようとして、この件はもう連絡したかを確認する

一つひとつは小さなことです。だから職員自身もこれを問題と認識していませんでした。しかし一日に何十回も繰り返されれば、大きな時間になります。

業務時間ではなく「中断」を測る

ここでの進め方が、通常の業務改善と少し違います。最初から細かなタイムスタディを行うのではなく、3日間だけ「仕事が途中で止まった場面」を記録します

すると、中断の理由は大きく5つに分類できました。

  • 物を探す
  • 情報を探す
  • 人へ確認する
  • 設備や場所が空くのを待つ
  • 準備不足で取りに戻る

興味深かったのは、職員が「忙しい」と感じていた時間帯ほど、中断も多かったことです。仕事量が多いために急ぎ、準備や情報共有が不足し、探す・聞く・戻るという動作が増え、それがさらに忙しさを助長する。この循環が起きていました。

ここで「もっと効率よく動いてください」と職員に求めても解決しません。必要なのは職員個人の動きではなく、仕事が自然に流れる環境をつくることです。

▶ 業務そのものを「欠かせない/方法を変えられる/重複している/昔からやっているだけ」の4つに分けて棚卸しする進め方は 「人を増やす前」に業務の棚卸しを、業務時間の内訳を分単位で調査して記録・探し物・会議をそれぞれ短縮した実例は 職員一人あたりの生産性を上げた施設がやった業務改善 にまとめています。本記事は、その手前にある「中断」という切り口を扱います。

整え方① 「よく使う物」を使う場所へ移す

備品は「同じ種類のものは同じ場所に保管する」という考えで整理されていることが多くあります。一見合理的ですが、実際の仕事とは合っていないことがあります。

そこで発想を変えます。物の種類ではなく「どこで使うか」で配置するのです。排泄支援で毎回使う物品は、必要量を支援場所の近くへ。活動で頻繁に使う道具は、活動場所から取りに行きやすい位置へ。

もちろん衛生管理・安全管理・誤使用の防止・利用者の特性への配慮は前提です。目的は物を増やすことではなく、取りに行く移動そのものを減らすことにあります。

整え方② 「聞かなければ分からない情報」を減らす

中断の理由として多いのが「◯◯さん、今日はどうするんでしたっけ?」という確認です。情報自体は存在しています。問題は、その情報を知っている職員を探さなければならないことです。

そこで、当日の支援に必要な情報について「誰に聞くか」から「どこを見れば分かるか」へ変えます。当日の欠席者、送迎の変更、受診の予定、家族からの重要な連絡、活動の変更、担当の変更——全員がその日に必要とする情報の確認場所を一本化します。

ここで注意したいのは、掲示物を増やすことが目的ではないという点です。情報源が三つも四つもあると、「どれが最新ですか」という新しい確認作業が生まれます。一つの情報には、一つの正式な確認場所——これを原則にします。

整え方③ 「朝に準備する」をやめ、前日の最後に準備する

活動準備や物品準備が朝に集中していることがあります。しかし朝は、利用者の受け入れ、電話、送迎の到着など、予定外のことが起きやすい時間帯です。

そこで、翌日の予定が確定しているものについては、前日の終業前に準備する方式へ変えます。翌日の活動物品、必要な書類、送迎関連の資料、予定されている家族連絡を確認してから業務を終える。

朝の業務を減らすというより、予測できる仕事を、突発業務の少ない時間帯へ移すという考え方です。総量は変わりませんが、中断の起きやすさが変わります。

整え方④ 申し送りを「全員が全部聞く時間」にしない

朝夕の申し送りが長くなっている場合、内容を確認すると、その利用者を担当しない職員にはその日の業務上必要のない情報まで共有されていることがあります。

そこで情報を3つに分けます。

  • 全員共有……事故、安全、感染、重大な変更など
  • 担当者共有……個別の細かな支援情報
  • 管理者共有……管理上必要な情報

申し送りを短くすること自体が目的ではありません。必要な人へ必要な情報が届くことが目的です。全員が全部を聞く形は、一見丁寧ですが、届くべき人に届いたかどうかは別問題になります。

整え方⑤ 毎週ひとつだけ「面倒な仕事」をなくす

業務改善を始めると、最初は職員から多くの意見が出ます。しかし一度に十個も改善しようとすると続きません。

そこで毎週のミーティングで、「今週、いちばん面倒だった仕事は何ですか」と一つだけ聞きます。「送迎の変更を何人にも伝えるのが面倒」「記録用紙を毎回取りに行く」「活動準備の場所が遠い」——そうした意見が出てきます。

その中から一つ選び、来週までに少しだけ楽にできないかを考える。大規模な業務改革ではなく、小さな改善を継続する仕組みに変えるということです。

生まれた時間を、別の事務で埋めない

一回の改善効果は数十秒から数分です。しかし複数の職員が毎日繰り返していた動作なので、積み重なると事業所全体では相当な時間になります。

それ以上に変わるのは職員の感覚です。以前は「もっと早く仕事をしなければ」と考えていたのが、「この仕事そのものを短くできないか」と考えるようになります。

そして最も大切なのは、浮いた時間を単純な業務量の追加に使わないことです。利用者との会話、個別の活動、ケース記録の確認へ戻す。業務改善の成果を支援の質へ還元して初めて、取り組みの意味が現場に伝わります。

業務改善は「職員を速く働かせること」ではない

「業務効率化」という言葉を使うと、「もっと仕事を詰め込まれるのではないか」「人員削減のためではないか」と職員が警戒することがあります。だからこそ、始める前に目的を明確にしておく必要があります。

