「欠席だから仕方ない」で終わらせない|月60件の欠席理由を分析し、利用者の生活支援と売上改善を同時に進めた生活介護事業所
※本稿も架空のモデル事例です。数値・改善結果は説明用の想定であり、特定事業所の実績ではありません。また、体調不良等で休息が必要な利用者へ通所を促すことを目的とするものではありません。
はじめに――契約者はいるのに、毎日空席がある
定員20名。登録利用者も十分にいる。利用予定表を見ると、ほぼ定員に近い。ところが実際に朝を迎えると、「今日は休みます」という電話が入ります。最終的な利用者数は15から17名。管理者は、「障害福祉だから欠席は仕方ありません」と考えていました。
もちろん、体調不良や通院など必要な欠席はあります。問題は、すべての欠席を同じものとして扱っていたことでした。1か月の欠席を調べると約60件。その理由を分類すると、施設側が改善できる可能性のある欠席が含まれていました。
改善前の状況――欠席者名だけを記録していた
朝、家族から電話が来ます。「今日は休みます」。職員は予定表に「欠席」と記入します。しかし、なぜ休むのか、同じ曜日に多くないか、送迎時間に問題はないか、前日の活動で疲れていないか、特定の活動を嫌がっていないか、家庭側の事情なのかといった情報を集計していませんでした。
月末には、予定利用延べ人数400名、実利用340名、欠席60名という数字だけが残ります。60件の中身が見えないため、改善方法も見えません。
原因分析――欠席を「利用者側の事情」と決めつけていた
欠席理由を仮に分類すると、次のような傾向が見えてきました。体調不良、通院、家庭都合、本人が行きたがらない、朝の準備が間に合わない、送迎時間との不一致、前日の疲労、理由不明。
ここで重要なのは、欠席を減らすこと自体を目標にしないことです。発熱している人に通所してもらう必要はありません。必要な通院を減らすものでもありません。見るべきなのは、「本人は利用したいのに、何らかの障壁によって利用できなかった欠席がないか」です。
改善策① 欠席を6種類程度に分類する
欠席連絡を受けた職員が、簡単な分類を記録するようにしました。例えば、健康・体調、医療・通院、家庭事情、本人希望、送迎・時間、その他。細かすぎる分類は職員の負担になります。目的は医学的診断ではなく、傾向を把握することです。
1か月集計すると、「月曜日の本人拒否が多い」「特定利用者の送迎時間に関する欠席が続いている」など、これまで見えなかったパターンが現れました。
改善策② 「本人が行きたがらない」を原因にしない
最も重要な改善です。「本人拒否」は原因ではありません。結果です。なぜ行きたくないのでしょうか。活動が合わない、人間関係、疲労、送迎車に長く乗る、昼食、職員との関係、曜日ごとのプログラム。さまざまな可能性があります。
ある利用者では月曜日の欠席が多いことが分かりました。確認すると、月曜日午後の集団活動を本人が苦手としていました。そこで本人の希望を確認し、別の活動を選択できるようにします。すると、「施設へ行く=嫌な活動をしなければならない」という状況を変えられる可能性があります。
売上のために本人を通わせるのではありません。利用を妨げている支援上の原因を取り除くことが先です。
改善策③ 朝の送迎を30分単位で分析する
別の利用者では、「朝、準備が間に合わない」という欠席が続いていました。施設側から見ると家庭事情です。しかし詳しく聞くと、送迎車が予定より早く到着することがあり、家族が対応できないことが分かりました。そこで送迎時刻の幅を見直し、到着時間を安定させました。
別のケースでは、乗車時間が長すぎるため施設到着時には疲れていることが分かり、ルートそのものを再編しました。欠席分析をすると、送迎品質まで見えてくるのです。
改善策④ 家族へ「休ませないでください」と言わない
欠席率を下げようとすると、家族へ、「なるべく休まないようにしてください」と言いたくなるかもしれません。これは今回の改善では行いません。代わりに、「最近○曜日のお休みが続いていますが、何か困っていることはありませんか」と確認します。
目的は出席を強制することではなく、家庭側の困りごとを把握することです。例えば、家族が朝の準備を一人で行うのが難しい、本人の睡眠リズムが崩れている、服薬変更後に朝起きにくいなど、施設だけでは解決できない問題が見つかる場合があります。必要に応じて相談支援や医療等につなぎます。
改善策⑤ 「欠席率」ではなく「改善可能な欠席」を見る
モデル事業所では月60件の欠席があったとします。このうち、体調不良・通院など30件、本人希望や予定された休み10件、施設側の支援や送迎、家族との調整によって改善の余地がありそうな欠席20件だったとします。施設が注目するのは最後の20件です。すべてをゼロにする必要はありません。
仮に半分の10利用日が、本人の希望に沿って利用できるようになったとします。1利用日当たりの事業所収入を説明用に12,000円とすると、10日×12,000円=月額120,000円の増収。年間単純換算なら、約144万円です。さらに改善可能な利用が月20日実現すれば、単純計算では月24万円になります。ただし実際の報酬、加算、欠席時の取扱い、営業日数等によって金額は変動します。
