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改善事例

退去してから入居者を探していませんか?|グループホームの「空室期間」を90日から30日以内へ短縮し、年間売上の取りこぼしを防ぐ仕組み

※本記事は障害福祉施設で起こり得る課題をもとに構成した架空のモデル事例です。特定法人の実績ではありません。人数・金額・改善結果は改善手法を説明するための想定値です。

はじめに――満床になったら営業をやめていた

定員4名の障害者グループホーム。現在4名が入居しています。管理者は言いました。「今は満床なので、入居募集はしていません」。一見すると当然のように聞こえます。ところが、ある入居者が家族との同居に戻ることになりました。退去予定は2か月後です。

管理者は、「退去してから募集を始めます」と考えていました。実際に退去してから相談支援事業所へ連絡し、ホームページへ空室情報を掲載しました。問い合わせが来る、見学する、本人が検討する、体験宿泊等を行う、関係者で調整する、契約する。

実際の入居まで、約3か月かかりました。つまり、1室が約90日間空いていたことになります。管理者は、「次の人が見つかったからよかった」と言いました。しかし経営の視点から見ると、この3か月は非常に大きな意味を持ちます。グループホームは、一度空室が発生すると、その部屋から生まれるはずだった収入が毎日失われていく事業だからです。

そこで、この法人では「空室が出てから募集する」という考え方そのものを見直しました。

1.改善前の状況――満床率だけを見ていた

法人では毎月、Aホーム4/4室、Bホーム4/4室と報告していました。つまり稼働率100%です。経営者も安心していました。しかし過去2年間を調べると、退去から次の入居まで42日、別のケースでは76日、さらに別のケースでは93日という空室期間がありました。

年間平均で見ると、実は100%稼働ではありません。問題は、法人が「今日満床かどうか」しか見ていなかったことです。

2.原因分析――退去を「突然起きる出来事」と考えていた

原因を整理すると四つありました。第一に、退去の予兆を管理していませんでした。グループホームからの退去は、すべて突然起きるわけではありません。家族との同居を検討している、一人暮らしを希望している、他のホームを検討している、入院が長期化している、生活上のミスマッチが続いている。

こうした情報が支援現場にはあっても、経営情報として共有されていませんでした。第二に、満床になると地域への情報提供をやめていました。相談支援事業所から、「空きはありますか」と聞かれても、「現在満床です」で終了します。そのため、いざ空室が出たときには候補者が一人もいません。

第三に、見学希望者の情報を残していませんでした。満床時に問い合わせがあっても、「空きがありません」で終了していました。氏名など必要以上の個人情報を保存する必要はありませんが、本人の同意等に配慮しながら、将来空室が出た場合の連絡希望の有無を確認する仕組みもありませんでした。

第四に、入居決定までの工程が長いことでした。問い合わせ、見学、本人面談、関係者調整、体験、契約、入居。一つ一つの間に1から2週間空きます。誰も全体の進捗を管理していないためです。

3.具体的な改善策①――「空室率」ではなく「空室日数」を測る

最初にKPIを変えました。これまでの、現在4室中4室入居だけではなく、年間空室日数を測ります。例えば4室のホームで1室が60日空いていれば、60室日分の売上機会が失われています。これによって、「最終的には満床になったから問題ない」という見方をやめました。

さらに、退去日、募集開始日、最初の問い合わせ日、見学日、入居決定日、実入居日を記録します。すると、どこに時間がかかっているかが分かります。

4.具体的な改善策②――退去が決まる前から「待機候補」をつくる

ここでいう待機候補とは、入居を予約させることではありません。地域の相談支援専門員等に、「現在満床ですが、今後空室が出た際には相談可能です」と伝えておきます。また、問い合わせがあった場合には、「現在は満床ですが、今後空室が出た際の情報提供を希望されますか」と確認します。

目的は囲い込みではありません。空室が発生してから初めて地域へ存在を知らせる状態をやめることです。

5.具体的な改善策③――退去予定日から逆算して動く

例えば12月31日に退去予定と分かったとします。従来は1月1日から募集開始でした。改善後は、本人のプライバシー等に十分配慮したうえで、空室予定として案内可能な時期を検討します。11月に相談支援事業所等へ空室予定を情報提供、11月後半に見学、12月に本人・関係者との調整や必要に応じた体験等、1月に条件が整えば新規入居という流れを目指します。

もちろん退去予定が変更されることもあります。だから、「○月頃に空室予定。変更の可能性あり」と正確に伝えることが重要です。

6.具体的な改善策④――「空いています」ではなくホームの特徴を伝える

相談支援事業所へ、「男性棟1室空いています」だけ伝えても、候補者を想像しにくい場合があります。そこで、生活環境、日中活動との位置関係、夜間の支援体制、居室環境、どのような暮らしを目指しているホームか、交通、地域環境など、入居を検討するうえで必要な情報を整理します。

