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サービス管理責任者・児発管が採用できない|欠員のリスクと育成の逆算

サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者が採用できないときの欠員リスクと育成の逆算

「サービス管理責任者(サビ管)の求人を出しているのに、応募がまったく来ない」「児童発達支援管理責任者(児発管)が退職を申し出たが、代わりのあてがない」——障害福祉サービスの経営者・管理者の方から、いま最も多くいただくご相談のひとつです。私たちは自社で障害福祉施設を20年以上運営してきましたが、この職種だけは「求人の出し方を工夫すれば何とかなる」という性質のものではありません。制度上の要件と研修の仕組みが、そもそも候補者の数を絞っているからです。この記事では、なぜ採用が難しいのかという構造から、欠員が続いたときに経営へ跳ね返るもの、そして時間を稼ぐ方法と中で育てる方法までを、順を追って整理します。

サビ管・児発管が採用できないのは、求人の出し方だけの問題ではない

まず押さえておきたいのは、この職種が「市場に人が少ない」のではなく「制度上、人数が増えにくい」構造にあるという点です。ここを理解しないまま求人媒体だけを増やしても、費用ばかりが積み上がってしまいます。

資格要件そのものが候補者を絞っている

サビ管・児発管になるには、一定の実務経験と、所定の研修修了の両方が必要です。実務経験の年数は業務の種類や保有資格によって幅があり、たとえば厚生労働省の審議会資料をもとに東京都が公表している資料では、相談支援業務は5年以上(有資格者の場合は3年以上)、直接支援業務は8年以上とされています。つまり、福祉の現場で数年働いた人がすぐに就ける職種ではありません。応募が来ないのは、貴事業所の求人が悪いからとは限らないのです。

研修は段階制で、思い立ってすぐ取れる資格ではない

研修は平成31年度から新体系となり、基礎研修 → 一定期間の実務(OJT) → 実践研修 → その後5年ごとの更新研修という段階を踏む形になりました。ここでいう基礎研修は、サービス管理責任者等基礎研修と相談支援従事者初任者研修(講義部分)の両方を修了している状態を指します。実践研修を受けるには、基礎研修の修了後に2年以上の実務経験が必要とされています(令和5年6月の改正により、基礎研修の受講開始時点ですでに実務経験要件を満たしている方が個別支援計画の作成に係る一連の業務に従事し、その旨を指定権者に届け出ている場合に限り、例外的に6か月以上とする取扱いが認められています。届出の期限も定められているため、使う予定があるなら早めに窓口へご確認ください)。

研修は都道府県、または都道府県が指定・委託した研修事業者が実施し、日程や申込時期が限られます。「欠員が出てから育て始める」では、どうしても間に合わない——この時間差こそが、サビ管・児発管の採用が他職種と決定的に違うところです。サビ管が突然退職した事業所がどう立て直したかは、サービス管理責任者が突然辞めた施設の立て直しの改善事例で3か月の経過をまとめています。

欠員が続くと、経営にどう跳ね返るか

サビ管・児発管の不在は、単に「業務が回らない」だけでは終わりません。報酬と指定の両面に影響します。

欠如した月の翌々月から減算の対象になる

サビ管等の人員欠如については、原則として欠如が生じた月の翌々月から、解消された月まで、利用者全員について所定単位数が減額される取扱いとなっています(翌月の末日までに人員基準を満たすに至った場合を除きます)。しかも、状態が長く続くほど減額の幅は大きくなる仕組みです。具体的な率や適用の判断は改定・通知で変わり得るため、最新の告示および所管の指定権者にご確認ください。

人員基準を前提とした加算が算定できなくなる

見落とされがちなのが、加算への影響です。人員基準を満たしていることが前提となっている加算(児童指導員等加配加算や専門的支援体制加算など)は、人員欠如の状態では算定できません。基本報酬の減算と加算の不算定が同時に起こるため、月次の収支への影響は想像より大きくなります。加算の考え方は障害福祉 経営・運営の用語集でも整理していますので、あわせてご覧ください。

指定の更新・新規指定にも影響する

仙台市が令和6年度の集団指導で示した資料では、サビ管等が欠如している状態では指定の更新や新規指定(合併・再編に伴う法人変更等を含む)ができない旨が明記されています。同資料では、運営指導によって人員欠如が発覚し、さかのぼって減算が適用され、多額の給付費返還を求められた事例があること、欠如の期間や悪質性によっては指定取消等の処分の対象となり得ることにも触れられています。