※上記はモデル事例としての想定です。1利用日当たり12,000円は説明用の仮の金額で、実際の報酬・加算は障害支援区分や利用定員、地域、算定する加算などによって異なります。最新の告示と所管の行政窓口で必ず確認してください。施設の状況によって結果は異なり、同様の成果を保証するものではありません。
改善策⑥ 欠席改善を管理者のKPIだけにしない
ここは非常に重要です。管理者へ、「欠席率を5%下げなさい」とだけ指示すると、利用者や家族への不適切な利用勧奨につながる危険があります。
そこで指標を、欠席数、欠席理由不明率、繰り返し欠席者への状況確認率、本人希望に沿って解決できた利用障壁などに分けました。売上数字だけを追わせず、利用者が希望するサービスを受けられているかを同時に確認します。
改善結果――「休んだ人」を数える経営から「なぜ利用できなかったか」を考える経営へ
モデル事例では、改善可能性がある20件のうち10件について利用障壁が解消され、実利用につながったと想定します。月12万円程度の増収効果が期待できます。
しかし、それ以上に重要なのは支援の変化です。以前は、「Aさん、今日も休みです」で終了していました。改善後は、「Aさんは3週連続で月曜日に休んでいる。月曜日に何か理由がないだろうか」と考えるようになります。つまり欠席データが、経営情報であると同時に、支援品質を点検する情報になったのです。
コンサルタントの視点――売上改善と支援改善が一致する場所を探す
福祉事業で売上だけを追いかけると、無理な利用勧奨につながりかねません。一方、「福祉だから売上を考えなくてよい」でも事業は継続できません。そこで探したいのが、利用者の利益と施設の収益が同じ方向を向く場所です。
本人は施設へ行きたい。家族も利用を希望している。しかし送迎、活動、情報共有など施設側の問題で利用できない。これを解決すれば、本人は希望するサービスを受けられ、施設には売上が生まれます。
こうした増収は、単なる販売促進とは性質が違います。提供できていなかった支援を提供できるようにする経営改善だからです。
今回のテーマに特化した実践アドバイス
欠席件数だけではなく理由を集計してください。ただし分類は簡単にします。次に「本人拒否」を最終原因にしないことです。曜日、活動、送迎、人間関係、疲労などを確認します。家族への聞き取りでは出席を求めるのではなく、「利用を妨げている困りごとはありませんか」と尋ねます。そして毎月、欠席の多い上位数名についてケースレビューを行います。売上会議ではなく、支援会議として実施するのがポイントです。
欠席・実利用改善チェックリスト
- 月間予定利用数を把握している。
- 実利用数を把握している。
- 欠席件数を把握している。
- 欠席理由を簡単に分類している。
- 理由不明の欠席を放置していない。
- 曜日別の欠席傾向を確認している。
- 同じ利用者の反復欠席を確認している。
- 「本人拒否」を原因として終了していない。
- 活動内容との関連を確認している。
- 送迎との関連を確認している。
- 家族の困りごとを確認している。
- 必要な欠席を無理に減らそうとしていない。
- 利用者本人の意思を確認している。
- 改善可能な利用障壁を把握している。
- 改善による増収額を試算している。
- 売上だけでなく本人の満足度も確認している。
まとめ――「欠席」は売上減少ではなく、施設へのメッセージかもしれない
欠席にはさまざまな理由があります。体調が悪い、病院へ行く、家族と出かける、今日は家で過ごしたい。それらを無理に減らす必要はありません。
しかし、本当は行きたいのに送迎が合わない、活動が苦痛で行きたくない、施設での過ごし方に不安がある、家族が朝の準備に困っている。こうした理由で利用できていないなら、施設には改善できることがあります。
だから月末に、「今月は欠席60件でした」で終わらせないことです。「その60件のうち、本人が本当は利用したかった日は何日あっただろう?」と考えてみてください。そこを改善できれば、利用者にとっては必要な支援を受けられる日が増えます。家族にとっては生活の安定につながります。そして事業所にとっては実利用日数が増え、売上につながります。
障害福祉における持続可能な売上改善とは、利用者からより多くの売上を取ることではありません。利用者が必要としているのに提供できていないサービスを見つけ、その障壁を一つずつ取り除くこと。その視点で欠席記録を見直すと、単なる「休み」の一覧が、支援改善と経営改善の両方を教えてくれる重要なデータへ変わります。
欠席を利用者別・曜日別に分け、実利用率から見直す考え方の全体は 登録はあるのに稼働率が上がらない、「行きたくない」を行動のサインとして読む支援は 利用者の「問題行動」が減った施設がやっていたこと、空きが埋まらない理由を5つに分けた例は 「場所が悪い」で止まっていた生活介護が定員に近づくまでの2年、送迎エリアを時間とルートで決め直したモデル事例は 「送迎できません」で断っていた問い合わせを売上に変える もあわせてご覧ください。
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