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お役立ちコラム

タブレットはあるのに確認電話が減らない|情報の「置き場所」を決めて「誰に聞く」を「どこを見る」に変える

情報の置き場所を一つに決めて確認電話を減らす障害福祉施設のICT改善

パソコンもタブレットもある。支援記録は電子化した。職員間の連絡ツールも入れた。それなのに、管理者への電話が減らない。パソコンの周りからは付箋がなくならない——そういう状態になっていないでしょうか。

この記事で扱うのは、記録を入力する手間ではなく、職員どうしの情報伝達と情報の探し方です。要点は、ICTのツールを増やすことではありません。「この情報は、どこを見れば分かるのか」を一つに決めることです。

なお、紙とデジタルの二重記録をなくす「記録業務そのもののICT化」は 記録システムを入れたのに残業が減らない|ICTの成果は「何をやめられたか」で測る で扱っています。本記事はその次の段階として、重複しない範囲で情報伝達の側を整理します。

※ 本記事は、障害福祉の現場で起こり得る複数の課題をもとに再構成したモデル事例です。特定の施設・法人の実績を示すものではなく、記載の内容は改善の考え方を分かりやすくするための想定です。取り組みの効果は事業所の状況によって異なり、同様の成果を保証するものではありません。

「システムを見れば分かるはず」なのに、なぜ管理者へ電話するのか

想定するのは、複数の事業所を運営する法人です。数年前からICT化を進め、各事業所にパソコンとタブレットがあり、支援記録も電子化され、連絡用のシステムもあります。

ところが本部や管理者には、毎日のように電話がかかってきます。

  • 「○○さんの明日の利用時間は、変更になっていますか」
  • 「今日、Aさんは受診でしたか」
  • 「この書類はどこにありますか」
  • 「来週の研修は何時からですか」
  • 「送迎車の変更は、誰に伝えればいいですか」

管理者はそのたびに仕事を止めて確認します。さらに施設内を見ると、パソコンの周囲には付箋が貼られていました。「○○さん家族へ電話」「金曜日、送迎変更」「薬変更あり」。

ICT化しているはずなのに、重要な情報の一部が、人の記憶と電話と付箋で管理されていたのです。

そこで新しいシステムを入れるのではなく、「情報がどこにあるのか分からない状態」をなくすことから始めました。

デジタル化はできていた。ただ「置き場所」が多すぎた

職員が利用者の情報をどこで確認しているかを調べると、情報源がいくつも出てきました。支援記録システム、共有フォルダ、メール、職員間の連絡ツール、ホワイトボード、紙の連絡ノート、個人のメモ、口頭の申し送り。そして緊急性が高いと感じたときは管理者へ電話します。

情報が不足していたわけではありません。むしろ逆で、情報が多すぎて、どこを見れば最新なのか分からなかったのです。

たとえば家族から「金曜日は通院のため利用時間を変更したい」と連絡が入ります。電話を受けた職員は連絡ノートに書き、担当職員は支援記録に入力し、送迎担当はホワイトボードに書き、管理者は念のためメールでも共有します。

これだけ残しているのに、金曜日になると「今日の送迎は何時でしたか」という確認が発生します。問題は情報不足ではなく、同じ情報が複数の場所にあることでした。

「入力する仕組み」はあっても「確認する仕組み」がなかった

ICTを導入したとき、「どう入力するか」は研修していました。しかし「どの情報を、どこで確認するか」というルールがありませんでした

そのため職員は、自分が安心できる方法で情報を残します。ある職員はシステム、ある職員は付箋、ある職員はホワイトボード、ある職員は口頭。保存場所が増えるほど、「念のため電話で確認しよう」という行動も増えます。

さらに困るのが、最新かどうかの判別です。システムには昨日の内容、ホワイトボードには今朝の変更、連絡ノートには家族からの追加情報。どれを信じればよいのか分かりません。

そこで方針を、「情報を増やす」ではなく「情報の住所を決める」に置きました。

整え方① 情報を5種類に分ける

まず、事業所で扱っている情報を分類します。

  • ① 利用者の支援記録……食事、排泄、活動、健康状態、支援の内容
  • ② 当日の変更情報……欠席、送迎の変更、受診、家族からの連絡
  • ③ 職員に関する情報……勤務の変更、会議、研修
  • ④ 施設運営の情報……行事、点検、設備、年間予定
  • ⑤ 緊急情報……事故、急変、災害、安全上ただちに共有すべきこと