ポイント:欠員が見込まれた時点で、まず所管の指定権者へ速やかに連絡・届出を行うこと。「代わりが見つかってから相談しよう」と待つ間に、減算と基準違反の期間だけが積み上がります。

令和8年5月に新設された「減算の猶予」は、サビ管・児発管には及ばない

ここは特に誤解が生じやすい部分なので、丁寧に整理します。令和8年5月28日付けで留意事項通知が改正され、突発的で想定が困難な事象によるやむを得ない人員欠如について、減算の適用を猶予する取扱いが新設されました

猶予の中身

新旧対照表によれば、人員基準上必要とされる員数から1割の範囲内で減少した場合であって、所定の要件をすべて満たすときは、1年に1回に限り、人員欠如が生じた日の属する月の翌々月までの間、減算の適用が猶予されます。要件には、公共職業安定所(ハローワーク)や無料職業紹介事業を活用して職員の確保に取り組んでいること、民間の職業紹介事業者を使う場合は適正認定事業者であること、一部の職員に過度な業務負担が偏らないよう労働時間管理と体制整備に努めることなどが挙げられています。手続としては、取組内容とやむを得ない事情を所定の様式に記載し、有効な求人票の写しを添えて、欠如が生じた月の翌月までに都道府県知事へ報告することとされています。

対象はあくまで生活支援員・世話人等の欠如

注意したいのは、この猶予が「生活支援員、世話人等の人員欠如」に関する規定にかかわらず適用されるものとして置かれている点です。児童分野の通知でも、猶予の前提となる規定は「児童発達支援管理責任者を除く」従業者について定められています。つまり、サビ管・児発管そのものの欠如は、この猶予の対象として整理されていないと読むのが自然です。制度の解釈にあたる部分ですので、自事業所のケースに当てはまるかどうかは、必ず所管の指定権者にご確認ください。

裏を返せば、サビ管・児発管については「突発的な欠員が起きても救済されにくい職種」ということになります。だからこそ、次に述べる二つの備え——時間を稼ぐ手段と、中で育てる計画——が効いてきます。

「やむを得ない事由」のみなし配置で時間を稼ぐ

急な退職や急病など、事業者の責めに帰さない事由でサビ管等が欠如し、直ちに配置することが困難な場合には、一定の要件を満たす方をサビ管等とみなして配置できる取扱いがあります。

要件と期間の目安

  • 実務経験要件(相談支援業務または直接支援業務の3〜8年)を満たしていること
  • 欠如した時点で、すでに基礎研修を修了していること
  • 欠如する以前から、サビ管等以外の職員として当該事業所に配置されていること

期間の考え方は自治体の資料によって示し方が異なります。仙台市の資料では、実務経験要件のみを満たす場合は最長1年間、上記をすべて満たす場合は実践研修の修了まで(最長2年間)とされています。大阪府の資料では、変更日から起算して最長2年間までの延長が可能とされています。いずれにせよこれは「みなし」の措置であり、適用にあたって事前協議を求める自治体もあります。協議の結果、配置が認められない場合もあると明記されています。

自治体で運用に幅がある前提で動く

期間の取扱いや協議の要否は自治体によって差があります。ウェブ上の解説記事の数字をそのまま自事業所に当てはめると、想定と違う指導を受けることがあります。動き出す前に、指定を受けている自治体の窓口へ直接確認するのが確実です。

中で育てる計画と、外から採るときの打ち手

まず、候補者を実務経験で棚卸しする

意外に多いのが、「基礎研修を受けられる年数に達している職員が、すでに事業所内にいる」というケースです。新体系では、実務要件に2年満たない段階から基礎研修を受講できる仕組みになっており、相談支援業務3年以上(有資格者は1年以上)または直接支援業務6年以上が受講対象の目安とされています。まずは全職員の入職年月と業務内容を一覧にして、誰が何年後に候補になるかを可視化するところから始めてください。表にするだけでも、育成計画はかなり具体的になります。

基礎研修修了者は「2人目のサビ管等」として配置できる

厚生労働省の審議会資料をもとに東京都が公表している研修見直しの資料では、すでにサビ管等が1名配置されている事業所であれば、基礎研修修了者を2人目のサビ管等として配置でき、個別支援計画の原案作成が可能であることが明確化されています。これは育成の設計上とても重要です。現任のサビ管が在籍しているうちに次の担い手を実務に参加させ、OJTの2年を「欠員が出てから」ではなく「平時のうちに」消化しておく。この順番を守れるかどうかで、数年後の選択肢がまったく変わります。

