放課後等デイサービスの経営を立て直す|時間区分と加算の要点を整理
放課後等デイサービスの収支が思うように改善しない、というご相談が増えています。原因をたどると、利用者が集まらないという集客の問題だけでなく、令和6年度の報酬改定で基本報酬の考え方が変わったことに運営が追いついていないケースが少なくありません。この記事では、放課後等デイサービスの経営を立て直すうえで押さえておきたい「支援時間による時間区分」と加算の要点を、令和8年度の臨時応急的な見直しまで含めて整理し、施設側でできることと専門家に相談したいラインを分けてご説明します。
放課後等デイサービスの収支は「利用者数×単価×稼働」で決まる
まず現状を分解して捉えることが出発点になります。放課後等デイサービスの収入は、大きく次の3つの掛け算で決まります。
- 契約している利用者の数(母数)
- 1回あたりの単価(基本報酬+算定できている加算)
- 実際にどれだけ利用されたか(欠席の多寡を含む稼働)
赤字の相談をいただくと集客の話から始まりがちですが、実際に数字を見ていくと、単価の取りこぼしや欠席の多さが効いていることがよくあります。令和6年度の報酬改定以降は単価の決まり方そのものが変わっているため、ここを理解しないまま利用者を増やしても、思ったほど収支が改善しないことがあります。
まず確認したい3つの数字
立て直しの初動では、次の3つを直近3か月分そろえるところから始めます。
- 月ごとの延べ利用回数と、契約者数に対する平均利用回数
- 1回あたりの平均単価(総請求額を延べ利用回数で割った額)
- 欠席の件数と理由(急な体調不良か、曜日が合っていないのか)
この3つを並べると、収支の弱点が「母数」なのか「単価」なのか「稼働」なのかが見えてきます。感覚ではなく数字で当たりをつけることが、遠回りに見えて最短の道です。
令和6年度の改定で「支援時間による区分」が入りました
厚生労働省の「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」では、放課後等デイサービスの基本報酬について、個別支援計画に定めた個々の利用者の支援時間に応じた評価が可能となるよう、支援時間による区分を設けるとされています。
3つの時間区分と、平日・学校休業日の扱い
同資料によると、支援時間による区分は「30分以上1時間30分以下」「1時間30分超3時間以下」「3時間超5時間以下」の3区分で、このうち「3時間超5時間以下」の区分は学校休業日のみ算定可能とされています。従来のように平日・学校休業日という区分だけで単価が決まるのではなく、実際にどれだけの時間支援したかが基本報酬に反映される形になりました。
ポイント:時間区分は個別支援計画に定めた支援時間で判定することが基本とされ、事業所の都合で支援時間が短くなった場合は実支援時間で判定するとされています。計画と実態がずれたままだと、請求にも影響します。
「なんとなく同じ時間」で組んでいませんか
改定前の感覚のまま全員を同じ時間だけ受け入れていると、支援時間の設計が収入に直結していることを見落としがちです。一人ひとりに必要な支援時間を個別支援計画で明確にし、それに合った送迎・プログラムになっているかを点検してみてください。なお、平日に3時間、学校休業日に5時間を超える長時間の支援については、延長支援加算の見直しにより、預かりニーズに対応した延長支援として同加算で評価する形に整理されています。
取りこぼしやすい加算を洗い出す
単価を左右するもう一つの要素が加算です。令和6年度の改定では、放課後等デイサービスに関わる加算も広く見直されました。同資料で示されている主な変更点には、次のようなものがあります。
| 項目 | 改定の内容(概要資料より) |
|---|---|
| 専門的支援加算・特別支援加算 | 専門的支援体制加算と専門的支援実施加算に再編。放課後等デイサービスの専門的支援実施加算は利用日数等に応じて月2回から最大月6回を限度 |
| 通所自立支援加算(新設) | 学校・居宅等と事業所間の移動について、自立して通所できるよう職員が付き添って計画的に支援した場合 |
| 自立サポート加算(新設) | 高校2年生・3年生について、学校卒業後の生活に向けて学校や地域の企業等と連携し、相談援助や体験等の支援を計画的に行った場合 |
| 入浴支援加算(新設) | 医療的ケア児または重症心身障害児に、発達支援とあわせて入浴支援を行った場合 |
| 強度行動障害児支援加算 | (Ⅰ)(Ⅱ)に区分され、研修修了者の配置や支援計画の作成を求めたうえで評価を充実 |
ここに挙げた加算の名称や要件は改定時点の概要資料に基づくもので、単位数や実際の算定可否、最新の取り扱いは変わることがあります。算定を検討する際は、必ず最新の告示および所管の指定権者(都道府県・市町村)にご確認ください。