分類したうえで、種類ごとに「この情報はここを見る」という正式な確認場所を決めます。分け方は事業所の規模や体制によって変わりますので、この5つは出発点として使ってください。

整え方② 「最終確認はここ」を一つ決める

とくに重要なのが②の当日の変更情報です。以前はホワイトボード、連絡ノート、システムと複数の場所に書かれていました。

そこで正式な情報源を一つ決めます。ほかの場所に補助的に表示することがあっても、「最終確認はここ」を統一します。送迎の変更を聞かれたら「管理者に聞く」のではなく「まず正式な情報源を見る」という行動に変えます。

管理者自身も、すぐ答えるのではなく「どこを確認しましたか」と聞き返すようにしました。少し厳しく感じるかもしれませんが、管理者が毎回答えてしまうと「分からなければ管理者へ聞けばよい」という情報の流れが固定してしまうからです。

ただし、これには例外を先に決めておいてください。利用者の急変、事故、けが、安全に関わることについては、聞き返す運用の対象にしません。迷ったときは、確認より先に人へ伝えるほうを選ぶ——この一点を職員へ明示しておかないと、報告のためらいを生みかねません。仕組みで減らしたいのは「調べれば分かることの確認電話」であって、安全に関する報告ではありません。

整え方③ 一時的な情報に「期限」を付ける

デジタルの情報には、紙とは違う問題があります。古い情報が残り続けることです。

たとえば「○○さん、しばらく水分摂取に注意」という記載が残っていたとします。「しばらく」とはいつまででしょうか。1週間後も必要なのか、1か月後も必要なのか、すでに解除されたのか、読んだ職員には判断できません。

そこで一時的な情報には、可能な範囲で開始日と、確認日または終了予定を入れます。「9月3日から9月10日まで観察」「次回受診後に再確認」といった具合です。これで、古い注意事項がいつまでも最新情報として扱われることを減らせます。

整え方④ 「届いたか」を確認する情報を絞る

ICTを入れると「全職員がすべての情報を確認してください」となりがちです。しかし情報量が多すぎると、重要なものまで読まれなくなります。

そこで情報を、確認したことまで残す情報と、必要な職員が参照する情報に分けます。事故、安全に関すること、重大な支援内容の変更は、関係する職員へもれなく届く形にします。一方、一般的なお知らせにまで全員の確認操作を求めません。

情報共有で大切なのは、送った量ではありません。重要な情報が、必要な人へ届いたかどうかです。

整え方⑤ 電話をなくさず、電話すべき基準を決める

ICT化すると「電話は非効率だからやめよう」という話になることがあります。しかし障害福祉では、電話でなければならない場面があります。利用者の急変、事故、重大な送迎トラブル、緊急の家族対応、災害。

こうした情報を「システムに入力したので見てください」で済ませるべきではありません。

そこで、伝達手段を情報の重さで分けます。

  • 電話など直接伝えるもの……緊急のこと。相手が受け取ったことをその場で確認する
  • 正式な情報源に登録するもの……日常的な変更。当日の予定や送迎の変更
  • 記録に残すもの……支援の経過。後から振り返るための情報

目指したのは電話そのものを減らすことではなく、調べれば分かることの確認電話だけを減らすことです。

整え方⑥ 「どこを見るか」と同時に「誰が見られるか」を決める

置き場所を一つにまとめていくと、結果としてすべての職員が支援記録を見られる状態になりがちです。探しやすさだけを進めると、ここが抜けます。

障害福祉の支援記録には、健康状態、服薬、家族関係、これまでの経緯など、取り扱いに配慮が必要な情報が含まれます。「どこを見れば分かるか」を決めるときは、あわせて次の3点も決めておいてください。

  • その情報を業務上見る必要がある職員の範囲
  • 端末の持ち出し、画面の共有、印刷したものの取り扱い
  • 実習生・ボランティア・委託先など、職員以外が立ち入る場面での扱い

個人情報の取り扱いは運営基準でも求められる事項です。具体的な取り扱いの範囲は、指定を受けている自治体の窓口や、法人の規程とあわせて確認してください。

変わったこと——「誰に聞けば分かる?」から「どこを見れば分かる?」へ

情報の分類と正式な確認場所を決めたことで、管理者への日常的な問い合わせが減った、という想定です。

職員の言葉も変わりました。以前は「これ、○○さんに聞いてみます」でしたが、「まず共有情報を確認します」になります。

管理者にとっては、時間そのものより中断が減ることが大きい変化です。電話が1回3分でも、1日10回なら30分。しかも実際には、電話の時間より作業を中断されることによる損失のほうが大きくなります。この「中断」を業務改善の指標として測る方法は 「探す・待つ・聞く・戻る」を減らす|業務時間ではなく「中断」を測る業務改善 で詳しく扱っています。

