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改善事例

新規利用者を増やさず、月商28万8,000円の増収を実現するには?|「利用したい日に利用できない」を解消した生活介護事業所

今回のテーマ:売上向上・既存利用者のニーズ開拓

※本記事は架空のモデル事例です。実在施設の改善実績ではありません。金額・利用日数は改善方法を説明するための想定値であり、実際の報酬額や収益を保証するものではありません。サービスの追加利用には、本人の希望、支給決定内容、個別支援計画、事業所の受け入れ体制等の確認が必要です。

はじめに|「利用者を増やさなければ売上は増えない」は本当か?

生活介護事業所の経営相談では、次のような話をよく耳にします。

  • 「新しい利用者がなかなか増えません」
  • 「相談支援事業所へ営業に行っていますが、紹介がありません」
  • 「見学は来ても契約につながりません」

売上を増やそうとすると、多くの施設が新規利用者の獲得を考えます。もちろん、新規利用者の獲得は重要です。

しかし、既存利用者について、こんな確認をしたことはあるでしょうか。

「現在利用している方は、本当に希望する日数だけ利用できているのでしょうか?」

今回のモデル事例は、定員20名の生活介護事業所です。登録利用者数は18名。毎日一定数の利用者が通所しており、職員は「これ以上利用者を増やすのは難しい」と感じていました。

ところが、利用者・家族への聞き取りを行うと、意外な事実が分かりました。

  • 「本当は水曜日も通いたい」
  • 「金曜日に家で過ごす時間が長く、本人が退屈している」
  • 「もう1日利用できるなら、家族も助かる」

こうした希望が複数あったのです。それにもかかわらず、施設は追加利用の相談を受け付けていませんでした。

理由は単純です。「今まで週3日だから、これからも週3日」という運営になっていたからです。

1.改善前の状況|登録人数は把握していても、希望利用日数は把握していなかった

施設の利用状況は次のようなものでした。

モデル事業所の状況
定員 20名
登録利用者 18名
営業日 週5日
追加利用希望者 3名

数値はすべて説明用の想定です。

管理者は毎月、登録利用者数と延べ利用人数を確認していました。しかし、次の情報は整理されていませんでした。

  • 本人が希望する利用日数
  • 家族が希望する利用日数
  • 現在の利用日数との差
  • 追加利用を希望する曜日
  • 利用できない理由

つまり、施設は「現在の利用実績」は把握していても、「まだ満たせていない利用ニーズ」は把握していなかったのです。

2.原因分析|利用契約を結んだ時点で、営業活動が終わっていた

原因を詳しく調べると、三つの問題がありました。

原因① 契約後に利用希望を聞き直していない

利用開始時には、本人や家族の希望を確認していました。しかし、利用開始から数年が経過しても、利用日数を改めて確認する機会がありませんでした。

利用者の生活は変わります。

  • 家族の就労状況が変わる。
  • 同居家族が高齢になる。
  • 本人の活動意欲が変化する。
  • 他のサービスの利用状況が変わる。

それでも施設側は、契約時の利用曜日を固定したままにしていました。

原因② 職員が「追加利用の相談は営業行為」と考えていた

一部の職員は、利用日数について施設から話を切り出すことに抵抗を感じていました。「売上のために利用を勧めていると思われたくない」という気持ちがあったのです。

しかし、本人が追加利用を希望しているか確認することと、売上のために不要な利用を勧めることは違います。

必要なのは、利用日数を増やすよう説得することではなく、本人の生活に必要な支援が不足していないか確認することでした。

原因③ 追加利用を受け入れる手順がなかった

仮に利用希望があっても、

  • 誰が相談を受けるのか。
  • 誰が空き状況を確認するのか。
  • 送迎は可能か。
  • 個別支援計画はどう見直すのか。
  • 相談支援専門員との調整は誰が行うのか。

といった手順が決まっていませんでした。その結果、希望があっても「確認しておきます」で止まっていたのです。

3.具体的な改善策①|全利用者に「希望利用日数」を確認する

最初に行ったのは、利用日数を増やす営業ではありません。本人と家族の現在の希望を確認することでした。

面談では、次のように尋ねました。

  • 「現在の利用日数について、困っていることはありませんか」
  • 「通所しない日は、どのように過ごしていますか」
  • 「利用したい曜日や、反対に減らしたい曜日はありますか」
  • 「今後、生活の変化に伴って利用方法を変えたい希望はありますか」

