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改善事例

サービスは提供したのに、請求できていなかった|「請求漏れ・返戻・算定機会の見落とし」を月次点検し、年間200万円規模の取りこぼしを防ぐ仕組みを作った障害福祉事業所

※本記事は架空のモデル事例です。金額や件数は説明用の想定値です。実際の報酬算定では、その時点の報酬告示、留意事項、自治体の取扱い等を必ず確認してください。要件を満たさない加算を算定することを推奨するものではありません。

はじめに――売上を増やす方法は「利用者を増やす」だけではない

今回のモデル法人では、生活介護とグループホームを運営していました。利用者数は安定しています。稼働率にも大きな問題はありません。ところが経営者が月次売上を確認すると、予想より数字が低い月があります。管理者に聞くと、「利用者数は変わっていません」とのこと。

そこで請求業務を確認しました。すると、提供実績と請求データの不一致、必要書類の確認遅れ、返戻後の再請求漏れ、本来確認すべき算定要件の見落としなど、小さな取りこぼしが複数見つかりました。一件一件は数千円、数万円でも、複数事業所で毎月続けば年間では大きな金額になります。

問題は売上不足ではありませんでした。すでに行った支援を、正しく売上に変換する仕組みが弱かったのです。

1.改善前の状況――請求業務を「事務員の仕事」にしていた

請求担当者は毎月忙しく作業していました。ところが現場職員は、「請求は事務の仕事」と考えています。事務員は逆に、「支援内容までは分からない」という状態でした。

例えば、支援実績の入力が遅れている、必要な記録が不足している、利用状況の変更が事務へ伝わっていない、届出内容と現場の人員状況について確認が必要なのに共有が遅い。こうした問題が月末になって初めて発見されます。つまり、支援する人と請求する人の間に情報の壁がありました。

2.原因分析――請求額だけを見て「請求プロセス」を見ていなかった

経営者は毎月、「今月の請求額はいくらか」を確認していました。しかし、提供したサービス、記録されたサービス、請求したサービス、入金された金額。この四つが一致しているかまでは確認していませんでした。

さらに返戻が発生しても、「翌月直せばいい」という扱いになり、原因分析をしていません。その結果、同じ種類のミスが繰り返されていました。

3.具体的な改善策①――「実績→記録→請求→入金」の4段階を照合する

改善後は、売上管理を請求額だけで終わらせません。実際に提供したサービス、支援記録・実績として残ったサービス、請求データとして送信したサービス、実際に入金された金額。この流れを確認します。

例えば利用実績が月350日なのに、請求対象として処理されたものが344日なら、6日の差があります。その差が正当なものなのか、単なる入力漏れなのかを確認します。差額があること自体ではなく、「なぜ差があるか説明できること」が重要です。

4.具体的な改善策②――返戻を「修正作業」ではなく経営データにする

返戻が発生すると担当者は修正します。しかし、それだけでは翌月も同じ問題が起こります。そこで返戻理由を分類します。利用者情報、受給者証等の確認、実績入力、請求データ、届出・算定要件の確認、その他です。

そして毎月、「どの原因が何件あったか」を確認します。同じ理由が3か月続けば、担当者の注意力ではなく業務プロセスの問題として扱います。

5.具体的な改善策③――算定可能性を「年度初めだけ」で確認しない

障害福祉事業所では、利用者構成や職員体制が変わります。有資格者が入職する、利用者の状況が変わる、支援内容が変わる、事業所体制が変わる。それなのに、算定内容を開設時や年度初めから一度も見直していない施設があります。

そこで四半期ごとなど一定のタイミングで、現在届け出ている内容、現在の職員配置、実際に行っている支援、必要な記録、算定要件を照合します。

ここで目的とするのは「取れる加算を片っ端から取る」ことではありません。すでに提供している適切な支援が、制度上も正しく評価されているかを確認することです。要件を満たしていない場合は算定しません。

6.具体的な改善策④――請求締切の直前に確認しない

請求ミスが多い施設ほど、月末から翌月初旬に仕事が集中します。そこで、毎週金曜日に実績未入力を確認、月中に利用者情報の変更を確認、月末前に記録不足を確認、請求前に最終照合、というように作業を分散しました。

これによって月末に、「記録がない」「担当職員が休みで分からない」という状態を減らします。

7.具体的な改善策⑤――管理者にも「請求ダッシュボード」を見せる

管理者へ会計ソフトの細かい操作を覚えてもらう必要はありません。見る数字を絞ります。例えば、予定利用数、実利用数、請求件数、返戻件数、再請求未処理件数、前月との差額、確認中の算定項目などです。

これだけでも、「利用者は同じなのに、なぜ請求額が20万円下がったのか」という質問ができるようになります。ICTを導入する場合も、システムを入れること自体が目的ではありません。異常値を早く見つけるために使うことが重要です。

8.売上への効果――月17万円の取りこぼしでも年間では200万円を超える

モデル法人で点検した結果、毎月平均して、実績入力等の確認漏れ相当5万円、返戻後の再請求遅れ・未処理相当4万円、算定要件を満たしているにもかかわらず確認されていなかった項目相当8万円、合計17万円程度の改善余地があったと仮定します。17万円×12か月で年間204万円です。