あわせて、担当者が休みの日でも「○○さんしか知らない」という場面が減ります。情報が「人」ではなく「仕組み」に保存されるようになるからです。主担当・副担当の置き方など、属人化そのものを解く手順は 「〇〇さんが休むと分からない」をなくす にまとめています。

ICT化で減らすべきなのは、入力時間だけではない

ICT導入の効果測定では「記録時間が何分短くなったか」がよく使われます。もちろん重要な指標です。ただ、ICTにはもう一つ大きな効果があります。人に聞かなくても仕事が進む状態をつくることです。

「今日の予定は誰に聞けばいいですか」「この件は誰が知っていますか」「○○さんが休みなので分かりません」。こうした場面が多い事業所では、職員どうしの確認だけでかなりの時間を使っています。しかも管理者やベテラン職員ほど問い合わせが集中します。ICTを入れても、この構造が残っていれば組織は楽になりません。

目指したいのは、人を探す組織から、情報を探せる組織への転換です。管理者に判断そのものが集中している場合は、情報の置き場所だけでは解けません。その場合は 主任はいるのに管理者の仕事が減らない管理者に判断が集中する施設 もあわせてご覧ください。

ただし、すべてのやりとりをICTへ置き換える必要はありません。利用者の支援について職員どうしで考える、ケースについて相談する、新人へ助言する。こうした人と人との会話はむしろ増やしたいものです。減らしたいのは、情報の場所が分からないから発生している会話のほうです。

明日から試せること

  • 1週間だけ「確認電話」の中身を記録する。誰から誰へではなく、「何を確認するための電話だったか」を書き留めます。同じ質問が繰り返されていれば、その情報の置き場所に問題があります。
  • 付箋を捨てる前に読む。付箋は、職員が必要としている情報のヒントです。「なぜこれをシステムではなく付箋に書くのか」を考えると、ICTの使いにくさが見えてきます。
  • 「最新情報はどれですか」と職員に聞いてみる。同じ情報が複数箇所にあるとき、答えが職員によって違えば、情報のルールを見直す時期です。
  • 効果測定に「問い合わせの回数」を加える。記録時間だけでなく、管理者への確認件数、電話の件数、情報を探す時間もICT改善の指標になります。
  • 増やす前に一つ減らす。新しい共有表を作りたくなったら、「これによって何を廃止できるか」を先に決めます。ICT化でいちばん危ないのは、新しい共有手段だけが増え続けることです。業務そのものの棚卸しは 残業が減らない施設 が参考になります。

ICT・情報共有チェックリスト

  • 利用者情報の正式な保存場所が決まっているか
  • 当日の変更情報を、どこで確認するかが統一されているか
  • 同じ情報を複数のシステムへ入力していないか
  • 一時的な情報に、確認日や終了日を設定しているか
  • 緊急の情報と通常の情報で、伝え方を分けているか
  • 全職員がすべての情報を読む運用になっていないか
  • 管理者への確認電話の中身を把握しているか
  • 担当者が不在でも、必要な情報にたどり着けるか
  • 付箋や個人のメモだけに、重要な情報が残っていないか
  • 安全に関することは、確認より先に人へ伝えてよいと職員へ伝えているか
  • 情報を見られる職員の範囲と、端末・印刷物の取り扱いを決めているか
  • 新しいツールを追加する前に、既存の情報経路を整理しているか

まとめ——ICT化のゴールは「画面を増やすこと」ではなく「迷わなくすること」

障害福祉施設のICT化では、パソコンを増やす、タブレットを入れる、クラウドを契約する、チャットを導入する——といったことに目が向きがちです。しかしツールが増えるほど、「どこを見ればいいのか分からない」という別の問題が生まれます。

大事なのはシステムの数ではありません。利用者の予定を知りたければ、ここを見る。送迎の変更なら、ここを見る。支援の経過なら、ここを見る。緊急時は、この方法で連絡する。職員全員がそれを分かっていることです。

