障がい者施設さま向け|経営の再生・改善を現場目線でまるごと支援 神奈川中心 × 全国対応|初回相談0円
お役立ちコラム

「赤字曜日」を見つける|月次損益では見えない収支のずれを曜日別に分解する

障害福祉施設の収支を曜日別に分解して赤字曜日を見つける|Engood合同会社

障害福祉の経営相談で扱いが難しいのが、「売上は大きく落ちていないのに利益が残らない」というご相談です。請求額を見れば一定の収入があり、利用者も通っている。それでも月末になると資金繰りに余裕がありません。

こうしたとき、月次の損益計算書をいくら眺めても打ち手は出てきません。月次の数字は「結果」であって「原因」ではないからです。この記事では、収支のずれがどこで生まれているかを、曜日という単位まで分解して見つける方法を整理します。

※ 本記事は、複数の障害福祉の現場で起こり得る課題をもとに再構成したモデル事例です。特定の事業所の事例ではなく、記載の数値は説明のための想定値です。取り組みの効果は事業所の規模・サービス種別・地域の状況によって異なり、同様の成果を保証するものではありません。

「稼働率は悪くないのに赤字」という状態

想定するのは、定員30名の生活介護事業所です。平均の稼働率は80%台で、極端に低いわけではありません。それでも月次ではわずかな赤字が続いていました。管理者は「人件費が高いので職員を減らすしかない」と考え始めていました。

ところが曜日別に利用者数と職員配置を並べてみると、問題は総人員数ではなく「人が必要な日」と「配置が厚い日」がずれていることにありました。

  • 月曜・火曜は利用希望が多く、満員に近い
  • 金曜は欠席などで利用者が少ない
  • それなのに、勤務表は月曜から金曜までほぼ同じ人数で組まれている

勤務表が「毎日同じくらい職員がいるほうが安心」という考えで作られていたためです。悪意も怠慢もありません。ただ、利用状況のデータが勤務表を作る人の手元に無かっただけです。

月次損益は「結果」であって「原因」ではない

月次で見ると、混んでいる日と空いている日が平均化されてしまいます。平均された数字からは、どこに手を入れればいいかが読み取れません。

そこで、次の項目を曜日別に並べます。

  • 曜日別の利用者数
  • 欠席率
  • 職員の配置数
  • 残業時間
  • 送迎の便数
  • 入浴などの提供人数

並べると、たとえば「金曜は利用者が少ないのに配置と送迎体制はほぼ同じ」「利用者の多い月曜には残業が発生している」といった形で、ずれが具体的な曜日として浮かび上がります。

ここで大事なのは、人件費の総額が高いことが問題なのではないという点です。問題は「必要な場所へ必要な時間だけ人を配置する」という設計が無いことです。同じ人数でも、配置の置き方で収支は変わります。

曜日別の「簡易損益表」をつくる

ここで必要なのは、精密な原価計算ではありません。曜日ごとの利用者数と主な人件費を並べるだけの簡易な表で十分です。

目的は1円単位の利益を計算することではなく、「どの日に収支が悪化しやすいか」を発見することだからです。精度を上げようとすると作成に時間がかかり、続きません。月次では平均に埋もれていた「赤字曜日」が見えれば、その表は役目を果たしています。

過去3か月の曜日別利用者数を出すところから始めれば、多くの事業所で1〜2時間程度で最初の一枚が作れます。

職員を減らすのではなく、配置を動かす

赤字曜日が見えたとき、最初の打ち手は人員削減ではありません。曜日ごとの勤務配置を見直すことです。

  • 利用者の多い曜日へ、非常勤職員の勤務を寄せる
  • 利用者の少ない曜日は、研修・個別支援計画の整理・環境整備などを計画的に行う日として位置づける

後者が重要です。空いている曜日を「暇な日」にしてしまうと、そこはただのコストになります。普段まとまった時間が取れない業務を置く日として設計すれば、同じ人件費が別の価値に変わります。

【重要】曜日ごとに配置を動かす場合でも、人員配置基準を満たすことが前提です。常勤換算の算定方法はサービス種別や自治体の運用によって異なり、基準を下回れば減算や指定に関わる問題になり得ます。シフトの設計を変える前に、自事業所の算定方法と必要人数を確認し、判断に迷う場合は所管の行政窓口にご確認ください。あわせて、利用者の障害特性や安全確保の観点から必要な体制を維持することが前提です。