重要なのは、「どんな人でも大丈夫です」と営業することではありません。本人の希望や必要な支援と、ホームの支援体制が合っているかを判断できる情報を提供することです。

7.具体的な改善策⑤――見学から入居までの担当者を一人決める

以前は、見学は管理者、家族連絡は世話人、相談支援との連絡はサービス管理責任者、契約は法人本部と分かれていました。その結果、「今どこまで進んでいるのか」が誰にも分かりません。そこで一人の進行担当者を決めます。すべての業務をその人が行う必要はありません。

しかし、次に誰が何をするのかを把握する人は一人必要です。問い合わせから7日間何も動いていれば、それが見えるようにします。

8.売上への効果――空室60日と20日では40日分違う

説明のため、1室について給付費等を含む事業所収入相当を1日平均10,000円と仮定します。従来の空室期間が60日、改善後20日、差は40日です。40日×10,000円で400,000円。1回の退去だけで、40万円相当の売上機会の差になります。

年間3室で同じ改善ができれば、40万円×3室で年間120万円相当です。実際の収入は障害支援区分、算定内容、加算、家賃等によって異なるため、これはあくまで説明用の単純試算です。しかし経営上のポイントは明確です。入居者を増やすことができない満床のグループホームでは、空室期間を短くすること自体が重要な売上改善になるのです。

※上記はモデル事例としての想定です。1室1日当たり10,000円は説明用の仮の金額で、実際の収入は障害支援区分や算定する加算、家賃等の利用者負担、地域などによって異なります。報酬・加算の要件は最新の告示と所管の行政窓口で必ず確認してください。空室予定の情報提供は、本人の意向とプライバシー・個人情報の取り扱いに配慮して行ってください。施設の状況によって結果は異なり、同様の成果を保証するものではありません。

9.改善結果――「満床だから営業しない」がなくなった

モデル事例では、改善後は退去予定が分かった段階から適切に情報提供を始めることで、次の入居までの期間を短縮できたと想定します。さらに、問い合わせ件数、見学件数、入居検討者数、空室日数が見えるようになりました。経営者も、「現在満床だから安心」ではなく、「次に空室が出たとき、候補者はいるか」を見るようになります。

10.コンサルタントの視点――満床経営で重要なのは「次の一人」

グループホーム経営では、「4人入っているから大丈夫」と思いやすいものです。しかし定員4名なら、一人退去した瞬間に25%の空室です。10人、20人規模の施設とは一人の影響が違います。だからグループホームでは、満床になってから営業を止めないことが重要です。

ただし、本人の意向に反して退去を防止したり、空室を埋めるためにミスマッチな入居を進めたりすることは本末転倒です。大切なのは、本人に合った入居を丁寧に進めながら、事務的な空白期間だけを減らすことです。

11.今回のテーマに特化した実践アドバイス

過去2年間の退去者について、「退去日から次の入居日まで何日空いたか」を計算してみてください。平均空室日数が初めて分かります。次に、問い合わせから見学、見学から入居判断まで、それぞれ何日かかっているかを確認します。満床時の問い合わせも「空きなし」で終わらせず、将来の情報提供を希望するか確認できる運用を検討します。

また、相談支援事業所等への情報提供は、空室数だけではなく「どのような暮らしを支援するホームなのか」が分かる内容にします。

グループホーム空室改善チェックリスト

  • 年間空室日数を把握している。
  • 平均空室期間を把握している。
  • 退去予定を管理者・経営者が共有している。
  • 退去後ではなく適切な時期から次の募集準備をしている。
  • 満床時の問い合わせ件数を把握している。
  • 将来の情報提供希望を確認する仕組みがある。
  • 地域の相談支援事業所等へホームの特徴を伝えている。
  • 見学から入居までの担当者が明確である。
  • 「次に誰が何をするか」が明確である。
  • 見学後の検討状況を把握している。
  • 空室を埋めることだけを目的に入居判断していない。
  • 本人とホームとの適合性を最優先している。
  • 空室1日当たりの経営影響を把握している。

12.まとめ――グループホームの売上改善は「満床にする」だけでは終わらない

満床になった、これで安心。そう考えた瞬間から、次の空室リスクが始まっています。グループホームでは一人の退去が経営へ与える影響が大きいため、退去後に何日空室になるかまで管理する必要があります。入居者を無理に引き止めるのではありません。

ミスマッチな人を急いで入居させるのでもありません。本人に合った入居先として選んでもらうプロセスを維持しながら、連絡待ち、担当者不明、募集開始の遅れ、見学日程の放置といった施設側の理由で発生している空室期間をなくすのです。

次の経営会議では、「現在何室埋まっていますか」だけでなく、「退去から次の入居まで、平均何日かかっていますか」と聞いてみてください。この数字を持っていないグループホームには、まだ売上改善の余地が残っています。

退去が続くときの入居率の見直しは 入居者の退去が続くとき、グループホームを追加開設して満室にした例は グループホームを追加開設して黒字化するまでの1年、相談支援事業所との連携で紹介を増やした例は 相談支援事業所との連携で利用者紹介が倍増、問い合わせの紹介元を記録した例は 「どこから紹介された利用者か」を把握していますか? もあわせてご覧ください。

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