グループホームの世話人が集まらない|配置基準から考える人材確保の進め方
「求人を出しているのに、世話人の応募が一件も来ない」——グループホームを運営する事業者さまから、繰り返しいただくご相談です。世話人が足りなければシフトが組めず、管理者が現場に入り続けることになります。その状態が長引くと、新しい入居の受け入れも、加算の届出も、どこかで止まってしまいます。
ただ、私たちがご相談を受けて最初に確認するのは求人媒体ではありません。「そもそも何人が、どのくらいの時間必要なのか」です。ここが曖昧なまま募集をかけている事業所が、実際には少なくありません。
まず「何人足りないのか」を配置基準から確かめる
世話人の確保は、採用の話である前に人員配置の話です。必要な人数は、利用者数と類型から計算できます。感覚で「あと1人ほしい」と考えるのではなく、数字にしてから募集に入ると、募集の出し方そのものが変わります。
世話人・生活支援員・サービス管理責任者は役割が違う
- 世話人……食事の提供、掃除・洗濯、健康管理・金銭管理・服薬管理の援助、日常生活に必要な相談・援助など、暮らしの支援が中心
- 生活支援員……食事や入浴、排せつの介助など、身体的な介護が中心
- サービス管理責任者……個別支援計画の作成、支援内容の管理、職員への技術指導
そして世話人には、特定の資格は要件とされていません。求められているのは、障害のある方の生活を支えようとする姿勢と、日常生活を適切に支援できることです。ここは求人票を書くうえで効いてくる点なので、後ほど改めて触れます。
「常勤換算」という数え方を押さえる
世話人の配置は、頭数ではなく常勤換算で数えます。介護サービス包括型と外部サービス利用型は利用者数を6で除した数以上、日中サービス支援型は5で除した数以上が基本です。生活支援員は障害支援区分ごとに必要数を計算し(区分3は9、区分4は6、区分5は4、区分6は2.5で除した数)、その合計以上を配置します(外部サービス利用型は、介護を外部の居宅介護事業所に委託するため生活支援員の配置は不要です)。
常勤換算の「1人分」とは、その事業所で常勤職員が勤務すべき時間数に達している状態を指します(週の所定労働時間が32時間を下回る場合は32時間が基本)。たとえば常勤が週40時間の事業所であれば、週20時間勤務の方が2名で常勤1名分として数えられます。世話人・生活支援員は非常勤での配置も可能で、常勤専従が求められているのは管理者です(ただし日中サービス支援型は、従業者のうち1人以上を常勤とする必要があります)。
ポイント:利用者6名・介護サービス包括型なら、世話人は常勤換算1名以上。計算の分母になる利用者の数は前年度の平均値で見ます。「常勤の世話人を1人採用する」以外にも、基準の満たし方はあります。
令和6年度の報酬改定で「加配の評価のしかた」が変わった
令和6年度の報酬改定では、共同生活援助について世話人の配置基準に応じた基本報酬区分が改められ、サービスの提供時間の実態に応じて加算する報酬体系へと見直されました。あわせて、基準より手厚く世話人等を配置している事業所を評価する人員配置体制加算(Ⅰ)(Ⅱ)が新設されています。加配の量は「特定従業者数換算方法」という週40時間で換算する別の数え方で見るもので、手厚いほうの(Ⅰ)は12:1以上、(Ⅱ)は30:1以上の加配が要件とされています。
ここで実際に起きているのが、手厚く配置しているのに届け出ていないため、人件費だけが増えているという状態です。人を増やす前に、いま配置している人数が報酬にきちんと反映されているかを見ておく価値があります。単位数や要件は報酬改定で変わり、令和8年度にも期中の改定が行われていますので、自事業所が該当するかどうかは最新の告示と所管の指定権者に必ずご確認ください。
募集しても世話人の応募が来ない三つの理由
必要人数が見えたら、次は「なぜ応募が来ないのか」です。私たちが求人票を拝見して、繰り返し見つかるのは次の三つです。
①「資格がいらない仕事」であることが伝わっていない
「未経験可」と書いてあっても、求職者の多くは福祉の仕事に資格が要ると考えています。世話人が担うのは家事や見守り、日常の相談であり、身体介護は生活支援員が担う——この線引きを求人票に書くだけで、応募のハードルは下がります。実際、家事や子育ての経験を強みとして応募される方は少なくありません。
②勤務時間と夜間の扱いが書かれていない