▶ 人件費率という指標そのものの見方と、収益増・残業削減・シフト最適化を三本柱で進めた実例は 人件費率が80%を超えた施設が70%台に戻した方法|人を減らさず構造を変える にまとめています。配置の見直しを具体的に進める段階では、こちらもあわせてご覧ください。

空いている曜日へ、利用希望を誘導する

配置を動かすのは事業所側の調整ですが、もう一方に利用者側から曜日差を縮める打ち手があります。

新規の見学者や、利用日の追加を希望している既存の利用者に対して、空きが大きい曜日を具体的に案内するという方法です。「金曜日でしたら受け入れやすいです」と伝えられるかどうかで、結果は変わります。

もちろん事業所の都合だけで利用日を決めるものではありません。ご本人・ご家族の希望と合致する場合に限られます。ただ、案内する側がどの曜日に空きがあるかを把握していないために、この選択肢自体が提示されていないことは少なくありません。曜日別のデータは、配置を変えるためだけでなく、受け入れの案内にも使えます。

▶ 空きが埋まらない原因を、出席率・退所理由・新規の入り口・見学後の入所率・認知度の5つに分解して潰した実例は 「場所が悪い」で止まっていた生活介護が定員に近づくまでの2年 をご覧ください。

残業は「月合計」ではなく発生日で見る

残業時間も、職員ごとの月合計だけを見ていると原因にたどり着けません。何曜日の何時に発生しているかを確認します。

特定の曜日の送迎後や、月末の記録・請求前に集中している、という形で偏りが出ることがあります。偏りが分かれば、忙しい曜日には記録の時間を日中に確保する、月末に集中する確認作業を週単位に分散する、といった具体的な手が打てます。

▶ 記録や会議そのものの重複を洗い出す進め方は 「人を増やす前」に業務の棚卸しを|障害福祉施設で残業を減らす4つの分類と見直しの順番、業務時間の内訳を分単位で調査した実例は 職員一人あたりの生産性を上げた施設がやった業務改善 で解説しています。

毎月見る指標を絞る

数字を増やすほど管理が良くなるわけではありません。経営会議で毎月確認する指標は、絞ったほうが続きます。一例として、稼働率・曜日別の平均利用者数・人件費率・残業時間・新規利用と終了の人数、といった組み合わせが考えられます。

このうち曜日別の平均利用者数は、月次の稼働率だけを見ていては出てこない指標です。ここが入るかどうかで、気づける変化の細かさが変わります。

数字は職員を評価する道具ではなく、現場の変化を早く見つけるセンサーとして使うものだと、会議の場で共有しておくことをおすすめします。評価の道具として使われ始めると、数字が正直に上がってこなくなります。

▶ 財務の側から「まず見るべき数字」を絞った実例は 月次試算表を読めなかった施設長が「数字で経営する」ようになった転機|まず5つの数字だけ をご覧ください。

福祉経営で「削ってはいけないもの」から考える

赤字になったとき、最初に人件費の削減を考える事業所があります。しかし人員を減らして支援の質や安全性が下がり、離職や利用の終了が増えれば、経営はさらに悪化します。削った結果、収入のほうが先に減るという順番になりかねません。

最初に問うべきは「何人減らせるか」ではなく、「今いる人員を、必要な曜日・時間へ配置できているか」です。人件費は単なるコストではなく、サービスを生み出すための投資でもあります。

実践のポイント

  • ① まず過去3か月の曜日別利用者数を出す……分析はここから始まります
  • ② 人件費率が高くても、すぐ採用停止・人員削減をしない……配置のずれを先に確認する
  • ③ 欠席率と欠席理由を経営数字として見る……在籍していても来ていなければ収入になりません
  • ④ 勤務表を作る人に稼働データを渡す……データが手元に無ければ、勤務表は変わりません
  • ⑤ 利用者への直接支援の時間は削らない……黒字化の手段にしてはいけない領域です

管理者のための収支改善チェックリスト

  • □ 月次の稼働率を把握している
  • □ 曜日別の平均利用者数を把握している
  • □ 欠席率と主な欠席理由を確認している
  • □ 利用者数と職員配置を曜日別に比較している
  • □ 残業が発生する曜日・時間帯を把握している
  • □ 空きが多い曜日を具体的に案内できている
  • □ 勤務表を作るときに利用状況のデータを使っている
  • □ 人件費率だけで職員の削減を判断していない
  • □ 経営会議で確認する主要な指標を絞っている
  • □ 収支の改善後も支援の質・安全性を確認している

