パート・非常勤職員の定着率を上げた施設がやっていたこと|「どうせパートだから」を変えた3つの取り組み
——「どうせパートだから」という意識を変えた管理者の実例
- 非常勤6名のうち1年で5名が退職していた状態から、翌年の退職は1名に
- 変えたのは「情報が届かない」「感謝が伝わらない」「成長機会がない」という3つの構造
- ノート1冊・30分のミーティング・研修の門戸開放——大きな費用をかけずに始められる取り組み
【エビデンスと予測の区別について】登場する人物・施設は架空です(実際のコンサル支援先を参考に加工しています)。「非常勤職員の包含が定着率に影響する」という記述は本事例の観察に基づくもので、統制されたエビデンスではありません。公的データを引用する際は出典を明示し、筆者の経験・推測は本文中に「(筆者推測)」と明示しています。
施設が抱えていた課題——「非常勤が毎年入れ替わる」
「常勤は比較的安定しているのですが、非常勤職員が毎年入れ替わります。採用のたびに教えて、慣れた頃に辞めていく。この繰り返しです」——就労継続支援B型(定員22名)を運営する法人の管理者の言葉です。
非常勤職員の状況を整理すると、直近1年間で5名が退職し、4名を新たに採用していたことが分かりました。「入れ替わりが多すぎて、利用者さんとの関係が築けない」という、支援の質への影響も出ていました。
| 項目 | 改善前の状況 |
|---|---|
| 非常勤職員数 | 6名(週2〜4日勤務) |
| 直近1年の退職者 | 5名 |
| 直近1年の新規採用 | 4名(うち1名はすでに退職) |
| 退職理由(ヒアリング) | 「居場所がない感じがした」「何を期待されているかわからなかった」 |
| 非常勤職員への情報共有 | 「朝礼は参加できないことが多い。会議は呼ばれない」 |
| 非常勤職員との面談 | 「採用時のみ。その後は特になし」 |
原因分析——非常勤職員が「居場所がない」と感じる構造
原因① 情報が届かない
非常勤職員は朝礼に参加できないことが多く、会議にも呼ばれていませんでした。「何かあれば常勤職員から伝えて」という運用でしたが、実際には伝わっていないことが多かったのです。「知らないうちに決まっていた」という感覚が、疎外感を生んでいました。
原因② 「感謝を伝える機会」がなかった
管理者は非常勤職員への感謝を日頃から感じていましたが、それを言葉で伝えたことはほとんどありませんでした。「仕事をしてくれているのだから当然」という感覚が、「ありがとう」を言わない習慣を生んでいました(筆者推測:感謝の言葉が職員の帰属意識に影響するという観察は組織心理学の知見と整合しています)。
原因③ 「成長の機会」がなかった
研修・資格取得支援は常勤職員向けだけで、非常勤職員は対象外でした。「どうせパートだから」という意識が、非常勤職員の成長機会を奪っていました(筆者推測:成長機会の提供が定着率に影響するという観察は本事例に基づくものです)。
【参考データ】公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」(令和7年7月28日公表)によると、事業所が職場定着・離職防止の方策として行っているものは「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」が74.7%で最も高く、次いで「人間関係が良好な職場づくり」(72.0%)、「職場内での仕事上のコミュニケーションの円滑化(面談、ミーティング、意見交換会など)」(68.9%)となっています。また、直前の介護関係の仕事を辞めた理由として最も高いのは「職場の人間関係に問題があったため」(24.7%)でした。※本調査は介護分野を対象としたものであり、障害福祉サービスに特化した調査ではありません。障害福祉においても同様の傾向があるかどうかは本事例の観察に基づく推測です(筆者推測)。
実施した改善策——「非常勤職員も仲間」に変えた3つの取り組み
① 「非常勤専用の情報共有ノート」の設置
施設内に「非常勤ノート」を設置しました。朝礼・会議で共有された内容、今月の行事、利用者の状態変化など、「非常勤職員が知っておくべき情報」を毎日書き込むノートです。出勤時に見れば、その日の状況を把握できます。
設置から2週間後、こんなやりとりがありました。
非常勤職員「このノート、すごく助かります。以前は『あ、そういうことがあったんですか』って後から知ることが多かったので」
管理者「前から伝えたかったんだけど、仕組みがなかった。教えてくれてありがとう」