つまりICT化の成熟度は、「どれだけ多くのシステムを使っているか」ではなく、「必要な情報へ、どれだけ迷わずたどり着けるか」で考えるほうが実態に合っています。

情報を探す電話と、人を探す時間が減れば、その時間を利用者の支援へ戻すことができます。ICT化は、人と人とのやりとりをなくすことではありません。「この予定、知っていますか」「その書類はどこですか」という確認の会話を減らして、「この方に、次はどんな支援をしたらよいだろう」という会話に時間を使えるようにすることです。

次の段階へ進めるなら、新しいシステムを探す前に、一度職員へこう聞いてみてください。「仕事中に分からないことがあったとき、最初に誰へ聞いていますか。それは本当に、人に聞かなければ分からない情報でしょうか。」ここから、情報共有を軸にした次のICT改善が始まります。

あわせてお読みください。記録の二重入力をなくす前編は 記録システムを入れたのに残業が減らない、中断を指標にする業務改善は 「探す・待つ・聞く・戻る」を減らす、属人化を解く手順は 「〇〇さんが休むと分からない」をなくす、家族からの問い合わせが減らない場合は 家族からの電話が減らない、生産性の面から業務全体を見直す実例は 生産性向上の取り組み で解説しています。業務の仕組みづくりのご相談は サービス内容 をご覧のうえ お問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

よくあるご質問

記録を電子化したのに、管理者への確認電話が減りません。
情報が足りないのではなく、同じ情報が複数の場所にあることが原因かもしれません。支援記録システム、共有フォルダ、メール、連絡ツール、ホワイトボード、紙の連絡ノート、個人メモ、口頭の申し送り——置き場所が増えるほど「どれが最新か分からない」状態になり、「念のため電話で確認しよう」という行動が増えます。情報を増やすのではなく、種類ごとに「最終確認はここ」を一つ決めることから始めてみてください。
情報の置き場所は、どう整理すればいいですか?
まず扱っている情報を、①利用者の支援記録②当日の変更情報(欠席・送迎変更・受診・家族からの連絡)③職員に関する情報(勤務変更・会議・研修)④施設運営の情報(行事・点検・設備)⑤緊急情報(事故・急変・災害)の5種類に分ける方法があります。そのうえで種類ごとに正式な確認場所を決めます。とくに②の当日の変更情報は複数箇所に書かれやすいので、優先して一つに寄せてください。
管理者が「どこを確認しましたか」と聞き返す運用にして問題ありませんか?
調べれば分かることについては有効です。管理者が毎回答えてしまうと「分からなければ管理者に聞けばよい」という流れが固定してしまうためです。ただし例外を先に決めておいてください。利用者の急変、事故、けが、安全に関わることは聞き返しの対象にせず、迷ったときは確認より先に人へ伝えるほうを選ぶ、と職員へ明示します。減らしたいのは確認電話であって、安全に関する報告ではありません。
「しばらく注意」といった古い情報が残り続けてしまいます。
一時的な情報には、可能な範囲で開始日と、確認日または終了予定を入れてください。「9月3日から9月10日まで観察」「次回受診後に再確認」といった書き方です。デジタルの情報は紙と違って古いものが残り続けるため、期限がないと、解除されたかどうか読んだ職員に判断できません。
全職員に既読確認を求めるべきでしょうか?
情報量が多すぎると、重要なものまで読まれなくなります。事故、安全に関すること、重大な支援内容の変更は関係する職員へもれなく届く形にし、一般的なお知らせにまで全員の確認操作を求めない、という分け方があります。情報共有で大切なのは送った量ではなく、重要な情報が必要な人へ届いたかどうかです。
ICT化したら、電話でのやりとりはやめるべきですか?
やめる必要はありません。障害福祉では、利用者の急変、事故、重大な送迎トラブル、緊急の家族対応、災害など、電話でなければならない場面があります。これらを「システムに入力したので見てください」で済ませるべきではありません。緊急のことは直接伝える、日常的な変更は正式な情報源に登録する、支援の経過は記録に残す——と手段を分け、調べれば分かることの確認電話だけを減らすのが現実的です。
情報を一か所にまとめると、誰でも見られる状態になりませんか?
探しやすさだけを進めると、そこが抜けやすくなります。支援記録には健康状態・服薬・家族関係など取り扱いに配慮が必要な情報が含まれますので、「どこを見るか」と同時に、業務上見る必要がある職員の範囲、端末の持ち出しや印刷物の扱い、実習生や委託先など職員以外が立ち入る場面での扱いも決めてください。個人情報の取り扱いは運営基準でも求められる事項です。具体的な範囲は、指定を受けている自治体の窓口や法人の規程とあわせて確認してください。
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