まとめ——「赤字だから削る」から「赤字の場所を見つける」へ

障害福祉の経営改善では、月次の損益だけを見ていても具体的な打ち手が見えないことがあります。赤字は結果です。その赤字がどの曜日、どの時間帯、どの業務から生まれているかを、一段深く見る必要があります。

今回のモデル事例で課題だったのは、職員数そのものではなく、利用者数と職員配置のずれでした。曜日別の数字を見える化し、配置を動かし、空き曜日への利用を促し、残業が集中する工程を改善する——この順番であれば、人員を削らずに収支を整えていくことができます。

福祉施設の利益は、支援を削って作るものではありません。限られた人材と時間を、本当に必要な場所へ配分した結果として生まれるものです。

あわせてお読みください。人件費率の見方と改善の三本柱は 人件費率が80%を超えた施設が70%台に戻した方法、複数事業所を持つ法人で事業所ごとの数字の差に気づいた実例は 複数事業所を持つ法人が「事業所間の数字の差」に気づいて改善した実例、資金繰りの立て直しは 資金繰りが底をつきかけた施設が立て直した6か月 で解説しています。稼働率と収支のご相談は 稼働率改善支援、加算の取りこぼしの点検は 加算最適化支援サービス内容 もあわせて お問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

よくあるご質問

稼働率は悪くないのに利益が残りません。どこを見ればいいですか?
月次の損益だけでは原因にたどり着けないことがあります。曜日別に利用者数・欠席率・職員配置数・残業時間・送迎便数などを並べてみてください。月次では平均化されて見えなくなっていた「利用者が少ないのに配置が厚い曜日」が浮かび上がることがあります。問題が人件費の総額ではなく配置のずれであれば、人員を減らさずに手を打てます。
曜日別の損益表は、どこまで細かく作るべきですか?
精密な原価計算は必要ありません。曜日ごとの利用者数と主な人件費を並べるだけの簡易な表で十分です。目的は1円単位の利益計算ではなく「どの日に収支が悪化しやすいか」を発見することだからです。精度を上げようとすると作成に時間がかかり、続かなくなります。まずは過去3か月の曜日別利用者数を出すところから始めてください。
利用者が少ない曜日は、職員の配置を減らしてもよいのでしょうか?
人員配置基準を満たすことが前提です。常勤換算の算定方法はサービス種別や自治体の運用によって異なり、基準を下回れば減算や指定に関わる問題になり得ます。シフトの設計を変える前に、自事業所の算定方法と必要人数を確認し、判断に迷う場合は所管の行政窓口にご確認ください。あわせて、利用者の障害特性や安全確保の観点から必要な体制も維持する必要があります。
利用者が少ない曜日は、何をする日にすればいいですか?
研修、個別支援計画の整理、環境整備など、普段まとまった時間が取れない業務を計画的に置く日として設計する方法があります。空いている曜日を「暇な日」にしてしまうとそのままコストになりますが、業務を割り当てれば同じ人件費が別の価値に変わります。
空いている曜日に利用を誘導してもよいのでしょうか?
事業所の都合だけで利用日を決めるものではありませんが、ご本人・ご家族の希望と合致する場合に「この曜日なら受け入れやすい」と具体的にお伝えすることは有効です。実際には、案内する側がどの曜日に空きがあるかを把握していないために、この選択肢自体が提示されていないことが少なくありません。曜日別のデータは受け入れの案内にも使えます。
赤字のとき、まず人件費を削るべきでしょうか?
人員を減らして支援の質や安全性が下がり、離職や利用の終了が増えれば、経営はさらに悪化します。最初に問うべきは「何人減らせるか」ではなく「今いる人員を必要な曜日・時間へ配置できているか」です。人件費は単なるコストではなく、サービスを生み出すための投資でもあります。
Contact

障がい者施設の経営、
Engoodが再生まで伴走します。

「稼働率が上がらない」「赤字が続いている」「加算を取りこぼしている」——そんな施設さまへ。
初回のご相談・経営診断は無料です。現状の見える化から、わかりやすくご案内します。