ここで重要なのは、追加利用だけを選択肢にしないことです。現状維持を希望する人もいます。利用日数を減らしたい人もいます。別の活動やサービスを希望する人もいます。

本人の希望を公平に確認して初めて、追加利用の必要性が分かります。今回のモデル事例では、3名から追加利用の希望が確認されたとします。

4.具体的な改善策②|追加利用の希望を「受け入れ可能な計画」に変える

希望を確認しただけでは売上につながりません。次に必要なのは、実際に利用できるかの確認です。

例えば、Aさんが水曜日の追加利用を希望した場合、施設では次の事項を確認します。

  • その曜日の利用人数。
  • 必要な職員配置。
  • 送迎車の座席とルート。
  • 本人が参加したい活動。
  • 食事や個別の配慮。
  • 支給決定内容や利用可能日数。
  • 個別支援計画との整合性。
  • 必要な関係者との調整。

これらを確認し、受け入れ可能であれば利用開始日を調整します。

希望があっても、定員や安全な支援体制を超えて受け入れてはいけません。売上向上は、適切なサービス提供が成立する範囲で実現することが前提です。

5.具体的な改善策③|相談支援専門員との連携を「紹介依頼」から「生活課題の共有」へ変える

これまで施設は、相談支援専門員へ、「新しい利用者がいたら紹介してください」と伝えていました。

しかし、今回の改善では連携の内容を変えました。

  • 既存利用者について、本人が追加利用を希望していること。
  • 現在の生活でどのような課題があるか。
  • 追加利用によってどのような支援を提供できるか。
  • 他のサービスとの調整が必要か。

こうした情報を、本人の同意を得たうえで共有します。

相談支援専門員は、施設の売上を増やすために存在しているわけではありません。本人の生活全体を考え、必要なサービスを調整する役割があります。

したがって、施設からは単なる増回の依頼ではなく、本人の希望と生活上の必要性を具体的に伝えることが重要です。

6.具体的な改善策④|追加利用を断った理由を記録する

今回の施設では、追加利用の相談があっても、職員が口頭で「その日は難しいです」と答えて終わることがありました。

そこで、希望どおりに受け入れられなかった場合は、理由を記録するようにしました。例えば、

  • 「送迎車の空きがない」
  • 「その曜日は受け入れ人数の上限に達している」
  • 「必要な支援体制を確保できない」
  • 「関係者との調整が必要」

などです。

理由が分かれば、改善可能か判断できます。送迎の問題ならルートを検討する。特定曜日の問題なら、別曜日も選択肢として提示する。支援体制の問題なら、職員配置を検討する。

もちろん、本人の希望を無視して空いている曜日へ誘導することは適切ではありません。目的は、希望が実現しない理由を放置しないことです。

7.具体的な改善策⑤|追加利用が実際に売上へ与える影響を試算する

今回のモデル事例では、3名がそれぞれ週2日、追加利用を希望したとします。仮に、利用1日当たりの事業所収入を平均12,000円と置き、4週間で試算します。

増収シミュレーション・想定値
追加利用による月間売上 3名 × 週2日 × 4週間 × 12,000円
+288,000円/月
年間換算(12か月) +3,456,000円

※欠席、営業日数、実際の報酬、加算等を考慮しない単純計算です。年間換算は予測であり、確定収入ではありません。

新規利用者を獲得しなくても、本人が希望し、必要な条件を満たす追加利用が実現すれば、売上増加につながる可能性があります。

ただし、ここで止めてはいけません。売上が28万8,000円増えることと、利益が28万8,000円増えることは違います。

  • 追加の送迎費。
  • 食材費。
  • 活動材料費。
  • 職員の追加配置に必要な費用。

これらを差し引いて判断する必要があります。

例えば、追加利用に伴う月間の増分費用が仮に8万円であれば、他の条件が変わらない場合の増分利益は約20万8,000円です。このように、増収額と増分費用をセットで試算することが経営判断の基本になります。

8.改善結果|新規契約だけに頼らない売上改善の仕組みができた

このモデル事例では、希望した3名について、本人の意思、支給決定、支援体制、送迎等の条件を確認し、週2日の追加利用が実現したと想定します。その結果、単純計算上は月間28万8,000円の増収となります。

しかし、成果は売上だけではありません。

以前は利用開始時の契約内容をそのまま継続していましたが、改善後は利用者の生活状況に応じて利用方法を見直す仕組みができました。また、追加利用を希望しても実現できなかった理由が記録され、送迎や受け入れ体制の改善課題が明確になりました。

