障がい者施設さま向け|経営の再生・改善を現場目線でまるごと支援 神奈川中心 × 全国対応|初回相談0円
改善事例

職員はいるのに、なぜ毎日「人が足りない」と感じるのか|利用者数ではなく「支援負荷」を見える化し、職員配置を組み直した障害福祉施設

― 利用者数ではなく「支援負荷」を見える化し、職員配置を組み直した障害福祉施設 ―

※本稿は、障害福祉施設で起こり得る複数の課題をもとに再構成したモデル事例です。特定の施設・法人の実績を示すものではなく、数値等は改善の考え方を分かりやすくするための想定です。

はじめに――配置基準は満たしている。それでも現場から「人が足りない」と言われる

今回のモデル事例は、定員20名の生活介護事業所です。管理者の悩みは、職員から繰り返し出てくる、「人が足りません」という声でした。法人としては必要な職員数を確保しています。欠員が続いているわけでもありません。管理者は勤務表を見るたびに、「これだけ職員がいるのに、なぜ足りないのだろう」と感じていました。

一方、現場職員にも言い分があります。「午前中はトイレ介助が重なります」「送迎から戻った直後が一番大変です」「入浴がある日は職員が一人取られます」「AさんとBさんの状態が不安定な日には、他の利用者を十分に見られません」。

つまり問題は、単純な職員数ではありませんでした。詳しく調べると、施設では、「利用者20名に対して職員○名」という人数だけで配置を考え、時間帯ごとの支援量を見ていなかったのです。

改善前の状況――毎日ほぼ同じ勤務表を作っていた

施設では早番、日勤、遅番など基本的な勤務区分が決まっていました。利用者数が大きく変わらないため、職員配置も毎日ほぼ同じです。しかし、一日の業務を時間帯別に確認すると、支援負荷には大きな差がありました。

朝は送迎車が次々に戻ってきます。到着した利用者の荷物確認、家族からの連絡事項の確認、トイレ介助、水分提供、健康状態の確認、活動準備。これらが短時間に集中します。昼前になると、トイレ介助、食事準備、移動介助、食事介助、服薬に関する支援、口腔ケアが重なります。一方、午後の一部の時間帯には比較的落ち着く時間もありました。

それでも勤務表上は、「今日は職員6名」という一つの数字で管理されています。管理者は職員人数を見ていましたが、現場は業務が集中する時間を経験していたのです。

原因分析――「利用者数」と「必要な支援量」を同じものとして考えていた

20名の利用者がいる日でも、必要な支援量は毎日同じではありません。例えば、自立して食事ができる人が多い日、食事介助が必要な人が多い日、入浴利用者が多い日、通院同行がある日、行動面で個別対応が必要な人が利用する日、車椅子利用者が多い日では、職員にかかる負担は違います。

ところが施設では、「今日は18人だから少ない」「今日は20人だから忙しい」という見方をしていました。実際には18人でも非常に忙しい日があり、20人でも比較的落ち着く日があります。必要だったのは、利用者数ではなく、その日に必要となる「支援量」を見ることでした。

改善策――支援負荷から職員配置を組み直す7つの見直し

改善策① 一日の業務を30分単位で書き出す

最初に行ったのは、職員を増やすことではありません。「いつ忙しいのか」を調べました。8時30分、9時、9時30分、10時というように、30分程度の単位で主な業務を書き出します。すると、9時30分から10時30分、11時30分から13時30分、15時30分から16時30分など、業務が集中する時間帯が見えてきました。逆に、比較的余裕のある時間帯もあります。「一日中忙しい」という感覚を、どの時間に、何が集中しているのかへ分解したのです。

改善策② 利用者ごとの「支援負荷」を大まかに整理する

次に、利用者一人ひとりについて日常的に必要となる支援を整理しました。例えば、移動、排泄、食事、コミュニケーション、行動面への個別対応、医療的配慮、送迎などです。

ここで重要なのは、利用者に点数をつけて優劣を決めることではありません。まして、「支援負荷が高いから受け入れない」というための評価でもありません。目的は、職員配置を考えるために必要な支援量を把握することです。例えば同じ20名でも、食事介助が必要な利用者が集中する日は昼食時間帯の配置を厚くする必要があります。

改善策③ 職員配置を「一日単位」から「時間帯単位」で考える

勤務表の考え方も変更しました。以前は、「火曜日は職員6人」という見方でした。改善後は、「火曜日の11時30分から13時30分に何人必要か」まで考えます。

例えば事務作業を行う職員についても、昼食介助が集中する時間帯を避けて事務時間を設定します。休憩時間も全員ほぼ同じ時間に取るのではなく、安全と労務管理に配慮しながら調整します。会議や面談も、支援負荷の高い時間帯には入れません。人数を増やさなくても、人が必要な時間へ職員を集めるだけで現場負担を軽減できる場合があります。

