離職率25%だった障害者施設が1年で8%まで改善した組織改革|給与を上げずに「辞めない組織」へ
——給与を上げずに、管理者の行動を変えることから始めた1年の記録
- 給与を上げずに離職率を改善
- 管理者の行動を変えるだけで組織が変化
- 今日から実践できる具体策を紹介
施設が抱えていた課題——毎年5〜6名が辞めていく
定員40名の生活介護事業所では、毎年5〜6名が退職していました。採用しても定着せず、教育に追われる毎日が続いていました。新しい職員を迎えては辞められ、また募集をかける——現場は常に人手が足りず、既存の職員に負担が偏っていく状態でした。
そこで退職理由を分析したところ、経営側の予想とは違う結果が出ました。挙がってきたのは給与への不満ではなく、次のような声でした。
- 「相談できない」
- 「評価されない」
- 「成長を感じない」
つまり、辞めていく理由は「待遇」ではなく「職場での関わり方」にありました。これは、給与を上げなくても改善できる余地があるということを意味します。
原因分析——「良い支援が共有されず、失敗だけが目立つ」職場文化
日々の運営を確認すると、職員が「相談できない」「評価されない」と感じる構造がはっきりと見えてきました。
- 朝礼は連絡事項のみ——業務連絡を伝えるだけの場になっており、支援の話をする時間がなかった
- 個別面談はトラブル時だけ——「面談=何か問題があったとき」という空気ができていた
- 良い支援は共有されない——うまくいった関わりは個人の中に留まり、組織の財産にならなかった
その結果、失敗ばかりが目立つ職場文化になっていました。職員からすれば、良い仕事をしても誰も気づかず、ミスをしたときだけ声がかかる。これでは「評価されない」「成長を感じない」と感じるのは自然なことです。
実施した改善策——管理者の行動を変えた4つの取り組み
① 毎月15分の個別面談
全職員を対象に、毎月15分の個別面談を設定しました。ポイントは「トラブルがなくても実施する」ことです。定例化することで、「面談=問題があったとき」という空気を解消しました。
時間を15分に区切ったことも継続の鍵になりました。長時間の面談は管理者の負担が大きく、続きません。短くても毎月きちんと話す機会があることのほうが、職員の安心につながります。
② 朝礼で「今日の良い支援」を共有
連絡事項だけだった朝礼に、「良い支援の共有」を加えました。前日にあった良い関わり・うまくいった工夫を、具体的な場面として全員に伝えます。
これにより、良い支援が個人の中に留まらず組織の財産になり、同時に「見てもらえている」という実感が職員に生まれました。失敗だけが目立つ文化を、承認のある文化へ変える取り組みです。
③ 新人教育担当制度の導入
新人一人ひとりに教育担当者を決めました。それまでは「全員で見る」という建前のもと、実際には誰も責任を持って教えていない状態でした。担当を明確にしたことで、新人は「誰に聞けばいいか」が分かり、質問しやすくなりました。
教育担当となった職員の側にも変化がありました。人に教えることで自分の支援を言語化する必要が生まれ、担当者自身の成長にもつながりました。
④ 管理者が毎日30分、現場を巡回
管理者が毎日30分、現場を歩く時間をつくりました。指導や点検のためではなく、職員と利用者の様子を見て、声をかけるための時間です。
現場に足を運ぶことで、管理者は報告書には出てこない小さな変化に気づけるようになりました。職員の側も「困ったときに声をかけられる相手が近くにいる」と感じられるようになり、「相談できない」という声が減っていきました。
改善結果——1年後の変化
| 項目 | 改善前 | 1年後 |
|---|---|---|
| 離職率 | 25% | 8% |
| 年間の退職者 | 毎年5〜6名 | 大きく減少 |
| 個別面談 | トラブル時のみ | 全職員・毎月15分 |
| 朝礼の内容 | 連絡事項のみ | 「今日の良い支援」の共有を追加 |
| 新人教育 | 担当者が不明確 | 新人教育担当制 |
| 管理者の現場巡回 | 不定期 | 毎日30分 |
| 欠勤 | 多い状態が常態化 | 半年の時点で減少 |
| 採用広告費 | 採用を繰り返し発生 | 削減 |
| 利用者・家族からの評価 | — | 向上 |
※ 上記はコンサル支援先の事例をもとにした参考値です。改善の程度は施設の規模・職員構成・地域の採用環境により異なり、同様の成果を保証するものではありません。
特筆すべきは、給与や賞与の水準を引き上げていないという点です。変えたのは管理者の行動と、組織の中でのコミュニケーションの設計だけでした。
成功のポイント
- 職員を評価する前に、話を聴く——評価制度を整える前に、まず話す機会をつくることが先でした
- 小さな成功を組織全体で共有する——良い支援を可視化することが、承認のある文化をつくります
- 管理者が現場に足を運ぶ——「見ている」ことが伝わるだけで、職員の孤立感は変わります
4つの取り組みは、いずれも大きな投資を必要としません。必要だったのは、管理者が時間の使い方を変えることでした。
自施設のセルフチェックリスト
次の5項目のうち、いくつ当てはまるでしょうか。
- □ 毎月、面談を実施している
- □ 良い支援を組織で共有している
- □ 新人教育の担当者が決まっている
- □ 管理者が毎日、現場を見ている
- □ 離職理由を分析している
まとめ——「辞めない組織づくり」は重要な経営戦略
人材不足は、採用だけでは解決できません。入口をいくら広げても、出口が開いたままでは人は増えないからです。
施設改善は大きな投資ではなく、管理者の行動を変えることから始まります。対話・承認・育成を組織文化として根づかせることで、職員が定着し、利用者支援の質も向上していきます。
まずは「毎月15分の面談」と「朝礼での良い支援の共有」——この2つだけでも、今月から始めることができます。
離職率が高い施設に共通する職場環境は 離職率が高い障害福祉施設に共通する3つの職場環境、逆に定着率が高い施設の共通点は 職員が「この施設で働き続けたい」と思う瞬間、職員が意見を言える会議に変えた実例は 職員会議で意見が出ない施設が「建設的な場」に変わった実例 もあわせてご覧ください。
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