目標は、職員一人がより多くの仕事をすることではなく、価値を生まない動作を減らし、その時間を利用者支援へ戻すことです。

とくに見落とされやすいのが、探す・待つ・聞く・戻るという時間です。これらは勤務表にも業務マニュアルにも書かれていませんが、現場では毎日起きています。だから業務改善では、会議室で業務一覧表を眺めるだけでなく、実際に職員がどう動いているかを見る必要があります。

そしてもう一つ。5分短縮できたときに「では別の仕事を追加しましょう」とすぐ考えないこと。利用者と話す、表情を見る、支援を振り返る、同僚と短く相談する——障害福祉では、こうした一見「余白」に見える時間にも価値があります。

実践のポイント

  • ① 一日だけ、物を取りに行くために席を離れた回数を数える……多ければ物品配置に改善の余地があります
  • ② 「あの人に聞かないと分からない」は属人化のサイン……その人が休んでも確認できる形に変えます
  • ③ 忙しい時間帯の「直前30分」を見る……忙しさの原因が、その時間帯ではなく事前準備の不足にあることがあります
  • ④ 短縮時間だけで評価しない……利用者との会話が増えたか、残業が減ったか、中断が減ったかも確認します
  • ⑤ 現場の「面倒くさい」を否定しない……そこに重複・移動・確認・待機といった業務設計上の無駄が隠れていることがあります

業務改善チェックリスト

  • □ 職員が物を探す時間が頻繁に発生していないか
  • □ よく使う物品が使用場所の近くにあるか
  • □ 当日の重要情報を確認する場所が決まっているか
  • □ 特定の職員に聞かなければ分からない情報が少ないか
  • □ 翌日に準備できる仕事を前日に済ませているか
  • □ 忙しい時間帯へ業務が集中しすぎていないか
  • □ 申し送りの対象者と情報内容を整理しているか
  • □ 同じ内容を複数回転記していないか
  • □ 毎週または毎月、小さな業務改善を実施しているか
  • □ 改善で生まれた時間を利用者支援へ還元しているか

まとめ——「もっと速く」ではなく「その仕事、本当に必要ですか」

業務改善というと、記録を速く書く、移動を急ぐ、申し送りを早く終える、といった職員個人の速度を上げる方向へ向かいがちです。しかし人が働く速度には限界があります。

一方で、物を探さなくて済む、同じことを何度も聞かなくて済む、必要な情報がすぐ分かる、準備のために何度も往復しなくて済む——こうした環境をつくることはできます。

業務改善で最初に見るべきなのは「職員が遅いかどうか」ではなく、「仕事の流れが職員を遅くしていないか」です。そして、そこで生まれた10分を、別の事務作業で埋めてしまわないこと。

利用者の隣に座る。いつもより少し長く話を聞く。普段は見逃していた表情の変化に気づく。本来、時間を使いたかったのはそうした支援のはずです。業務改善の目的は、仕事を速く終わらせることではなく、職員の時間を事務や移動から利用者へ取り戻すことにあります。

あわせてお読みください。業務の棚卸しと見直しの順番は 「人を増やす前」に業務の棚卸しを、業務時間の内訳から改善幅までを数字で追った実例は 職員一人あたりの生産性を上げた施設がやった業務改善、記録や事務の精度を上げた実例は 毎月の請求ミスを「ゼロ」にした仕組み、支援そのもののばらつきを整理する方法は 職員によって支援が違う で解説しています。業務改善・人員体制のご相談は サービス内容 もあわせて お問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

▶ 記録システムやタブレットを入れた後の業務設計は 記録システムを入れたのに残業が減らない をご覧ください。

よくあるご質問

職員が足りないと感じます。まず何を確認すればいいですか?
職員が一日のうち何に時間を使っているかを確認してください。忙しさの原因が大きな仕事だけとは限りません。物を探す、人を探す、空くのを待つ、取りに戻るといった、一回数分にも満たない中断の積み重ねが一日の中に大量にあることがあります。
業務改善の調査は、細かいタイムスタディが必要ですか?
最初から細かく測る必要はありません。3日間だけ「仕事が途中で止まった場面」を記録する方法があります。中断の理由は、物を探す/情報を探す/人へ確認する/設備や場所が空くのを待つ/準備不足で取りに戻る、の5つに分類できることが多く、これだけで改善の対象が見えてきます。
物品の配置は、どう見直せばいいですか?
「同じ種類のものは同じ場所へ」ではなく、「どこで使うか」で配置し直す方法があります。排泄支援で毎回使う物品は支援場所の近くへ、活動で頻繁に使う道具は活動場所から取りに行きやすい位置へ移します。衛生管理・安全管理・誤使用の防止・利用者の特性への配慮は前提です。目的は物を増やすことではなく、取りに行く移動を減らすことです。
情報共有のために掲示物を増やしたほうがいいですか?
増やすと逆効果になることがあります。情報源が三つも四つもあると「どれが最新ですか」という新しい確認作業が生まれます。一つの情報には一つの正式な確認場所を決める、という原則にしてください。「誰に聞くか」ではなく「どこを見れば分かるか」に変えることが目的です。
朝がいつも慌ただしくなります。
朝は利用者の受け入れ、電話、送迎の到着など予定外のことが起きやすい時間帯です。翌日の予定が確定している準備は、前日の終業前に済ませる方式に変える方法があります。業務の総量は変わりませんが、突発業務の少ない時間帯へ移すことで中断の起きやすさが変わります。
改善で生まれた時間は、どう使えばいいですか?
単純な業務量の追加に使わないことをおすすめします。利用者との会話、個別の活動、ケース記録の確認など支援へ戻してください。5分短縮できたときに「では別の仕事を」とすぐ考えると、職員には「仕事を詰め込まれた」としか残らず、次の改善への協力が得られにくくなります。
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