改善策④ 「職員が利用者を待つ時間」も調べる

支援負荷だけでなく、業務の流れも確認しました。すると意外な待ち時間がありました。送迎車が戻るまで職員が待つ、入浴準備が整うまで待つ、食事が届くまで待つ、他職員の確認が終わるまで待つ、利用者が移動してから活動準備を始める。一つ一つは数分でも、積み重なると大きな時間になります。

そこで、活動物品を事前準備する、入浴準備の担当を明確にする、送迎帰着時間に合わせて業務を組むなど、職員を増やす前に仕事の流れを変えることも行いました。

「探す・待つ・聞く・戻る」といった業務の中断を測って減らす方法は、「探す・待つ・聞く・戻る」を減らす|業務時間ではなく「中断」を測る業務改善 で詳しく解説しています。

改善策⑤ 「忙しい」を数字と言葉に変える

以前の会議では、職員が「最近すごく忙しいです」、管理者が「でも人数は配置していますよ」というやり取りが起きていました。これでは双方が納得できません。そこで、「火曜日の12時前後に食事介助5名、移動介助3名、服薬対応2名が重なっている」など、具体的に話すようにしました。

すると管理者も、「それなら、この時間帯だけ別業務を外そう」と改善策を考えられます。「忙しい」という感覚を否定するのではなく、構造として説明できるようにすることが重要でした。

改善策⑥ 管理者・事務職も「ピーク時間」を共有する

現場職員だけが忙しい時間を知っていても、組織全体は変わりません。管理者が昼食介助のピーク時間に会議を設定する、本部からその時間に電話が入る、事務職が書類確認を依頼する。これでは改善できません。

そこで、事業所のピーク時間を施設全体で共有しました。緊急でない相談、会議、書類確認、職員面談、研修などは、可能な範囲でピーク時間を避けます。「現場の忙しさ」を現場だけの問題にしないようにしました。

改善策⑦ 人員不足と業務設計不足を区別する

改善を進めても、どうしても人が足りない時間帯があります。ここで初めて、勤務時間変更、短時間勤務者の活用、非常勤職員の配置、採用などを検討します。

重要なのは、「人が足りない」という声をすべて業務効率化で解決しようとしないことです。必要な支援量に対して明らかに人員が不足しているのであれば、人員確保が必要です。逆に、業務設計の問題なのに採用だけを続けても、「職員は増えたのに、なぜか忙しい」という状態が残ります。

人を増やす前に業務を棚卸しして、やめる・減らす・移す業務を分ける進め方は、「人を増やす前」に業務の棚卸しを|障害福祉施設で残業を減らす4つの分類と見直しの順番 で整理しています。

改善結果――「職員を増やしてほしい」から「この時間を改善したい」へ変わった

モデル事例では、時間帯別の支援量と業務を見える化し、勤務・休憩・会議・事務時間などを調整した結果、ピーク時間帯の負担が軽減した想定です。

大きな変化は職員の会話でした。以前は、「とにかく人を増やしてください」という要望が中心でした。改善後は、「水曜日の昼食前だけ負荷が高いので、11時30分から1時間、別業務を外せませんか」という具体的な提案が出るようになりました。管理者も、「職員数は足りているはず」と反論するのではなく、どこに人を配置すれば支援が安定するかを考えられるようになりました。さらにピーク時間の負担が減ることで、職員が利用者へ急いだ声かけをする場面も減り、支援の落ち着きにもつながりました。

※ 本稿は複数の課題をもとに再構成したモデル事例であり、記載の人数・時間帯や改善の内容は考え方を説明するための想定(参考値)です。実際の結果は、利用者の状態・建物の構造・事業所の体制などによって異なります。同様の成果を保証するものではありません。人員配置基準は、最新の基準・所管の行政窓口でご確認ください。

コンサルタントの視点――人員配置基準と「現場が回る人数」は同じではない

障害福祉施設では、制度上必要な人員配置を満たすことは当然重要です。しかし、基準を満たしている=現場に十分な人がいるとは限りません。利用者の障害特性、支援内容、建物構造、送迎、入浴、食事介助、医療的ニーズ、活動内容によって必要な支援量は異なります。

一方、「現場が忙しい=すぐ採用」とも限りません。職員が必要な時間と、実際に配置されている時間がずれているだけの場合もあります。だからこそ、採用の前に支援負荷を見る。支援負荷を見たうえで、それでも不足していれば人を増やす。この順番が重要です。