これは新しい利用者を獲得して生まれた売上ではありません。新しい職員を増やした結果でもありません。すでに提供している適正なサービスについて、記録・請求・入金までを正しくつないだ結果です。

もちろん実際の改善額は事業所によって大きく異なります。過去分の請求や再請求等についても、それぞれの制度上の取扱いを確認する必要があります。

※上記はモデル事例としての想定です。金額は説明用の仮の数字です。請求の期限、返戻後の再請求や過誤の取扱い、加算の算定要件は、最新の告示・留意事項通知と所管の行政窓口・国保連で必ず確認してください。施設の状況によって結果は異なり、同様の成果を保証するものではありません。

9.改善結果――「請求担当者しか分からない」がなくなった

モデル事例では、改善後、返戻理由を毎月共有し、再請求未処理を残さない仕組みを作ったと想定します。さらに、現場職員も、「記録を書くことは支援の証拠であるだけでなく、適正な請求にもつながっている」と理解するようになりました。

事務職員側も、「現場が入力してくれない」と待つのではなく、期限前に不足情報を知らせるようになります。請求担当者個人の能力に依存していた業務が、組織の仕組みに変わりました。

10.コンサルタントの視点――最も利益率の高い売上改善が隠れていることがある

新規利用者を一人獲得するには、営業、見学、契約、送迎調整、職員配置などが必要です。一方、すでに適切に提供したサービスの請求漏れを防ぐ改善では、新しい利用者獲得とは異なるコスト構造になります。だからこそ、売上改善を考えるときは、新しい売上を作る前に、現在の売上が漏れていないかを確認する価値があります。

ただし、これは「加算をできるだけ多く取る」という話ではありません。要件を満たさない請求は絶対に避けなければなりません。目指すのは、提供した支援・記録・制度上の要件・請求を一致させることです。

11.今回のテーマに特化した実践アドバイス

まず一度だけでも、前月の「実利用」と「請求」を利用者単位で照合してください。差があれば理由を確認します。次に、返戻を件数だけでなく理由別に集計します。同じ原因が続く場合は担当者を注意するのではなく、入力画面、チェック手順、情報共有方法など仕組みを直します。

算定内容については、現場・管理者・請求担当者が一緒に定期点検することが有効です。「制度を知っている人」と「実際の支援を知っている人」を分離しないことがポイントです。さらに、請求担当者が急に休んでも処理できるよう、手順を標準化しておきます。請求業務の属人化は、経営上のリスクでもあります。

請求・売上取りこぼしチェックリスト

  • 実利用件数と請求件数を照合している。
  • 請求額の前月差を確認している。
  • 大きな増減の理由を説明できる。
  • 返戻件数を毎月把握している。
  • 返戻理由を分類している。
  • 再請求の未処理案件を一覧化している。
  • 支援記録の未入力を請求直前まで放置していない。
  • 利用者情報の変更が事務へ速やかに伝わる。
  • 現在の職員体制と届出内容を定期確認している。
  • 実際の支援と算定内容を照合している。
  • 算定要件を満たす証拠・記録を確認している。
  • 管理者が請求額だけでなく返戻状況も見ている。
  • 請求担当者以外にも手順が分かる。
  • システム導入が二重入力を生んでいない。
  • 「取れるか」より「要件を満たしているか」を優先している。

12.まとめ――「利用者を増やす」だけが売上改善ではない

売上を100万円増やしたい。そう考えたとき、「何人利用者を増やせばいいだろう」から始める施設は少なくありません。しかし、その前に確認したいことがあります。今提供しているサービスは、すべて適正に請求までつながっているでしょうか。

実績はある、記録もある、要件も満たしている。それなのに情報共有や事務処理の問題で請求につながっていない、返戻されたまま再処理されていない。こうした状態があれば、新規営業以前に改善する価値があります。

そしてこの取り組みには、もう一つ大きな意味があります。請求を正確にするには、現場、管理者、事務、経営者が同じ情報を共有しなければなりません。つまり請求改善は、単なる事務効率化ではなく、施設全体の経営管理を強くする取り組みでもあります。

次の月次会議では請求総額だけを見るのではなく、一つ質問してみてください。「先月提供した支援のうち、まだ売上になっていないものはありませんか?」利用者を一人増やす前に、そこを確認する。障害福祉施設の売上改善では、非常に重要な順番です。

国保連の返戻を減らす事務の見直しは 毎月の請求ミスを「ゼロ」にした仕組み、加算の棚卸しで見つかった算定漏れの例は 加算の算定漏れで年間約187万円を損していた法人の実例、よくある算定漏れと対策の解説は 障害福祉サービスの加算の取りこぼしを防ぐには、加算を「取れるか」でなく「必要か」から見る考え方は 売上は増えているのに資金が残らない、職員の定着で受け入れを増やす改善は 利用希望者はいるのに、職員不足で受け入れられない もあわせてご覧ください。

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