加算は「取れるかどうか」より「続けられるか」で考える
加算は、要件を満たす体制と記録がそろって初めて成り立ちます。研修修了者の配置、計画の作成、回数上限など条件はさまざまで、届出はしたものの記録が追いつかず運営指導で指摘を受けては本末転倒です。加算の取りこぼしを防ぐ考え方については、障害福祉サービスの加算の取りこぼしを防ぐにはでも整理していますので、あわせてご覧ください。
令和8年度の臨時応急的な見直しも押さえておく
令和6年度改定のあと、令和8年度にも臨時応急的な見直しが行われています。放課後等デイサービスに関わる主な点は次の2つです。
- 応急的な報酬単価の特例(令和8年6月施行)…令和8年6月1日以降に新規指定された事業所に限り、令和9年度報酬改定までの間、所定単位数の1000分の982に相当する単位数が適用されるとされています。既存事業所は従前どおりで、主として重症心身障害児を通わせる事業所の基本報酬や、医療的ケア区分・強度行動障害児支援加算などを算定する利用者に係る基本報酬、離島・中山間地域の事業所などには配慮措置が設けられています。
- 処遇改善加算の拡充(令和8年6月施行)…加算の区分が見直され、Ⅰロ・Ⅱロが新設されています。区分アップを検討する際の要件整備については、処遇改善加算の一本化と計画書・実績報告の流れでも整理しています。
これから開設を検討している場合、令和6年度時点の単価表のままで収支を組むと見立てがずれることがあります。適用の可否は所管の指定権者にご確認ください。
支援プログラムの未公表は減算につながります
支援プログラムの作成・公表が未実施の場合、所定単位数の85%を算定する減算が設けられており、令和7年4月1日から適用されています(放課後等デイサービスは児童発達支援と同様の取り扱いとされています)。単価が1割以上下がることになりますので、自事業所の公表状況を一度確認してみてください。
稼働率を上げる打ち手は「新規」より「欠席」から
利用者を増やす取り組みは時間がかかります。一方で、すでに契約している利用者の欠席を減らす取り組みは、比較的早く数字に表れます。
欠席の理由を分けて記録する
欠席を「体調不良」の一言でまとめず、曜日・時間帯・季節・送迎の都合など、理由を分けて記録してみてください。特定の曜日に偏っているなら、その日のプログラムや職員体制に理由があるかもしれません。
相談支援専門員との関係を切らさない
新規の利用につながる導線として、相談支援事業所との関係は欠かせません。空き状況をこまめに共有しているか、事業所の特徴(どんな支援が得意で、どんな子に向いているか)が伝わっているかを見直してみてください。作成・公表した支援プログラムを、外部への説明資料として活用する方法もあります。
自分たちでできる範囲と、相談したいライン
数字の把握、欠席理由の記録、支援時間と個別支援計画の点検は、施設の中で始められることです。一方で、次のような場面では外部の目を入れたほうが早く進みます。
- 加算の要件を満たしているか判断がつかない、届出の可否を迷っている
- 赤字が続いており、資金繰りを含めて立て直しの順序を決めたい
- 報酬改定の内容を自事業所にどう当てはめるか整理できていない
なお、労務・就業規則や助成金申請は社会保険労務士、税務や記帳は税理士、官公署へ提出する書類の作成は行政書士の領域です。私たちEngoodはこれらを代行するのではなく、情報の整理と仕組みづくりを担い、必要に応じて各分野の専門家と連携しながら進めます。
Engoodは、自社で障害福祉施設を20年以上運営してきた当事者の目線で、横浜・神奈川を中心に(オンラインでは全国から)ご相談をお受けしています。数字の見方から加算の整理、稼働率の改善まで、どこから手をつけるべきかの見立てをご一緒します。初回のご相談は無料ですので、放課後等デイサービスの経営でお悩みでしたら、支援サービスの内容もご覧いただいたうえで、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
放課後等デイサービスの立て直しは、「利用者を増やす」の前に、単価と稼働の構造を数字で押さえることから始まります。令和6年度の改定で支援時間による時間区分が導入され、個別支援計画に定めた支援時間が基本報酬に反映される形になりました。加算も再編・新設が行われ、令和8年度には新規指定の事業所を対象とした応急的な報酬単価の特例も設けられています。まずは直近3か月の数字をそろえ、計画と実態のずれ、算定できていない加算、欠席の理由を一つずつ点検してみてください。制度の細部は改定や通知で変わりますので、判断に迷う点は所管の指定権者に確認しながら進めることをおすすめします。