非常勤職員「『ありがとう』なんて……そんなこと言ってもらったの、初めてかもしれない(笑)」
情報が届かないことは、本人の努力ではどうにもなりません。仕組みで解決すべき問題です。
② 季節ごとの「非常勤職員感謝ミーティング」
3か月に1回、非常勤職員だけを集めた30分のミーティングを設けました。内容は「今困っていること・改善してほしいことの共有」と「この3か月でよかったことの共有」の2点のみです。
「わざわざ時間を作ってもらえるとは思っていなかった」という声が複数ありました。「自分たちのことを考えてくれている」という実感が、帰属意識を高めます(筆者推測)。
③ 非常勤職員への研修参加の門戸を開く
内部研修への参加を「希望する非常勤職員は参加可」に変更しました。あわせて、参加した時間は勤務として扱うことを明示しています。ここを曖昧にすると「参加したいが無給では難しい」となり、結局は門戸を開いたことになりません。
「研修に参加できると思っていなかった。参加してみたら、支援の意味がわかった気がした」という非常勤職員の声が届きました(本事例での観察)。
改善結果——1年後の変化
| 指標 | 改善前(1年) | 改善後(1年) |
|---|---|---|
| 非常勤職員の退職者 | 5名 | 1名 |
| 非常勤職員の平均在籍期間 | 約8か月 | 現在継続中(平均14か月以上) |
| 非常勤職員の「居場所がある」感覚 | 把握なし | 感謝ミーティングで「ある」と全員回答 |
| 常勤職員の「非常勤との連携」感覚 | 「難しい」 | 「やりやすくなった」 |
| 利用者への影響 | 「顔が変わりすぎる」 | 「同じ顔が来る安心感」(利用者家族の声) |
※ 上記はコンサル支援先の事例をもとにした参考値です。改善の程度は施設の規模・非常勤職員の状況・地域の雇用環境等により異なり、同様の成果を保証するものではありません。
管理者の1年後の言葉
「『どうせパートだから』という意識が、私の中にあったと思います。でも非常勤の方が辞めると、利用者さんへの影響が大きい。長く続けてもらうことが、支援の質を守ることだとわかりました。ノート1冊・ミーティング30分・『ありがとう』という言葉——大きな費用をかけずに始められることが、こんなに変化を生むとは思いませんでした」
成功のポイント
- 情報は「伝えて」ではなく仕組みで届ける——常勤経由の伝達に頼ると、届かないことが常態化します
- 感謝は言葉にしないと伝わらない——「当然」と思っていることほど、口に出す必要があります
- 成長機会を勤務形態で区切らない——研修参加を勤務扱いにするところまで含めて「門戸を開く」ことになります
- 非常勤の定着は支援の質に直結する——利用者にとっては「同じ顔が来る」こと自体が安心につながります
自施設のセルフチェックリスト
次の5項目のうち、いくつ当てはまるでしょうか。
- □ 朝礼・会議の内容が、参加できない非常勤職員にも届く仕組みがある
- □ 非常勤職員に期待している役割を、言葉にして伝えている
- □ 採用時以外にも、非常勤職員と話す機会が定期的にある
- □ 研修・資格取得支援の対象に非常勤職員が含まれている
- □ 非常勤職員の退職理由を、本人から聴き取っている
まとめ——非常勤職員を「外の人」にしない
非常勤職員の定着率が低い施設の多くで、「情報が届いていない」「感謝が伝わっていない」「成長機会がない」という共通点が見られます(筆者推測:コンサル現場での観察に基づくもので、統計的なエビデンスではありません)。これらはいずれも、意識と仕組みを少し変えるだけで改善できます。
人材不足のなかで採用を続けることは簡単ではありません。すでに来てくれている非常勤職員に長く続けてもらうことは、採用コストの面でも、利用者支援の継続性の面でも、施設にとって大きな意味を持ちます。
まずは非常勤職員に「ありがとう」を伝えることから始めてみてください。
定着率が高い施設の共通点は 職員が「この施設で働き続けたい」と思う瞬間、逆に離職率が高い施設に共通する職場環境は 離職率が高い障害福祉施設に共通する3つの職場環境 をご覧ください。
本記事は非常勤・パート職員に焦点を当てた記録です。常勤職員を含めた組織全体の離職率改善は 離職率25%だった障害者施設が1年で8%まで改善した組織改革、実際に「辞めたい」と申し出があったときの面談の進め方は 「辞めたい」と言った職員が残った施設 をあわせてご覧ください。
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