世話人の求人で応募者がまず知りたいのは「何時から何時までか」「夜間の勤務があるのか」です。ここが曖昧だと、応募する前に候補から外れます。夜間支援従事者を別に配置しているのであれば、その旨をはっきり書いてください。短時間勤務を歓迎しているなら、「週2日・夕方の3時間から」のように具体的な形で示すほうが届きます。
③どんな暮らしを支える場所なのかが書かれていない
入居者の人数、年齢層、日中はどこで過ごしているか、1シフトに職員が何人いるか。この情報がないと、求職者は「何をする場所か」を想像できません。とくに一人きりで抱え込む職場ではないことが伝わるかどうかは、応募の判断を大きく左右します。ここは採用と定着が地続きになる部分で、グループホームの職員が辞める4つの理由で挙げた孤立・夜間の不安・役割の曖昧さと、そのまま表裏の関係にあります。
常勤1名で埋めようとせず「組み合わせ」で確保する
短時間勤務を組み合わせて時間を埋める
常勤換算で必要量を捉え直すと、「常勤1名を待ち続ける」以外の選択肢が見えてきます。朝の食事と送り出しの時間帯、夕方から夜にかけての時間帯は、担い手の生活リズムが異なります。時間帯ごとに募集を分けるほうが、一本の求人よりも応募が集まりやすい傾向があります。
世話人と生活支援員の線引きを先に決める
「気づいた人がやる」運用のままでは、求人票に業務内容を書けません。書けないまま採用すると、入職後に「聞いていた仕事と違う」となり、早期離職につながります。募集の前に、やること・やらないことを一枚に書き出しておくことをおすすめします。
出会う場所を増やす
ハローワークと求人サイトだけが入口ではありません。地域の相談支援事業所、社会福祉協議会、福祉系の学校の実習受け入れ、地域の掲示板や自治会——グループホームは生活の場である分、地域に近い場所ほど応募につながりやすいという実感があります。私たち自身、自社で障害福祉施設を20年以上運営するなかで、こうした身近な経路からの採用に何度も助けられてきました。
欠員が続くときに気をつけたいこと
採用が決まらないまま人員配置が基準を下回った状態が続くと、報酬の減算の対象になり得ます。減算の要件そのものは国の基準で定められていますが、指導の場面での運用や相談したときの対応には自治体差がありますので、欠員が見込まれた段階で、必ず所管の指定権者に相談してください。事後に説明するより、経過と募集の実績を残しながら相談したほうが、話が通りやすくなります。
なお、サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者の欠員には別の取扱いが定められています。そちらはサービス管理責任者・児発管が採用できないで整理していますので、あわせてご確認ください。
自分たちでできること、相談したほうがよいこと
ここまでの内容のうち、必要人数の計算、役割の線引き、求人票の書き直し、募集時間帯の分割は、事業所内で着手できます。一方で、人員配置体制加算の要否判断、欠員時の行政対応、シフトと人件費のバランスをどこまで取るかは、収支全体と合わせて考える必要があります。判断に迷う場面が続くようであれば、外部の目を一度入れてみてください。
なお、労働条件の設定や就業規則、雇用契約に関わる部分は社会保険労務士の領域です。私たちは制度と数字の整理、役割分担や採用の仕組みづくり、専門家との連携までをお手伝いする立場で、これらの手続きの代行は行っておりません。
Engoodは、自社で障害福祉施設を20年以上運営してきた当事者の視点から、グループホームの人員体制と収支の立て直しをご支援しています。支援内容の詳細もご覧いただけます。横浜市・神奈川県内はもちろん、オンラインで全国対応しております。初回のご相談と経営診断は無料です。
※本記事の制度に関する記載は、記事作成時点で確認できた情報にもとづく一般的な整理です。人員配置基準・加算の要件・単位数は報酬改定や自治体の運用によって変わります。実際の判断にあたっては、最新の告示および所管の指定権者にご確認ください。また、記載の取り組みは同様の成果を保証するものではありません。
▶ 日中サービス支援型では、世話人の配置が夜間及び深夜の時間帯以外に利用者の数を5で除した数以上となり、これとは別に住居ごとの夜間支援従事者も必要です。体制の組み方は 日中サービス支援型グループホームの開設・運営支援 をご覧ください。