職員も、「新規利用者を増やさなければ売上は増えない」という考え方から、「現在の利用者へ、必要なサービスを十分提供できているか」という視点を持つようになりました。

なお、実際の改善効果を評価する際は、売上だけでなく、本人の満足度、疲労や負担、欠席状況、支援品質、追加費用なども確認する必要があります。

※上記はモデル事例としての想定です。1日当たりの事業所収入12,000円は説明用の仮の金額で、実際の報酬は最新の告示や加算の算定状況によって異なります。追加利用の可否や日数は支給決定の内容によるため、最新の告示・所管の行政窓口で必ずご確認ください。同様の成果を保証するものではありません。

9.コンサルタントの視点|売上を増やす前に、提供できていない価値を探す

障害福祉事業の売上改善では、新規利用者の獲得に目が向きがちです。しかし、既存利用者の生活を見直すことで、施設がまだ提供できていない支援が見つかる場合があります。

ここで重要なのは、利用者一人当たりの売上を最大化することを目的にしないという点です。

利用日数が多いほど、その人にとって良い支援になるとは限りません。家庭で過ごす時間が大切な人もいます。別のサービスを利用したい人もいます。体力面から利用日数を減らす方が適切な人もいます。

だからこそ、本人の希望と生活上の必要性を最初に確認します。その結果として追加利用が必要であり、施設が適切に提供できるなら、利用者の生活の充実と施設の増収を両立できます。

福祉コンサルティングで目指すべきなのは、単なる売上拡大ではありません。必要とされているサービスを提供できていない状態を発見し、それを解消することで、利用者の利益と事業所の収益を結びつけることです。

10.今回のテーマに特化した実践アドバイス

① 登録利用者全員の「現在の日数」と「希望日数」を比較する

利用実績だけでなく、本人の現在の希望を把握します。希望を確認した日付も残しましょう。

② 追加利用の相談を受ける担当者を決める

相談を受けた職員が、その場で曖昧に返答して終わらない仕組みを作ります。

③ 利用できなかった理由を分類する

定員、送迎、支援体制、制度上の条件など、理由ごとに対応を考えます。

④ 追加利用の収入と費用をセットで計算する

利用が増えても、追加配置や送迎によって費用が大きく増える場合があります。

⑤ 相談支援専門員へは本人の希望と必要性を伝える

施設の売上目標ではなく、本人の生活課題を中心に連携します。

⑥ 追加利用後の本人の状態を確認する

希望して始めた利用でも、疲労や負担が大きければ見直しが必要です。

11.売上改善・既存利用者ニーズ確認チェックリスト

施設の現状をチェック

  • 登録利用者ごとの現在の利用日数を把握している
  • 本人の希望利用日数を定期的に確認している
  • 家族の希望と本人の希望を区別して確認している
  • 追加利用の希望を記録している
  • 希望する曜日を把握している
  • 利用できない理由を具体的に記録している
  • 受け入れ可能人数と必要な支援体制を確認している
  • 送迎の受け入れ可否を確認している
  • 支給決定内容や計画との整合性を確認している
  • 必要に応じて相談支援専門員と調整している
  • 追加利用による収入と増分費用を試算している
  • 追加利用後の本人の満足度や負担を確認している

12.まとめ|新しい利用者を探す前に、今いる利用者の希望を聞いてみる

売上を増やすために、新規利用者を獲得する。これは障害福祉施設の経営において重要な取り組みです。

しかし、既存利用者の希望を十分に把握しないまま、外部への営業活動だけを増やしても、施設が提供できる価値を見落としてしまう可能性があります。

現在、週3日利用している人が、本当は週4日通いたいと考えているかもしれません。家族の生活状況が変わり、利用方法の見直しが必要になっているかもしれません。本人が新しい活動に関心を持ち、通所日を増やしたいと希望しているかもしれません。

そうした声を把握し、必要な支援を適切に提供できるようにすることが、結果として売上改善につながります。

今回のモデル事例では、3名の追加利用によって月間28万8,000円の増収を試算しました。しかし、最も重要なのは金額そのものではありません。

売上を増やすために利用者を動かすのではなく、利用者の希望を実現するために施設が動くこと。その結果として収益が生まれる仕組みを作ることです。

次の利用者面談では、ぜひ一つ質問してみてください。

「今の利用日数は、ご本人にとって本当にちょうどよい日数でしょうか?」

その答えの中に、利用者の生活を豊かにしながら、施設の売上を改善するヒントが隠れているかもしれません。

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