今回のテーマに特化した実践アドバイス

  1. 「一番忙しい時間は何時ですか」と全職員に聞いてください。回答が一致するなら、その時間帯に改善余地がある可能性があります。
  2. 一日だけ管理者が30分ごとの業務を観察してください。会議室で勤務表を見るだけでは分からない業務の重なりが見えてきます。
  3. 利用者数だけで「今日は楽」と判断しないでください。少人数でも支援量が多い日はあります。人数と支援負荷を分けて考えます。
  4. 休憩取得状況を時間帯別に確認してください。特定の職員だけ休憩が遅くなる、あるいは取れない場合、支援配置に偏りがある可能性があります。
  5. 残業の「終了時刻」ではなく「発生原因」を調べてください。記録、送迎、会議、片付け、どの業務が残っているのかで対策は変わります。
  6. 短時間職員をピーク時間に活用できないか検討してください。8時間勤務者を増やすことだけが採用ではありません。施設によっては昼食前後など、支援が集中する数時間への配置が有効です。
  7. 業務改善で解決できない不足は、きちんと採用してください。「効率化すれば何とかなる」と現場へ負担を押しつけないことも重要です。安全と支援品質を確保するために必要な人員は確保します。

支援負荷・職員配置チェックリスト

  • 一日のピーク時間帯を把握しているか。
  • 曜日による支援負荷の違いを把握しているか。
  • 利用者数だけで職員配置を決めていないか。
  • 食事・排泄・移動等の介助が集中する時間を把握しているか。
  • 入浴や送迎によって現場から離れる職員数を把握しているか。
  • 職員の休憩が支援ピークと重なりすぎていないか。
  • 会議・面談・研修をピーク時間に設定していないか。
  • 管理者が実際の支援現場を定期的に確認しているか。
  • 「忙しい」という声の原因を具体化しているか。
  • 待ち時間・二重作業などの業務ロスを確認しているか。
  • 短時間勤務者の活用を検討しているか。
  • 業務改善で解決できない人員不足を放置していないか。
  • 職員配置の変更後に事故・残業・支援品質を確認しているか。

まとめ――必要なのは「職員を何人置くか」ではなく「必要なときに人がいるか」

障害福祉施設で、「人が足りません」という声が出たとき、二つの極端な対応があります。一つは、「では採用しましょう」とすぐ人を増やすこと。もう一つは、「配置基準は満たしているので足りています」と現場の声を否定することです。

どちらも、その前に確認すべきことがあります。いつ、どこで、どの支援に人が必要なのか。午前9時から10時、昼食前後、入浴時間、送迎出発前。その時間帯に何が起きているのかを見てください。利用者20名という数字だけでは見えない支援量があります。

そして、そこが分かれば、勤務時間をずらす、休憩時間を調整する、会議を移動する、事務作業を別時間にする、短時間職員を配置する、業務そのものを見直す、それでも不足するなら採用するという順序で考えられます。

職員配置の目的は、勤務表の人数をそろえることではありません。利用者が必要とする支援を、必要な時間に、無理なく提供できる状態をつくることです。そして、それは職員の働きやすさだけの問題でもありません。職員が時間に追われれば、利用者への声かけが急ぎます。待つ支援が難しくなります。小さな変化を観察する余裕がなくなります。つまり職員配置は、サービス品質そのものに直結しています。

次に現場から、「人が足りません」と言われたとき、「何人必要ですか?」と聞く前に、もう一つ質問してみてください。「一日の中で、何時から何時までが一番大変ですか。そして、その時間に何が重なっていますか?」そこまで見えるようになると、「人数合わせ」だった勤務表が、利用者支援を支えるための人員配置表へ変わっていきます。

職員一人あたりの生産性を上げて残業を減らした実例は 職員一人あたりの生産性を上げた施設がやった業務改善、短時間勤務の職員が定着する職場づくりは パート・非常勤職員の定着率を上げた施設がやっていたこと、人件費の構造の見直しは 人件費率が80%を超えた施設が70%台に戻した方法 もあわせてご覧ください。

職員配置の見直しや、現場の「人が足りない」を具体化する業務改善のご相談は、サービス内容もあわせて、お気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

Contact

障がい者施設の経営、
Engoodが再生まで伴走します。

「稼働率が上がらない」「赤字が続いている」「加算を取りこぼしている」——そんな施設さまへ。
初回のご相談・経営診断は無料です。現状の見える化から、わかりやすくご案内します。