外から採る場合は「一人で背負わせない体制」を示す

私たちがご相談を受ける中でも、サビ管・児発管が職場を離れる理由として業務の属人化と孤立はよく挙がります。個別支援計画、モニタリング、支援会議、関係機関との連携、職員への助言——これらがすべて一人に集中している事業所は、採用市場でも選ばれにくくなります。求人票に給与条件だけを並べるのではなく、記録様式やアセスメントの型が整っていること、計画作成の会議に複数名が関わっていること、事務作業を分担する仕組みがあることを具体的に書く。属人化を外す取り組みは、定着にも採用にも同時に効きます。求人条件や就業規則の設計は社会保険労務士、指定申請などの官公署に提出する書類の作成は行政書士の領域です。私たちは、これらの手続そのものを代行することはせず、情報の整理と仕組みづくり、専門家との連携の部分をお手伝いしています。

自分たちでできる範囲と、相談すべきライン

ここまでを整理すると、事業所内で今日から着手できるのは次のあたりです。

  • 全職員の実務経験を棚卸しし、基礎研修の受講候補者を特定する
  • 都道府県の研修日程を確認し、受講から実践研修修了までの時期を逆算する
  • サビ管業務のうち、他の職員へ移せる作業を切り出して属人化を減らす
  • 採用の取組(求人の出し方・媒体・記録)を、後から説明できる形で残す

一方で、すでに欠員が発生している、みなし配置を使えるか判断がつかない、運営指導で人員に関する指摘を受けた——といった段階は、自力で抱え込まないほうがよい場面です。減算の適用や返還の可能性が絡むと、判断を1か月先送りするだけで金額が変わってしまいます。

本記事は令和8年8月時点で公表されている資料に基づく一般的な整理です。減算の適用、みなし配置の可否、報告様式や期限の取扱いは改定・通知で変わることがあり、自治体によって運用にも幅があります。実際の判断にあたっては、最新の告示・通知および所管の指定権者(都道府県・市町村)に必ずご確認ください。また、本記事の内容は成果を保証するものではありません。

Engoodは、自社で障害福祉施設を20年以上運営してきた立場から、人員体制の棚卸しと育成計画づくり、運営指導への備えまでを一緒に組み立てています。初回のご相談・経営診断は無料です。横浜・神奈川を中心に、オンラインで全国からのご相談も承っています。人員配置と収支の両面から現状を見直したい方は、サービス内容のページもあわせてご覧ください。

よくあるご質問

サビ管が急に退職した場合、いつから減算の対象になりますか?
サービス管理責任者等の人員欠如は、原則として欠如が生じた月の翌々月から解消された月まで、利用者全員について所定単位数が減額される取扱いとされています(翌月の末日までに人員基準を満たすに至った場合を除きます)。適用の判断や減額の幅は改定・通知で変わることがありますので、最新の告示および所管の指定権者にご確認ください。
令和8年5月に新設された人員欠如の減算猶予は、サビ管・児発管にも使えますか?
この猶予は生活支援員・世話人等の人員欠如に関する規定にかかわらず適用されるものとして置かれており、児童分野の通知でも前提となる規定は児童発達支援管理責任者を除く従業者について定められています。サビ管・児発管そのものの欠如は対象として整理されていないと読むのが自然ですが、解釈に関わる部分ですので所管の指定権者にご確認ください。
基礎研修を修了した職員をサービス管理責任者として配置できますか?
すでにサービス管理責任者等が1名配置されている事業所であれば、基礎研修修了者を2人目のサービス管理責任者等として配置でき、個別支援計画の原案の作成が可能であることが明確化されています。1人目として配置するには実践研修の修了が必要ですが、やむを得ない事由によるみなし配置など例外的な取扱いもあります。実際の取扱いは所管の指定権者にご確認ください。
外部からの採用と内部での育成は、どちらを優先すべきですか?
実務経験と研修修了までに必要な年数を踏まえると、外部採用だけに頼るのは難しい場面が多く、平時のうちに候補者を洗い出して研修受講の計画を立てておくことをおすすめします。ただし事業所ごとに状況は異なり、同様の結果を保証するものではありません。
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